▽ 要約
政策:金融庁が暗号資産の分離課税導入を要望。
金率:税率は約20%で、現行の最大55%から軽減。
損益:損失繰越・損益通算導入で納税の公平性向上。
日程:2026成立、遅くとも2027施行の公算。
暗号資産 分離課税 導入が金融庁の2026年度税制改正要望に明記され、税率約20%・損失繰越など株式並みの扱いへ近づくため、最大55%の重税・煩雑計算という参入障壁の是正が進む見込みだ。
要望の要点と今回の位置づけ
暗号資産取引の課税見直しを主要項目として掲げ、分離課税導入とETF組成環境の整備を検討するため、政府の検討段階から実行設計段階へ一歩進んだ。
今回の要望は、暗号資産取引の所得を総合課税から分離課税へ移行する方針を示し、同時に国内で暗号資産ETFの組成を可能にするための税制・制度設計の必要性を明記した。公開日は2025年8月29日で、政府税制プロセスの起点に当たる。
何が「正式に」示されたのか
要望書は「必要な法整備と併せて、分離課税の導入を含む見直し」を明記したため、市場は20%台の金融所得課税化と制度の統一を織り込み始めた。
税率の具体値は法律・政省令で確定するが、株式等と同様の20.315%が制度設計の基準となる見通しで、課税ベース・情報連携・納税利便性の三点で証券課税の枠組みに寄せる構想だ。
想定される制度パッケージ
分離課税の導入に連動して、暗号資産同士の交換時課税の緩和、損益通算・3年繰越の導入、将来的な特定口座・源泉徴収オプションが検討されるため、申告の煩雑さが大幅に低減する。
制度の対象範囲(「一定の暗号資産」や登録事業者経由に限定するか)や、デリバティブ・レンディング等の扱いは、与党税調・金融審議会WGで詰められる論点である。
関連:暗号資産20%分離課税とBTC ETF、金融庁が本格検討
背景と経緯(政治・規制・業界)
与党の税制大綱に「見直しを検討」が盛り込まれた経緯と、web3PT・WGの提言が続いたため、2025年は官民で制度改正の熱量が最も高まった。
自民党web3PTの提言やWeb3 WGの文書は、暗号資産を金融商品取引法上で位置づける方向を提示し、金商法移行=申告分離課税の整合を強調した。金融庁は2025年6〜7月に制度のあり方を検証し、7月末にWGを設置して正式議論を開始した。
業界団体の要望
JVCEA・JCBAは「登録有無や取引形態を問わない一律20%」と「3年損失繰越」を共同要望したため、対象限定による歪み回避が争点となった。
JBAも「最大55%は重すぎる」として分離課税化、相続・寄附の見直し、課税タイミングの是正を求めており、三団体の方向性は概ね一致する。
現行制度の課題と変更点
現行は雑所得・総合課税で最高55%のため、損失繰越不可や交換時課税が投資行動を歪め、申告負担と市場流動性の阻害要因となっていた。
分離課税化で税率は約20%に平準化され、暗号資産間の損益通算や3年繰越が導入されれば、ボラティリティの高い市場に合致した公平・一貫性のある課税に近づく。
課税タイミング・特定口座
交換時課税の見直しでフィアット換金時課税へ寄せると、取引慣行と整合し記録負担が軽減されるため、適正申告と税務把握の両立が期待できる。
将来の特定口座・源泉徴収の選択制が実現すれば、株式並みに「確定申告不要」枠が広がり、納税コストとコンプライアンスの向上につながる。
投資家・企業・開発者への影響
税率平準化と損失繰越により手取りが増え投資回転が健全化するため、国内市場の流動性と税収安定化の両立が見込まれる。
国内交換業者の利用誘因が高まり、報告制度の整備と相まって遵法取引が定着しやすくなる一方、Web3起業・トークン報酬の税務負担が低減し、人材・資本の国内回帰が促される。
国際比較の位置づけ
日本が20%分離課税へ移行すれば、英国(10–20%)・米国(長短分離・最大20%長期)と同水準となる一方、独の長期非課税・シンガポールの非課税には及ばない。
フランスの定額30%よりは有利で、アジア・欧州主要国との競争条件は大きく改善する。
スケジュールと実務上の留意点
2025年末の与党大綱明記→2026年初の法案提出・成立を経るため、2026年分適用(2027年申告)または法整備と同時期の2027年適用が想定される。
初年度は周知・システム対応が鍵で、年間取引報告や特定口座設計、国外取引データ連携、対象範囲の線引き(現物・デリバ・レンディング等)の明確化が重要となる。
▽ FAQ
Q. 分離課税はいつから適用される見込み?
A. 2025年末大綱→2026年成立なら2026年分、遅くとも2027年施行見込みです(金融庁・与党日程)。
Q. 税率は?
A. 株式等と同じ申告分離課税約20.315%で想定。最高55%からの大幅軽減となります(金融庁資料)。
Q. 損失繰越はできますか?
A. 業界は3年繰越を要望。暗号資産間の損益通算も導入方向で、詳細は税調で詰められます。
Q. どの取引が対象になりますか?
A. 「一定の暗号資産」や登録業者経由限定案も議論中。BTC・ETHなど主要銘柄先行の可能性。
■ ニュース解説
金融庁が2026年度税制改正要望で分離課税を含む見直しを明記したため、与党協議と金融審議会WGで制度詳細が年末〜来春に具体化し、市場の税制格差是正が進む。
投資家の視点:税率低下・損失繰越で手取りとリスク管理が改善する一方、対象範囲・適用開始年・デリバ等の扱いに不確実性が残るため、2025年末の大綱と国会審議の条文確定を前提に利確・移転・会計方針を整理して備えたい。
※本稿は投資助言ではありません。
(参考:金融庁)