【要約】
・ETH(イーサリアム)は一時2,400ドルまで下落したものの、2,536ドルまで反発
・25倍ショートポジションを保有するクジラが清算危機に直面し、減仓(ポジション縮小)を実施
・複数のアナリストがETHのターゲットを3,000〜3,700ドル、さらには4,000〜5,000ドルまで示唆
・PectraアップグレードによりBlob市場のコストが低下、ノードの負担増加とともにL2側の収益構造に変化
ETH価格の現状と上昇余地
ETH(イーサリアム)は最近、一時2,400ドルまで値を下げる場面がありました。しかし、その後すぐに反発し、2,536ドル付近まで上昇。この急騰により、2,200万ドル相当のETHショート(空売り)ポジションが清算されました。専門家によるテクニカル分析によれば、ETHは依然として「強気旗形(bull flag)」を継続中とされており、もし現在の抵抗線を突破できれば3,700ドル付近を目指す可能性があると見られています。
アナリストのTitan of Crypto氏は、週足のストキャスティクスRSIがまだ上昇余地を示唆していると指摘。一方、Chimp of the North氏は、ETHが2,400ドル付近まで一度下げた後に3,000〜3,300ドルを狙う再上昇のシナリオを想定しています。また、Crypto Patel氏は、万が一1,800ドルまで下落しても、そこがサポートとして機能する場合、新たな上昇トレンドが始まり4,000〜5,000ドルをターゲットとする可能性があると分析しています。これらの見立ちはすべて、直近の価格推移とオンチェーンデータに基づくもので、ETHの上昇余地がまだ十分に残されていることを示しています。
25倍ショートポジションのクジラ動向
一方、Twitter上のウォレット監視アカウント(@ai_9684xtpa)によると、25倍レバレッジでETHをショートしている大口投資家(クジラ)は、清算ラインである2,577ドル付近に迫られています。同アドレスは依然として約9,923ETH相当のポジションを抱えており、評価額は2,540万ドル規模。清算価格が極めて近いため、ポジション維持のために“減仓(減らす)”を繰り返している状況です。
興味深いのは、このアドレスと三箭キャピタル(Three Arrows Capital)との関連が指摘されている点です。過去にFTXの入金アドレスへ資金を複数回移動しており、今回も4年間動きのなかったウォレットが再び動いたことで注目を集めました。現在、ETH価格が上昇基調にあるなか、この大口ショーターの行方は市場関係者の注目を浴び続けています。
反発は一時的か?イーサリアムの主導権争い
ここ数カ月、ビットコインやmemeコインが話題をさらい、ETHの存在感がやや薄れていたのは事実です。米国政府がビットコインを準備資産として検討しているとの話題や、大手機関投資家によるビットコイン買い増しが相次いだこともあり、市場マネーがBTCへ集中しがちでした。さらに、2025年に大きく盛り上がったmemeコインの多くがSolanaチェーンで発行されたことも、ETHが注目を集めにくかった要因として挙げられます。
また、ETHのガス代(取引手数料)の高さがLayer-2ネットワーク(Polygon、Optimism、Base、Linea、Arbitrumなど)の利用拡大を促進し、メインチェーンへの流動性がやや希薄化している面もあるでしょう。さらに、SolanaやAvalancheなどの競合チェーンは、高速かつ安価なトランザクションを武器にユーザーや開発者を取り込みつつあり、ETHの市場シェアを脅かしています。しかし、ETHは度重なるアップグレードを通じて性能向上を図っており、根強いコミュニティと既存のDeFiエコシステムがまだ大きな強みになっています。
Pectraアップグレード後のBlob市場:L2コスト低下とノード負担の増加
2025年5月7日に実施されたPectraアップグレードは、イーサリアムのデータ可用性を左右する“Blob”の目標数と最大数を拡大しました。従来の目標3個、最大6個から、目標6個、最大9個へと設定を引き上げ、1日あたりのBlobデータ容量を約8.15GB程度まで拡大。これにより、Layer-2(L2)ロールアップのデータ発信がより安価になった一方、ノード運営者が保有すべきデータ量は増加しています。
実際、アップグレード後5日間でロールアップが購入したBlob数は約21,200個から25,600個へ20%超増加しました。にもかかわらず、新たな目標値(1ブロックあたり6個のBlob)にはまだ達していないため、Blob自体のコストがほぼゼロに近い水準で推移しています。その一方、Blobの使用頻度が高まった結果、ノードオペレーターは18日間分のBlobデータを保持しなければならず、データ量が44GB超にまで増大。今後さらに需要が増せば、一時的に60〜100GBのデータを保有する必要が生じる可能性があります。
Blobコストの低下はL2各社の収益性を押し上げるメリットがある反面、ETHバーン(手数料の焼却)を減少させる要因にもなっています。すなわち、ETHを大規模にバーンしていた元凶の一つであるBlob関連手数料が小さくなることで、ETHのインフレ(純供給量)がわずかに増えやすい環境になるかもしれません。
今後のETH価格と市場の焦点
複数のアナリストが示すように、ETHは依然として上昇余地があります。短期的には2,400ドル前後を下値サポートとする動きが続く一方、3,000~3,300ドル、さらに3,700ドルや4,000~5,000ドルといった強気目線が取り沙汰されています。また、PectraアップグレードによるL2拡張とガスコストの減少は、今後ロールアップの利用拡大を後押しすると期待されます。しかし、同時にノードへの負荷増加も顕著となるため、ネットワーク全体の運営・維持コストの兼ね合いにも注目が必要です。
ニュースの解説
今回のETH相場に関するニュースでは、大手投資家がショートポジションの清算危機に追い込まれながらも減仓を続けている点、さらには複数のアナリストが示す強気シナリオが共存している点が注目されます。価格が2,577ドルを超えるとクジラの清算が一気に進む可能性があるため、市場は上昇局面が継続するかどうかを慎重に見極めている状況です。一方で、Pectraアップグレード後のBlob市場ではロールアップ各社のコストが軽減され、L2エコシステムの成長が促されるというポジティブな要素も存在します。今後は、ETHメインチェーンとL2のバランス、そしてビットコインや競合チェーンとの主導権争いにどのような変化が生まれるかが焦点となるでしょう。