10月11日 暗号資産・市場総括:急落と修復

▽ 要約

マーケット 一時急落後に反発、BTCは10.5万ドル割れ
レバ清算 24時間で約191億ドル・過去最大級
ステーブル USDEが0.62まで乖離後に回復傾向
ETF/国内 現物ETF9日連続流入、PayPayがBinance Japanへ40%出資

突発の急落はなぜ起き、どこまで戻ったのか――本稿は10月11日 暗号資産ニュースの要点を、価格・清算・ステーブル・機関投資家・国内動向の5本柱で解説する。結論は、外部ショックと過剰レバの清算連鎖で急落したが、流動性の戻りとETF資金の下支えで一定の修復が進んだ。読むメリットは、短期のリスク管理と中期シナリオを同時に持てる点だ。

市場サマリー(価格・清算・復元)

外部ショックとレバレッジ清算が重なったため、時価総額の急減と乖離が同時多発し、その後は流動性回復で水準訂正が進んだ。
10月11日未明、米国の対中関税100%表明などのマクロ要因をトリガーにリスク回避が波及し、BTCは10万4千〜10万7千ドルまで瞬間安、その後11万ドル台を回復した。24時間の先物清算額は約191億ドル、清算口座は約162万と過去最大級。単一最大清算はHyperliquidのETH‐USDTで2.03億ドル規模が観測された。
また一部取引所で高コンカレンシーによる遅延・一時停止が発生したが、主要サービスは順次復旧し市場機能は回復基調となった。

清算メカニズムと流動性

板の薄さに高レバが集中したため、連鎖的な強制ロスカットでヒープの清算が進み、価格は「過伸」ののち短時間で反発した。
清算はBTC・ETHのみならずアルトにも波及し、短時間でショートも巻き込む“V字”の往復が発生。板流動性の乏しい銘柄や派生トークンは異常値を付けやすく、ストップ狩りとスリッページが増幅した。イベント時は証拠金余力とクロスマージンの余白を厚めに保つ設計が重要である。

ステーブル/ステーキング連動資産の乖離

ボラティリティ急拡大を受け、USDEやWBETH、BNSOLなどで一時的な価格乖離が広がったが、換金・償還機能の維持確認後は徐々に平常化した。
USDEは一部市場で0.62付近まで下振れしたが、発行主体はミント・リディーム継続と過剰担保状態を公表。ステーキング由来の換算トークンは指数・参照レートの仕様差で乖離が増幅し得るため、価格参照源・転換比率・清算閾値の設計を事前に確認しておきたい。

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機関資金と国内エコシステム

ETF資金が連続流入を続けたため、現物需給は底堅さを保ち、一方で国内ではオンランプ強化の資本提携が進展した。
米BTC現物ETFは10月9日まで9営業日連続の純流入を記録、同日は約1.98億ドル流入し、BlackRockのIBIT単体で約2.55億ドル。直近の最高値圏からの急落局面でも、制度マネーの受け皿が機能した格好だ。日本ではPayPayがBinance Japanに40%出資し、PayPayマネー連携による売買・出金が可能になる計画が示された。

開発・プロトコル動向(Kohaku/Grayscale)

EFがエンドツーエンドのプライバシー指針「Kohaku」を公表し、Grayscaleは監視リストを更新したため、開発と投資プロダクトの両面で材料が相次いだ。
Ethereum FoundationはKohakuのロードマップとリファレンス実装を公表。Heliosライトクライアント、プライベート送受金、プラグイン型SDKなどで「端から端までの最小漏洩」を志向する。併せてGitHub上で拡張が進む。投資面ではGrayscaleが「Assets Under Consideration」を更新し、BNB、TON、ENA、PENDLE、HYPE、JUP等31銘柄を掲載した。機関投資家のユースケース拡張とリスク選好の変化を映す。

▽ FAQ

Q. 10月11日のBTCはどこまで下落しましたか?
A. 主要取引所で10万4千〜10万7千ドル台を付け、その後11万ドル台へ戻りました(2025-10-11)。

Q. 24時間の清算規模は?
A. 約191億ドル、清算口座は約162万。単一最大はHyperliquidのETHで2.03億ドルでした。

Q. USDEはどの程度乖離しましたか?
A. 一部市場で0.62近辺まで低下。発行体は償還継続と過剰担保を説明し、価格は回復基調です。

Q. ETF資金の状況は?
A. 米BTC現物ETFは9営業日連続で純流入、10月9日は約1.98億ドル、IBITに約2.55億ドル入りました。

Q. 国内の注目材料は?
A. PayPayがBinance Japanへ40%出資。法令準拠のオンランプ強化と決済連携の拡大が見込まれます。

■ ニュース解説

外部ショックで市場が急落したため、過剰レバの連鎖清算と一部サービス遅延が発生した一方で、ETF流入継続と取引機能の復旧で水準訂正が進んだ。
BTCは10万ドル前後まで急落後に反発し、24時間清算は約191億ドルと過去最大級となったため、対中関税表明などで高まったマクロ不確実性と蓄積レバレッジを受けてステーブルやステーキング連動資産で乖離が生じ、一方でCEXの運用耐性が再検証された。
投資家の視点:①証拠金比率・レバ上限の常時見直し、②清算連鎖時の段階指値と成行回避、③現物・ヘッジ比率の事前ルール、④ステーブルの発行・償還と参照レートの多様化、⑤CEX障害を想定した代替経路(他所・自前カストディ)を準備。

※本稿は一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。

(参考:PayPay,Binance Blog,Ethereum Foundation Blog