▽ 要約
有罪認否:8/12に有罪認否変更の審理がNY連邦地裁で予定
起訴内容:証券・商品・通信詐欺など9件、最大130年
成局:2024年にSEC民事で45億ドル超の支払い合意
テラUSD:2022年5月に崩壊、推計損失約400億ドル
「有罪を認めるのか」が最大の関心事となるなか、ド・クォン氏が8月12日に米連邦地裁で有罪認否変更に臨む公算が大きい。判事の指示で審理が設定され、9件起訴の量刑局面へ移行する可能性がある。TerraUSD崩壊と民事・刑事の手続を整理し、ド・クォン 有罪認否変更の具体像を短時間で把握できるよう要点を解説します。
有罪認否変更のポイント(日時・範囲)
判事が変更可能性に言及し審理を設定したため、認否が「無罪」から「有罪」に転じる可能性が高まった。
米NY南部地裁のポール・エンゲルマイヤー判事は8月11日付のスケジューリング命令で、8月12日10:30(米東部)にマンハッタン連邦地裁で公判前協議を指定し、被告が有罪答弁する場合は違法行為の説明を準備するよう指示した。クォン氏は2025年1月に一旦「無罪」を主張していたが、今回の審理で方針を転換する可能性がある。
起訴内容と量刑の枠組み
複数の詐欺・共謀罪が重なるため、法定上の上限は極めて長期となる。
起訴は証券詐欺、商品詐欺、ワイヤー詐欺、資金洗浄共謀など計9件で、各罪の上限を合算した「理論上の最大刑期」は130年。もっとも実刑は量刑ガイドラインや司法取引の内容に左右される。
裁判の現在地
審理は「有罪答弁→量刑」の最短ルートに入り得る。
有罪認否が正式に変更されれば、争点整理を経る通常審理を省略して量刑手続に移るのが一般的である。検察・弁護側の合意条件(事実関係・ガイドライン計算・求刑上限など)が焦点だ。
TerraUSD(UST)の崩壊(2022年5月)
アルゴリズム維持に失敗したため、USTが急落しLUNAも連鎖崩壊した。
2022年5月7日に乖離が始まり、5月9日にUSTは一時0.35ドルまで下落、5月12日にはLUNAがほぼ無価値化。バリデータは安全確保のためチェーンを一時停止し、エコシステムは短期間で麻痺した。
被害規模と市場波及
担保なき設計の脆弱性が露呈し、被害は約400億ドルに拡大した。
UST/LUNAの時価総額は数日で蒸発し、DeFi全般や一部ヘッジファンドに連鎖的損失を引き起こした。事件はステーブルコイン規制強化論を各国で加速させる契機となった。
SEC民事(評決と和解)
陪審評決を受けた最終判決案により、被害回復と事業清算が進む。
2024年4月に評決で詐欺責任が認定され、同年6月にTerraformは約45億ドル超の支払いで合意。内訳はディスゴージメント・利息・民事罰で、同社は販売停止と清算へ、クォン氏個人も2億ドル超の負担が明示された。
被害回復の射程
破産手続に沿って資産配当が進むが、全損回復は現実的でない。
返金は破産財団の回収資産に依存し、SEC和解は投資家配当を優先する設計だが、損失規模と比べ配当は限定的となる公算が大きい。
各国の手続(身柄移送と裁判地)
モンテネグロの引き渡し判断を経て、米国での刑事が先行することになった。
2023年3月に現地で拘束後、米韓が同時に引き渡しを要請。2024年12月31日に米国へ移送され、2025年1月2日にDOJが出廷と上位起訴状の詳細を公表。以後、米国の刑事手続が先行している。
今後の見通し
有罪答弁が成立すれば、量刑・追徴・将来の送還が次の論点となる。
量刑結果によっては、韓国での追起訴や追加手続が検討され得るが、優先権は米国の刑事判決と服役状況に左右される。
▽ FAQ
Q. 審理は何時どこで行われる?
A. 2025年8月12日10:30(米東部)、NY南部地裁マンハッタン支部で開かれます。判事はポール・エンゲルマイヤー氏。
Q. 何件で起訴されている?
A. 証券・商品・通信詐欺、資金洗浄共謀など9件で起訴。理論上の最大刑期は合計130年です。
Q. SEC民事の負担額は?
A. Terraformは約45億ドル超、クォン氏は約2億ドル超の支払いに同意し、同社は清算方針です(2024年6月)。
Q. TerraUSD崩壊時の価格は?
A. USTは2022年5月9日に一時0.35ドル、LUNAは5月12日前後に事実上ゼロへ急落しています。
Q. 米国への引き渡し日は?
A. 2024年12月31日にモンテネグロから米国へ移送され、2025年1月2日にDOJが出廷を公表しました。
■ ニュース解説
有罪認否変更の審理が設定されたため刑事は量刑段階へ進む可能性が高まった一方で、SEC民事は2024年の合意で回収枠組みが固まりつつある。
投資家の視点:規制・執行強化の潮流を前提に、発行体の準備資産・開示・法域リスクを精査し、担保なきアルゴ型は構造的リスクとして扱うのが無難。
※本稿は投資助言ではありません。
(参考:U.S. Department of Justice(SDNY),U.S. Securities and Exchange Commission)