▽ 要約
ベトナム:5年試行でVND建て・外資49%上限・資本金10兆ドンを規定。市場性を公式検証
米国:民主党12名が“7柱”を公表、ホワイトハウスは国家BTC備蓄を優先課題に
インフラ:Cboeが10年“継続型先物”を11/10開始予定、ロール不要に
企業:メタプラが大型増資でBTC準備拡大、ジェミニはNasdaq出資のIPOへ
世界で制度設計と採用が同時進行するなか、暗号資産規制と国家採用 2025は政策・市場インフラ・企業財務の三層で加速した。ベトナムの5年パイロット、米上院の新枠組みと国家備蓄構想、Cboeの新デリバティブ、メタプラの大型増資は、その潮流の縮図である。投資家は各国制度の方向、規制下商品、需給指標を総合し、景気循環と合わせてリスクを設計する意義が高い。
ベトナムの5年パイロットの要点
資本金10兆ドン・外資49%・VND建てに限定する厳格条件のため、国内主導で市場実現性と規制整備を測る試行となった。
政府決定は、取引・発行・決済をベトナムドンに限定し、運営は国内企業に限る。資本は10兆ドン(約3.79億ドル)以上、うち65%を機関投資家が拠出、外資は49%までに制限された。非公式ユーザーが1,700万人とされる実態を踏まえ、消費者保護と不正対策を伴う土台づくりに舵を切った。
文化的関心の可視化
政策進展と並行して、ハノイでサトシ像が公開され、ブロックチェーンギャラリーの開設で国民的関心の高まりが示された。
同像は世界で5体目とされ、分散性を象徴する“消えゆく像”のモチーフを採用した。政策・文化の両面で関心が可視化されることは、採用の裾野拡大と人材・投資の呼び込みにつながる。
米国―超党派枠組みと「国家BTC備蓄」
上院民主党12名が“7つの柱”を提示し、SEC/CFTCの管轄や不正防止を明確化する方向で与野党協議が進む一方、ホワイトハウスは没収BTC活用を含む戦略的備蓄の制度設計を最優先に掲げた。
この枠組みは、既存の共和党案への回答でもあり、成立には60票の超党派支持が鍵となる。ホワイトハウスのパトリック・ウィット顧問は、市場構造法案・ステーブルコイン法の実装と並ぶ最優先に「ビットコイン準備金」を位置づけ、法的課題の解決と立法後押しを明言した。
DOGE ETFの上場予定
米国初のドージコインETF「REX‑Osprey Dogecoin ETF(DOJE)」が1940年法に基づき9月11日に上場予定となり、アルトコイン受容の裾野が広がる可能性が出てきた。
今回の枠組みは従来の“現物ETF”の登録スキームとは異なり、投資会社法ベースでの商品設計が採られた。上場が実現すれば、ミームコインへの規制下アクセスという新たな投資窓口となる。
中央アジアの国家採用の芽
キルギスでは“国家暗号資産準備金”や国営採掘支援を含む法案準備が報じられ、現地では国家暗号準備の概念を定義する草案も伝えられた。
同国は国営金鉱の再編・資源政策を進めるなか、暗号資産の制度化でも一歩踏み出しつつある。地域の電力・資源事情を背景とした採掘支援は、国家レベルの関与を強める契機となる。
市場インフラと企業財務のアップデート
Cboeは“継続型先物”で長期エクスポージャーを規制下に提供し、メタプラネットは大型調達で企業トレジャリーの新潮流を象徴した。
Cboeの“継続型先物”
BTC・ETHで最長10年の単一契約と日次調整により現物価格との連動を確保し、ロールコストや運用煩雑性を抑える米規制下の長期デリバティブが11月10日に開始予定。
現物連動性は透明な資金調達レートで担保し、CFEで清算はCboe Clear USが担う。米国で“パーペチュアル様”の連続型を規制下提供する初の事例で、機関のヘッジ手段が広がる。
メタプラネットの大型増資とBTC準備拡大
