▽ 要約
マクロ:PPI低下で利下げ観測、BTCは11.4万ドル前後
規制:米SECが方針転換、英FCAは小口ETN解禁へ
採用:国家・大手が相次ぎ参入、機関投資も拡大
インフレ鈍化と規制の透明性の前進が重なり、暗号資産は採用と価格の両面で新局面に入ったため、米英の制度転換と企業・国家の動きを整理し、投資判断に資する実務的な含意を解説する。
世界で進む採用と市場参入
各国の制度整備と大手の参入が並行して進んだため、ビットコインの受容は国家・機関投資家・個人の三層で加速した。
キルギスの国家準備構想と英・小口ETN解禁
議会可決による国家暗号資産準備の創設とETN解禁の時期決定を受け、主権・個人の双方でアクセス経路が広がった。
キルギス共和国では「国家暗号資産準備」や国営マイニング等を含む改正が一括可決され、承認後に国家ポートフォリオでBTC等を蓄積可能になる見通しである。英国では金融行動監視機構(FCA)が2025年10月8日から小口向け暗号資産ETNの販売を認め、LSE上場のビットコイン連動商品への扉が開く。
企業のBTC準備戦略とTradFi連携
資金調達とバランスシートの最適化が目的化したため、BTC準備戦略とトークン化の実装が進む。
Nasdaq上場のAsset EntitiesとStriveの合併後「Strive Inc.」は「1株当たりのBTC保有量最大化」を掲げ、7.5億ドルの私募に加え全ワラント行使で最大15億ドル規模の資金力を確保する計画だ。さらにBinanceとフランクリン・テンプルトンの提携は、取引基盤とトークン化運用の組み合わせで有価証券のオンチェーン化を前提とする商品開発を加速させる。
機関投資の拡大
規制リスクの後退が需給を変えたため、先物・ETP・現物の三市場で機関主導の建玉・保有比率が上昇した。
J.P.モルガンは規制明確化や上場(BullishのNYSE上場など)を追い風に機関採用の拡大を指摘し、CMEの暗号資産デリバティブ建玉は過去最高、BTCの上場投資商品(ETP/ETN/ETF)の約25%を機関が保有するとの見立てが示された。EYの企業調査でも2025年までに暗号資産へ投資意向が85%に達したとされる。
価格・マクロ・技術の最新局面
PPIの鈍化と利下げ観測がリスク選好を押し上げたため、BTCは高値圏を維持しつつ、技術面でもレジリエンスが証明された。
BTC価格と米金融政策
インフレ鈍化で利下げが意識されたため、BTCは8/14に約12.4万ドルの最高値を付け、9/10時点で約11.4万ドルにある。
8月の米PPIは前年比+2.6%(市場+3.3%予想を下回る)、前月比▲0.1%で、9/16–17のFOMCでは0.25%利下げ観測が優勢となった。トランプ大統領はTruth Socialで「今すぐ大幅利下げ」を要求、ゴールドマン・サックスのデービッド・ソロモンCEOも「まず0.25%、その後1~2回の追加」を示唆する発言を行った。
衛星経由ライトニング決済の実証
インターネット非依存の耐障害性が示されたため、BTCのユビキタス性に対する信認が補強された。
9/10に衛星通信を介したライトニング決済デモがX上で公開され、地上ネットワークが遮断されてもオフグリッドで支払いが可能となる技術的裏付けが改めて注目された。
リスク選好の象徴的事例(番外)
AI需要を背景にOracleの決算が市場予想を上回り株価が急騰したため、ラリー・エリソン氏が一時イーロン・マスク氏を上回る世界一の富豪となった。
ハイテク主導の相場地合いは、暗号資産を含むリスク資産への資金流入環境を支える。
米国「規制の透明性」の実相
SECの方針転換と立法パッケージが並走したため、トークンの法的位置づけと市場構造の見取り図が具体化した。
SEC“Project Crypto”と解釈の大転換
「トークン自体は原則証券に当たらない」との解釈が示されたため、販売形態基準への回帰が明確になった。
Atkins委員長は“Project Crypto”で、オンチェーン発行・資金調達の明確化、包括的なスーパーアプリ型プラットフォーム容認、重複規制の削減と投資家保護の両立を掲げ、OECDの基調講演でも「暗号資産の時代」を宣言した。
CLARITY法・GENIUS法と上院審議
市場構造の線引きとステーブルコインの連邦枠組みが整備されつつあるため、法的不確実性の解消が加速した。
下院は「CLARITY法」を7/17に可決し、資産区分とSEC/CFTCの権限配分を規定した。7/18にはステーブルコイン枠組みを定める「GENIUS法」が成立、上院銀行委員会は市場構造案の審議を進めている。
▽ FAQ
Q. BTCはいつ最高値を更新し、今いくら?
A. 2025年8月14日に約12.4万ドルで最高値、9/10は約11.4万ドル前後。
Q. FCAの小口ETN解禁はいつから?
A. 2025年10月8日開始予定で、国内認定市場でのETN購入が可能に。
Q. 米SECの新方針の要点は?
A. 多くのトークンは証券に非該当、オンチェーン資金調達の明確化等。
Q. 関連法案の進捗は?
A. 下院が7/17にCLARITY法可決、7/18にGENIUS法が成立済み。
Q. 機関投資の需給は?
A. CMEの建玉が過去最高、ETPの約25%を機関が保有との指摘。
■ ニュース解説
BTCは8/14に過去最高、9/10に11.4万ドル前後と高値圏で、米PPIの鈍化で9/16–17の利下げ観測が強まった一方で、SECの方針転換とCLARITY/GENIUSで規制の透明性が進んだ。
投資家の視点:①政策金利の変化(9–12月の25bp×1–2回見通し)とマクロの下振れに備えデュレーションとリスク資産の相関を点検、②規制面ではSECガイダンスと上院審議の条文差(SEC/CFTCの管轄、開示・適格性)をモニター、③フロー面ではCME建玉・ETP純流入・現物保管残高の三点観測で需給を把握するのが実務的である。
※本稿は投資助言ではありません。
(参考:U.S. Bureau of Labor Statistics,Federal Reserve)