Altcoin

イーサリアムは復活するのか?競合乱立と価格急落の真相

【要約】
・2025年、イーサリアム(ETH)の価格が大幅に下落し、市場全体から疑問視されている
・ビットコイン(BTC)との価格比(ETH/BTC)は約5年ぶりの安値水準
・PoWからPoSへの移行とLayer2の台頭がもたらしたメリット・デメリット
・SolanaやTron、BSCなど他のスマートコントラクトプラットフォームが存在感を拡大
・イーサリアムのこれまでの発展と停滞は、仮想通貨業界全体の発育不良を映す鏡にもなっている

ICOブームを経て大躍進したイーサリアムの歴史

イーサリアムは2014年のICOを皮切りに「スマートコントラクト」という画期的な概念を実装し、2017年からのICOブームで一気に脚光を浴びました。トークン発行が容易になったことで、数千ものプロジェクトがイーサリアム上に誕生し、当時は「イーサリアムさえあれば資金調達が可能」という熱狂的な時代が到来しました。
その後、2018年以降はNEO、EOS、Tron、Algorandなど、他のスマートコントラクトプラットフォームが続々と登場しましたが、それでもイーサリアムは圧倒的なエコシステムを有し、「イーサリアムエコシステム=標準プラットフォーム」という地位を揺るぎないものにしていました。

DeFiサマーとNFTブームが築いたピーク

2018年から2019年にかけての停滞期を経て、イーサリアムは2020年の「DeFiサマー」で再び脚光を浴びました。Compoundが導入した流動性マイニングや、Uniswapによる自動マーケットメイカー(AMM)という新たな取引モデルの登場、そしてYearn.Financeが提案した利回り最適化の仕組みなど、革新的なサービスが次々と誕生。こうしたプロトコルの総称としてDeFiが急速に拡大し、数千億ドル規模の資金がイーサリアム上に集まりました。
さらに2021年から2022年にかけてはNFTやGameFi、SocialFiといった新ジャンルも勃興し、NFTマーケットプレイスやブロックチェーンゲームが活況を呈しました。こうした連鎖的ブームがイーサリアムの価格を過去最高値(約4800ドル)まで押し上げたのです。

PoS移行とLayer2拡充の「失速」と競合チェーンの躍進

イーサリアムは高騰するトランザクション手数料(Gas代)と低い処理速度を克服するため、PoW(プルーフ・オブ・ワーク)からPoS(プルーフ・オブ・ステーク)へとコンセンサスアルゴリズムを切り替え、同時にLayer2を活用したスケーリング策を推し進めました。ArbitrumやOptimism、zkSyncなどの独立したレイヤーが登場し、安価かつ高速なトランザクションを可能にするとの期待が寄せられたのです。
しかし、これらのLayer2はイーサリアムの取引を補完するだけでなく、独自のトークン発行やアプリ開発を推進し、結果的には「イーサリアム主網の流動性を奪う存在」にもなりつつあります。さらにイーサリアムのマイナー排除(PoW終了)は、ビットコインほどの信頼性・セキュリティコストを持たないと見る投資家もおり、ETHの価格下落に拍車をかけたと分析されています。
同時に、SolanaTron、**BSC(Binance Smart Chain)**といった他のスマートコントラクト基盤が、高速処理や豊富な資本力を武器にユーザーと開発者を取り込んでいる点も見逃せません。実際、SolanaはNFTやDeFi、さらにはMemeトークンなど多彩な分野で独自のエコシステムを形成し、「イーサリアムに遅れをとらない次世代チェーン」として注目を集めています。

ETH/BTC比率が示すイーサリアムの「停滞」

2025年に入り、ビットコインは強い買い支えを受けて史上最高値を更新しましたが、イーサリアムは前回の高値に遠く及ばず、価格は一時1500ドルを割り込む事態となりました。ETH/BTCの為替レートも約5年ぶりの安値を記録し、投資家の間では「イーサリアムにはもはや成長余地がないのでは」という懸念も浮上しています。
実際に、Arkhamなどのチェーン分析プラットフォームによると、2015年頃にETHを大量取得したOGアドレスが相次いで売却を進めている動きが見受けられます。取引所のトレンドを見ても、ビットコインの取引量は拡大し続ける一方で、イーサリアムは停滞気味というデータが示されています。

「発育不良」としての仮想通貨業界、RWAへの期待

イーサリアムの伸び悩みは、仮想通貨業界全体が投機主導のまま十分に実需を伴っていない「発育不良」であることを象徴しているともいえます。2024年にビットコインの半減期を迎えて以降、主流資金はBTCに流れがちで、アルトコインはMemeトークン以外の大幅な上昇が少ないのが現状です。
一部では、実世界の資産をブロックチェーンで証券化する**RWA(Real World Asset)**分野がイーサリアムに新たなチャンスを与えるかもしれないという声もあります。しかし、規制面や技術面の課題は大きく、すぐに大規模な資本流入を期待するのは時期尚早です。

イーサリアムは「万年2位」に甘んじるのか

イーサリアムはこれまで、DeFiやNFTなど数々の革新を世に送り出し、仮想通貨業界をリードしてきました。しかし、オープンソースという性質上、その技術革新はすぐに他のチェーンへコピーされ、競合に差を付けにくいという宿命があります。
今後、もしイーサリアムがLayer2の成長を活かし切れず、パフォーマンス改善も進まないまま、競合チェーンに新たな活路を奪われ続ける場合、ETHはさらなる価格低迷を免れない可能性があります。一方で、ビットコインとは違ったアプリケーション主導型のエコシステムが今後新たな価値を生み出すかもしれません。イーサリアムが再び輝くには、次なる革新的なユースケースや実需の創出が欠かせないと言えるでしょう。

ニュースの解説

今回のイーサリアム下落ニュースは、単なる投資家の心理的な売りではなく、ビットコイン主導の強気相場に伴う資金集中やPoS移行後のマイナー離脱、そして競合チェーンの加速的な台頭など、複合的な要因が背景にあります。さらに、イーサリアム自体も基盤技術の改良に注力し過ぎた結果、新たなアプリケーション創出のペースが鈍化し、ユーザーをつなぎとめる魅力的なプロダクトが不足しているとの指摘も見受けられます。
今後は、RWAやより高度なDeFi、NFT 2.0などの新領域で有望なプロジェクトが登場し、イーサリアムならではの強み(開発コミュニティの広さや歴史的実績)が活かされるかが注目点となるでしょう。イーサリアムが「万年2位」で終わるのか、それとも再度主要チェーンとしての地位を確立するのか――その行方は新たな革新と実需の拡大にかかっています。

NFT LABO編集部