同社は8月末に約1,303億円の海外公募を発表、9月9日には報道で約2,050億円へ増額・9〜10月の大量取得計画が伝えられた。総保有量は2万BTC超で、さらなる積み増し観測が強い。
日本市場で上場企業がトレジャリーにBTCを組み込む動きは限定的だったが、同社の攻勢は円安・低金利下での価値保存策として、財務ストラテジーの選択肢を広げた。
米マクロ―利下げ観測とリスク資産
BLSのベンチマーク改定で雇用が累計91.1万人下方修正となり、9月会合での利下げ観測(25bp中心、50bpの可能性も)と“流動性相場”再開期待が強まった。
トランプ大統領は過去に100bpの大幅利下げを促す発言も行い、市場ではFedWatchで9月利下げ確率が高止まり。ブラックロックのリック・リーダー氏も50bpの是非に言及した。歴史的に利下げ局面は株・暗号資産に追い風となりやすいが、織り込み剥落リスクにも留意が必要だ。
長期保有者と“クジラ”の蓄積
出金歴のない“アキュムレーター”が26.6万BTCと過去最高域に達し、100–1,000BTC保有ウォレット数も過去最多を更新したため、需給の引き締まりが進む。
アキュムレーターは「2回以上の受取・出金なし」で定義され、価格下落局面でも供給を吸収してきた。こうした蓄積強化は取引所残高の減少と相まって、上方バイアスの地合いをつくる。
ソフトウェア供給網の教訓
npmの人気パッケージ(chalk・debug等)18本が乗っ取りで改ざんされたが、金融被害は数十セント〜数十ドル規模に留まり、対策の有効性と“対応コストの大きさ”が浮き彫りとなった。
攻撃はウォレットアドレス差し替え等を狙ったが、主要ウォレットの検証機能や検知の迅速さが奏功した。とはいえ、開発現場では署名・2FA・SBOM運用などの基本対策徹底が改めて求められる。
▽ FAQ
Q. ベトナム試行の資本・外資・通貨の条件は?
A. 資本金10兆ドン、外資上限49%、VND建て限定で国内企業のみ運営。2025-09-09公表の枠組みで市場性を検証。
Q. 米“7本柱”の焦点はSEC/CFTCのどこ?
A. 非証券型現物市場の空白是正と管轄明確化、発行体・プラットフォームの登録義務化、不正資金対策の強化が核。
Q. Cboeの“継続型先物”は何が新しい?
A. 10年満期の単一契約で日次調整により現物連動、ロール不要の米規制下デリバティブとして長期ヘッジに有効。
Q. メタプラネットのBTC戦略はどの程度か?
A. 9月時点で2万BTC超を保有。約1,303億〜2,050億円の増資報道により9–10月の大幅積み増し計画が示された。
Q. DOGE ETF“DOJE”の位置づけは?
A. 1940年法ベースの初のDOGE ETFで、9/11上場予定。規制下でミームコインへのエクスポージャーを提供する。
■ ニュース解説
ベトナムの公式試行が始まり、米国は超党派枠組みと国家備蓄構想を前進させたため、規制下商品・企業財務・長期需給の三方向で制度化と資本流入が同時進行となった。
ベトナムは厳格条件で5年試行を開始し、米上院民主党は“7柱”を公表、Cboeは長期先物を11/10に開始予定で、企業ではメタプラが大型増資、米国ではDOGE ETFが上場予定となったため、雇用改定−91.1万人などで米景気減速観測と利下げ期待が強まる中で規制の明確化ニーズが高まり、機関投資家の参加拡大と需給の引き締まりが進む一方で政策の不確実性や“織り込み剥落”に注意が必要だ。
投資家の視点:各国の規制前提・商品仕様(契約満期・資金調達レート)・企業の調達余地(希薄化リスク)・オンチェーン需給(取引所残高、クジラ増加)を統合し、ドル金利とリスク許容度で配分を再設計するのが実務的だ。
本稿は投資助言ではありません。
(参考:Cboe,PR Newswire,Business Wire)