米下院GENIUS法案停滞 Crypto Weekの全貌

▽ 要約

ルール否決:共和党造反で手続き否決
ステーブルコイン:GENIUS法案が規制の柱
マーケット:株価一時下落も再採決へ交渉
未来:9月上院審議、年内成立が焦点

GENIUS法案など三つの暗号資産法案が一挙成立するはずだった「Crypto Week」は、保守派の造反で突然ブレーキが掛かった。なぜ下院ルール投票は否決され、法案はどこへ向かうのか――本稿は読者の疑問を解き、今後の投資・政策判断に直結するポイントを示す。

◆ 背景:Crypto Weekとは

トランプ政権が暗号資産立法を一気に進める週として設定。狙いはステーブルコイン規制と市場構造整備、さらにCBDC禁止を同時に実現することだった。
金融サービス委員会・農業委員会連合で準備され、国防権限法など大型法案と並列審議という異例の日程を組んだ。

ルール投票失敗

196対223で否決。造反した自由議連系12名が決定打。
CBDC禁止を抱き合わせるよう要求し、指導部は拒否。民主党は一貫して反対票を投じ、少数与党の脆さが露呈。

◆ 各法案の概要

GENIUS法案(ステーブルコイン規制)

  • ステーブルコイン発行体に連邦または州ライセンス
  • 100%準備金と資本・流動性要件
  • 発行体破綻時は保有者優先弁済
  • 国家安全保障とドル覇権が論点

CLARITY法案(市場構造)

  • 「デジタルコモディティ」を創設しCFTC所管
  • 4年以内の分散化計画で証券登録豁免
  • 取引所・ブローカー・ディーラーの新登録区分
  • SEC・州当局の権限縮小が争点

CBDC反対法案

  • FRBによるリテールCBDC発行を全面禁止
  • 個人口座開設・直接決済サービスも不可
  • プライバシー保護とドル覇権戦略の板挟み

◆ 停滞の原因と交渉

  • 強硬派:3法案束ね採決+CBDC禁止の確約要求
  • 議長側:法案個別成立で上院調整を優先
  • 深夜にホワイトハウス仲裁、再ルール採決へ

◆ 市場・政策インパクト

短期

  • 暗号関連株価とステーブルコイン資金フローにボラティリティ
  • ルール再可決でリスク後退の見通し

中長期

  • GENIUS成立 ⇒ 米国初の統一ステーブル規制、ドル建て決済加速
  • CLARITY成立 ⇒ 規制明確化で取引所・開発拠点が米国回帰
  • CBDC禁止成立 ⇒ 民間ドル建てコインが覇権維持の切り札に

◆ 今後のタイムライン

  1. 7月16日 ルール再採決予定
  2. 7月下旬 下院本会議採決→GENIUS即成立の可能性
  3. 9月末 上院版市場構造案提示、二院協議開始
  4. 年内 包括パッケージ成立か、予算法案に組み込み

▽ FAQ

Q. GENIUS法案が可決すると何が変わる?
A. ステーブルコイン発行にライセンス制が導入され、準備金100%義務で市場の信頼性が向上します。

Q. CLARITY法案はSECの訴訟リスクを解消する?
A. 分散化済みトークンはSEC登録不要となるため、主要取引所の係争リスクが大幅に減少します。

Q. CBDC反対法案が否決されたらFRBはすぐCBDCを出す?
A. FRBは議会承認がなければリテールCBDCを発行しない方針のため、直ちに導入される可能性は低いです。

■ ニュース解説

本件は「共和党の内部力学」と「暗号資産を巡る規制哲学」の衝突が重なった象徴的事例だ。保守派はCBDCを“監視通貨”と位置付け、自由主義イデオロギーを前面に押し出す。一方でウォーターズ議員ら進歩派は投資家保護を優先し、規制緩和に警戒感を示す。トランプ政権がどこまで保守派をなだめ、民主党の不安を抑えつつ年内成立に漕ぎ着けるかが焦点となる。

(出典:financialservices,abcnews,reuters