▽ 要約
・TETHERがカナダの金鉱企業Elemental Altusの株式31.9%を取得し、実物資産戦略を強化
・NASDAQ上場のTRIDENTが5億ドルを調達し、世界初の企業向けXRPバンカーズ・ヴォールトを構築
・CIRCLEの米国上場は暗号資産市場を“コイン投機”から“株投機”へと導く契機に
・SUIエコシステムは2.23億ドル流出事件から復旧し、主要DEXがTVLを回復
・STRIPEはBridgeとPrivy買収で「前後一体型」ステーブルコイン決済網を確立
・RWA(現実資産トークン化)は国債・不動産・カーボンクレジットに波及し、機関導入が加速
実物資産へ踏み出すTether
USDT発行で知られるTetherは、カナダ上場の金鉱会社Elemental Altus株式31.9%(追加オプション含む)を取得し、初めて採掘事業へ直接出資した。これにより同社の裏付け資産は米国債・現金に加え金へと多様化し、ステーブルコイン運営に実物ヘッジを導入する先例となった。暗号資産の機関化が実物資産分散を伴う段階に進んだことを示す。
企業財務にXRPを組み込むTrident
NASDAQ:TDTHのTridentは最大5億ドルを調達し、企業向け「XRPヴォールト」を開設すると発表。長期保有・ステーキング・Rippleエコ参加を通じ、財務資産としてXRPを恒常的に組み込む。株式市場に上場する企業が暗号資産を組織的に保有する動きは、MicroStrategyのBTC戦略に続く拡大例である。
Circle上場が呼ぶ「株投機」時代
6月5日、USD Coin発行体Circleが米国上場し、初日の株価は167%高。これは5月22日に11万ドルを付けたビットコイン高騰と連動し、「個人投機→機関投資」の流れを加速させた。BlackRock・Fidelityの现物ETF買い入れに加え、香港《ステーブルコイン条例》を追い風に関連株が世界的に急騰。暗号資産の機関化が株式市場にも波及し、資金調達環境が改善した。
Sui:ハッキングからの復興
5月22日のCetus DEX攻撃で2.23億ドルが流出しTVLが25%減少したSuiだが、Cetusの資産補填とMomentum/Turbosなど4プロトコルの台頭により、TVLは19.2億ドルまで回復。安全監査とve(3,3)設計が投資家信頼を再構築し、暗号資産の機関化に必須のガバナンス・リスク管理の重要性が再確認された。
Stripe、「全栈」決済網を完成
決済大手Stripeは、2月に買収したBridge(清算)に続き、6月にPrivy(ウォレットSDK)を取得。前端のオンボーディングから後端のドル建て清算まで一気通貫で提供することで、USDC決済の企業導入障壁を劇的に低下させた。ステーブルコインがWeb2企業の日常決済インフラへ染み出す典型例であり、RWA発行者にとっても決済コストを劇的に削減する。
RWA:国債・不動産・カーボンの三本柱
- 国債トークン化:BlackRockのBUIDLファンド残高は50億ドルを突破。高利回り米債への直接アクセスをDeFiにもたらす。
- 不動産トークン化:香港EnsembleサンドボックスでREITs代替商品がテストされ、スマートコントラクト清算でコストを40%削減。
- カーボンクレジット:香港・巴西間でのブロックチェーン緑証取引が2.2億レアル規模で成立。Gold Standardは通証化ガイドライン策定に着手した。
これら事例は、「規制整備→機関資金→流動性」の正循環を実証し、暗号資産の機関化が金融インフラへ深く浸透していることを示す。
ニュース解説──“次の一手”を読む4つの視点
視点 | いま起きていること | 何がカギになる? | いつ頃見える? | もし実現すると… |
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(1) 香港《ステーブルコイン条例》第1号ライセンス | 8月施行直後に Bitfinex、Circle、Ant International などが申請予定 | 準備資本 と 1:1準備証明の即時開示 | 2025年Q4〜2026年Q1 に初認可の公算 | アジア域内のドル建てUSDT/USDC流通量が急増し、オンチェーン決済のハブとして香港が再浮上 |
(2) 米国《GENIUS法案》成立 | 上院で超党派合意済み、下院通過が焦点 | 準備資産=T-Bills を義務化 & FDIC相当の保護 | 2026年度予算審議と同パッケージ採択が最速シナリオ | ステーブルコイン市場規模が〈現在約2100億$→4年で2兆$〉へ、UST利回り≒オンチェーン短期金利の地位を確立 |
(3) L1/L2の“RWA専用チェーン”商用化 | Avalanche Evergreen、Polygon CDK、Circle Perimeter などがPoC段階 | オンチェーンKYC と 法定通貨⇄トークン化国債の即時DVP | 2025年末までに欧州系銀行が最初の実需案件(国債レポ) | 銀行間スプレッド縮小 → DeFi上で“短期国債マネー・マーケット”が誕生し、ETH・SOL利率を上回る可能性 |
(4) 企業会計へのデジタル資産計上指針 | IASB が「暗号資産の公正価値会計」公開草案を提示 | 減損テスト→時価評価 への変更と 監査基準 の明確化 | 2026年1月以降適用(早期適用企業は25年度決算から) | 上場企業がBTC/ETH/XRPを“現金同等物”の一部と認識 ⇒ 企業バランスシート経由の買い圧が恒常化 |