【要約】
・CIRCLE IPOが既存金融機関中心の配分で批判を招く
・USDC市場規模600億ドル、利息依存モデルが課題
・BTCが11万ドル台回復、ETHへの資金流入が加速
・米議会でステーブルコイン規制案が前進、企業導入も拡大
・PectraアップグレードでETH基盤強化、ETH ETF資金流入続く
・Tether・SBI・BlackRockなど大手もステーブルコイン市場に参入加速
CIRCLE IPOが投げかけた「利益一致」への疑問
米USDC発行体Circleは5月末、31ドルの公募価格でNASDAQ上場を果たし、週末には100ドル超まで急騰した。だが配分の大半をJPM・CitiなどTradFi勢に割り当て、黎明期からUSDCを支援してきた暗号ネイティブファンドをほぼ排除したとして、Arca CIOのJeff Dorman氏は「背信行為」と激烈に批判した。Circleは
- 流通USDC残高600億ドル、年成長率91%
- 収益のほぼ100%を米債利息に依存
- コインベースと利息を折半
- EBITDAマルチプル59倍(年換算)
という高いバリュエーションを提示した一方、ステーブルコイン本来の「分散的価値共有」を忘れたとの指摘は重い。
「利息一本足打法」のリスク
米金利ピーク説が強まる中、Circleの事業モデルは「利下げ=収益急減」の脆弱性を抱える。USDCは銀行破綻や脱ペッグを何度も経験し、今後の成長には
- トークン化国債など新収益源の創出
- DeFi・CEX双方での深い流動性維持
- 規制対応と多国通貨USDCの拡充
が不可欠だ。
BTC高値接近、ETHが主役交代を狙う
6月10日、BTCは11万ドル台を回復し年初来高値に肉薄。対してETHはPectraアップグレード後の拡張性向上とETH ETF資金流入(7週で15億ドル)を追い風に、ETH/BTCレシオ0.14を回復──アナリストDCinvestor氏は「1年以内に1万ドル」と強気だ。CoinSharesも「22年米大統領選以降で最大の資金流入」と指摘し、ETH主導のアルトシーズン到来を示唆する。
規制と企業導入の同時進行
米上院ではThune議員主導のステーブルコイン法案が審議入りし、SECもDeFi向け「イノベーション免除」を検討。フランスSocGenはUSD・EUR建て独自ステーブルコインを発行、SBI/新生銀はCircle株へ5,000万ドルを投資した。ベライゾンETF IBITは運用資産700億ドルを突破し、USDC・USDTの制度的需要は一層拡大している。
投資家が注視すべき3つのポイント
① 収益多角化
Circleがトークン化証券、クロスチェーンUSDC供給で利息依存を脱却できるか。
② 流動性分散
Arcaの批判を教訓に、暗号ネイティブ勢へのインセンティブ設計を是正できるか。
③ 規制整備
米ステーブルコイン法案の可決タイミングと、USDC・USDTの準拠戦略が価格に直結する。
ニュース解説
Circle上場はステーブルコインの「ウォール街化」を象徴する一方、暗号コミュニティとの利害調整を怠ればUSDCの採用加速は頓挫しかねない。対照的にETHは拡張性と機関マネー流入の両輪で存在感を高めつつある。金利低下局面で利息依存モデルが揺らげば、利用用途が多様なETHやトークン化資産が次なる資金受け皿となる可能性が高い。投資家はプロトコル収益源の質と分散度、そして規制対応力を見極めることが不可欠だ。