【要約】
・米中が関税を一時的に引き下げ、両国の「90日休戦」で市場センチメントが急回復
・トランプ氏の中東訪問で大型国防契約やAI半導体協定が相次ぎ、「AI外交」の色彩が強まる
・地政学の緊張が各地で緩和に向かい、PKK解散や南アジア対話再開の兆しも
・仮想通貨マーケットは大手機関からの認知度がさらに向上、CoinbaseがS&P500入りへ
・米国ではGENIUS法案が上院の手続段階を突破し、安定通貨(ステーブルコイン)規制を巡る議論が加速
中美の関税一時緩和と市場の反応
5月12日に米中双方が関税をそれぞれ30%・10%に一時引き下げると発表し、90日間の休戦協定が結ばれました。これに伴い株式市場は急上昇、米国財務長官の発言から「再交渉の入り口」と見る向きも強まっています。しかし、関税の完全撤廃には慎重論が根強く、あくまで短期的停戦との見方が大半です。
とはいえ、世界的なリスク資産の一つとされる仮想通貨市場はこの好材料を敏感に反応し、ビットコインをはじめ主要銘柄が一時的に上昇。機関投資家の買い意欲も刺激され、暗号資産は年初から力強い値動きを保っています。
トランプの中東訪問:AI外交の存在感
5月13日から4日間にわたり、トランプ前大統領がサウジアラビア、シリア、UAEを歴訪。サウジと総額1420億ドル規模の国防契約、米エネルギー・インフラへの6000億ドル投資など豪快な協定が次々に締結されました。さらに注目はNvidiaやAMDと連携したAIチップ提供で、サウジ主導のプロジェクトに米国テック企業が参加する形が「AI外交」を鮮明化。
一方、シリアとの高官会談では25年ぶりの対話が実現し、対立相手との国交正常化も模索中。カタールでもボーイング大型契約を締結するなど、トランプ氏独自の交渉術が中東全体のパワーバランスを再構築する可能性が示唆されています。こうした「AI外交」の動きが国際貿易や技術投資に一層の影響を与えることで、仮想通貨市場もさらなる資金流入が期待されるとの声があります。
地政学リスクの緩和シグナルと各地の変化
5月には中東以外でも緩和ムードが見られました。PKK(クルド労働者党)の解散やインドとパキスタンの対話再開、ロシアとウクライナの局地的外交協議など、長引く対立のほころびを繕う動きが散見。
もちろん、経済制裁や領土問題が一朝一夕に解決するわけではありませんが、地政学リスクが和らげば、国際金融市場のボラティリティも低減しやすくなります。今後、仮想通貨を含むリスク資産の価格安定化に寄与すると期待されています。
仮想通貨の機関投資家認知度が上昇
株式市場の反発を受け、暗号資産分野でも明るい話題が続きます。ビットコインが一時10.5万ドルを突破し、Coinbaseは5月19日にS&P500へ組み入れが決定、各種ETFからの買い入れ資金が数十億ドル規模に上る見通しです。さらにeToroはNASDAQへの上場を果たし、RobinhoodもカナダのWonderFiを買収、既存金融と暗号資産の融合が加速中。
こうした流れにより、投資銀行やヘッジファンドを中心に仮想通貨への注目が急拡大。ステーブルコインを軸とした法整備や規制枠組みの整備も進み、従来は曖昧だった投資基盤がより明確化されるとの期待感が広がっています。
米国GENIUS法案の行方:ステーブルコイン規制が本格化
今年2月に上程された米国の安定通貨規制枠組み「GENIUS法案」は、5月20日時点で上院の手続的動議を66対32で突破。最終成立にはなお下院と大統領署名が必要ですが、与野党内で合意点が見え始めたことで法案の年内成立が現実味を帯びています。
この法案により、安定通貨の準備資産・発行ライセンス・消費者保護などが包括的に規定される見込み。また、トランプ前大統領一族関連の「USD1」など物議を醸す案件との兼ね合いにも注目が集まります。法整備が進めば大手機関や企業も安心してステーブルコインを活用できるため、仮想通貨市場がさらに拡大するきっかけとなりそうです。
ニュースの解説
地政学的リスクと仮想通貨: 地域紛争の緩和や米中協議による貿易摩擦の一時停戦など、国際政治の安定化は投資マインドの改善に直結。暗号資産への資金流入を後押しし、さらに機関投資が活性化する下地が整いつつあると考えられます。
AI外交の拡大: トランプ氏の中東ツアーを契機に、AI半導体や国防テックが外交交渉の主軸として浮上。今後、各国が「AI協力」をめぐり相互投資や技術提携を拡大すれば、仮想通貨やトークン化資産に対する関心が一段と強まる可能性があります。
安定通貨と法整備: GENIUS法案が上院段階を突破したことは、米国内でステーブルコインに明確なコンプライアンスルールが整備される第一歩。ビジネス界や投資家が積極参入できる環境づくりにつながり、長期的に市場を押し上げる要因となりえます。