【要約】
・ハンプシャー州が米国初の「戦略ビットコイン備蓄」を法制化
・富途Crypto(Futu Holdings)がビットコインとイーサリアムの入金対応を開始
・ソラナで「アトミックアービトラージ」が主要取引の半数を占めるMEVトレンドに
・中国人民銀行が利下げ&預金準備率引き下げを発表
・トランプ一族がビットコインを大量保有していることを明言
・米国民主党が「ビットコイン戦略備蓄」構想に反対姿勢を強める
・中国の金融緩和や利上げ観測の動きがグローバル市場とビットコイン価格に影響
ビットコインの注目度が急上昇:背景に何があるのか
近年、ビットコインを中心とした仮想通貨の存在感は各国で高まりつつあります。米国では州レベルの法整備が加速し、中国では金融緩和が続くなど、ビットコイン市場を取り巻くマクロ環境が大きく変化しています。本記事では、複数の最新ニュースを通じて、ビットコインが今後どのような役割を果たし得るのかを検証していきます。
富途Crypto(Futu Holdings)、BTCとETHの個人ウォレット入金に対応
大手オンライン証券の富途(Futu)Cryptoは、通常ユーザーがビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)の入金を行えるようになったと発表しました。最低入金額はBTCが0.0002枚、ETHが0.001枚で、入金完了まで概ね1時間ほどかかるとのことです。なお、テザー(USDT)の入金機能はプロ投資家向けに限定される方針で、プラットフォームでの入金時には特定のネットワークを利用する必要があります。
これまで主に株式などの従来型投資商品を扱ってきた富途ですが、2024年8月から仮想通貨取引サービスを拡充し始め、今回は入金チャネルの拡大に至りました。証券大手がビットコイン対応を強化することで、仮想通貨へのハードルが一段と低くなると期待されています。
ハンプシャー州、全米初「戦略ビットコイン備蓄」を法制化
米国北東部のハンプシャー州は、HB 302法案(Strategic Bitcoin Reserve, SBR)を正式に可決・署名し、ビットコインを最大で州政府準備金の5%まで購入・保有できるようにしました。対象はビットコインのほか、時価総額が5,000億ドルを超えるデジタル資産で、現状ではビットコインのみが要件を満たします。
この法案には、複数の州議員が提案者として名を連ねており、ビットコインをインフレヘッジや投資ポートフォリオの分散手段と位置付けています。また、資産の管理にはマルチシグウォレットや米国上場取引所のETFなど、規制の枠内で高い透明性と安全性を確保する手段が明記されました。今後、同州ではビットコインを活用したさらなる法整備や関連の新ビジネス立ち上げが進む可能性があるとみられています。
ソラナで拡大するMEVの新潮流:「アトミックアービトラージ」
ソラナ(Solana)チェーンでは、従来の「サンドイッチ攻撃」に代わる形で「アトミックアービトラージ(Atomic Arbitrage)」が主要なMEV(Maximal Extractable Value)の手法として急増しています。
アトミックアービトラージは、一つの取引内で複数のDEXやプールをまたぎ、価格差を瞬時に利得化するのが特徴です。実行が1回のトランザクションに集約されているため、リスクが低く利益機会を確定しやすい一方、参入者が増加すると利益幅は縮小する傾向があります。実際、一部の高度なボットは非常に大きなリターンを上げる一方、多くの一般参加者は手数料やシステムコストに見合わず、損失を抱えるケースもあると報告されています。
中国人民銀行が利下げと準備率引き下げを発表、金融緩和策がビットコインに影響
中国人民銀行(PBOC)は定例の記者会見で、預金準備率を0.5ポイント引き下げるとともに、政策金利を0.1ポイント引き下げると発表しました。さらに、特定分野への再貸出枠拡大や住宅ローン金利の引き下げなども明らかにしています。
この一連の緩和策によって、中国国内の投資資金がリスク資産へ流入しやすくなる可能性があり、ビットコインなどの仮想通貨市場にも一定の資金流入が期待されるとの声があります。実際、一部アジア圏での投資家心理を反映し、ビットコイン価格が短期的に上昇を見せた場面もありました。
エリック・トランプ氏「自身も父親もビットコインを大量保有」
ドナルド・トランプ前大統領の息子であるエリック・トランプ氏は、ドバイで開催されたカンファレンス「Token2049」にて、「ビットコインはデジタルゴールドだ」と述べ、自身も父親も大量のビットコインを保有していると明言しました。今後数年で指数関数的な成長を期待しているとのことです。
さらに、エリック氏は新たな加密(かめつ)プロジェクト「World Liberty」を展開中とし、既存の金融システムを刷新するビジョンを掲げています。詳細は明かされませんでしたが、市場関係者の間では「トランプ家がビットコインをはじめとするデジタル資産市場への積極的な関与を深める可能性がある」といった観測が広がっています。
民主党がトランプ政権の「ビットコイン戦略備蓄」に警鐘
2025年3月、トランプ前大統領は「国家戦略ビットコイン備蓄」の構想を打ち出しましたが、民主党側はこれに対し強い反対姿勢を示しています。エリザベス・ウォーレン上院議員やマキシン・ウォーターズ下院議員らが「価格のボラティリティや利益相反リスクが高い」との懸念を表明し、連邦規模での暗号資産保有を制限すべきと主張。実際、アリゾナ州やフロリダ州では州レベルの法案が否決・取り下げられる動きも出ており、各州議会での審議は難航しています。
中国の金融緩和と利上げ観測:ビットコイン市場への影響
世界の金融政策は米連邦準備制度(FRB)の利上げ・据え置きが注目される一方、中国は逆に利下げや準備率引き下げを進めています。こうした政策の分断は、ビットコインのようなグローバル資産へどのように反映されるのでしょうか。アジア圏の資金流動性が向上することはビットコイン買いを後押しする可能性があり、今後の価格変動を左右する重要な要素の一つとみられます。
ニュースの解説
今回のニュースから見えてくるのは、「ビットコインの制度的受容の進展」と「各国の金融・政治情勢がビットコイン市場を揺さぶっている」という二つの大局的な流れです。ハンプシャー州のように一部州ではビットコインを正式に財政ポートフォリオに組み入れようとする動きがある一方、民主党の強い反対やフロリダ州などでの法案失敗が示すように、全米統一のコンセンサスはまだ遠いのが現状です。また、中国の金融緩和策がアジア市場を中心にビットコインの短期的な価格上昇を後押しする可能性も指摘されており、国際情勢との連動性がますます鮮明になっています。こうした流れの中で、ビットコインが引き続き世界的な投資家の関心を集めるのは間違いないでしょう。