9月9日 暗号資産ニュース:DAT・USDH・トークン化

▽ 要約

マクロ 米雇用22,000人・失業率4.3%で利下げ観測。
ステーブル HyperliquidがUSDH構想、発行は投票制。
トークン Nasdaqが株式トークン化をSEC申請。
セキュリティ Venus緊急停止とZoom偽会議に注意。

景気減速で利下げ観測が強まる一方、取引所発のステーブル構想や株式トークン化、金のデジタル化など制度面の前進が相次いだ。9月9日 暗号資産ニュースでは、USDHやPGI、DAT資金、主要スケジュールを時系列で整理し、短期変動と中期構造変化を分けて解説する。

市況とマクロ(雇用・金利・価格・フロー)

雇用の弱さで利下げ期待が上昇したため、BTCは10.7万ドル支持を試しつつETHは4,200ドルを割り込み気味のレンジとなった。
米8月非農業雇用は+2.2万人、失業率4.3%で下方改定観測(▲60〜90万人)が台頭、年内3回の利下げ観測が優勢に。BTCは約11.10万ドル、ETHは約4,303ドル、Fear&Greedは50(中立)。BTC/ETH ETFは直近週で資金流出、AI・ミームがセクター上昇を主導。主要ガス代はBTC 1 sat/vB、ETH 0.165 Gwei。

本日(9/9)の注目予定

雇用統計ベンチマーク改定や大型アンロックが重なるため、短期ボラ拡大が想定される。
SOL Strategies(ティッカーSTKE)がNasdaq上場承認、BinanceがAVNT上場、Sonicは8:00に約1.5億S(循環供給の5.02%)、MOVEは20:00に5,000万(1.89%)解放予定。

Hyperliquid「USDH」構想の要点

自前ステーブルで金利収益を内部循環させるため、分散型の発行者選定モデルを採用した。
DEXのHyperliquidは、取引高・TVLが急拡大する中、USDHのティッカーを確保し、提案公募→検証者5日投票→ガス入札で発行者を決定する設計を提示。USDT/USDC依存を下げつつ、準拠性と透明性を強調。公平性や事前情報の有無を巡るコミュニティ議論も発生。

成長指標と位置づけ

DEX競争激化のため通貨主権の確立が狙いとなり、収益のコミュニティ還元余地が広がる。
8月の契約出来高は3,980億ドル、TVLは年初3.17億→25億ドルへ増加。USDHの準備金利はバリデータやコミュニティ配分の可能性が示唆され、内部決済・清算資産としての役割が想定される。

資産トークン化の前進(Nasdaq×株式/WGC×金)

既存の清算・権利を保ったままデジタル化する動きが加速し、TradFiとWeb3の橋渡しが現実味を帯びた。
Nasdaqは株式・ETPのトークン化をSECに正式申請、DTC清算を維持し投票権・配当等の権利を付与する方針。WGCはPGI(Pooled Gold Interests)で金の共同持分をデジタル移転、担保利用・分割保有を容易にする新枠組みを提示、金のトークン化(PAXG/XAUT)との差異も明確化。

Ethereum陣営の布陣(RWA・DAT・基盤刷新)

RWA・DATの受け皿拡充とL1性能強化が並行し、L2の特化進化が促される。
EtherealizeはElectric/Paradigm主導で4,000万ドル調達、RWA発行・機関向け清算・ZKプライバシーを柱にWall St.連携を推進。HashKeyはアジア最大級のマルチ通貨DATファンド(初期目標5億ドル超)構想を公表。さらにEthereumは「スリム化コンセンサス」ロードマップでハッシュ署名・zkVM集約に移行し、ブロックタイム4秒化や最低ステーク1ETH化を検討。

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セキュリティ動向(Venusの緊急停止/Zoom偽会議)

単独のフィッシング被害がプロトコル全体停止に発展したため、分散ガバナンスと非常時制御の設計見直しが焦点となった。
Venus Protocolでは、Zoomクライアント悪用の委任署名悪用で約1,300万ドル被害、20分でコア機能を凍結し12時間で回収プランを可決。緊急ブレーキの集中性がDeFiの分散性を揺らす教訓に。別件の偽Zoom会議型マルウェアはKeyChain等から機密を窃取し、複数取引所へ資金洗浄が確認。会議URL検証・未知ソフト未実行・EDR/AV更新・ウォレット分離が必須。

資金調達・トレジャリー(9/1–9/7)

市場が手元流動性を意識する中でも、インフラ・RWA・AI境界領域へ資金は継続流入した。
先週は13件で1.48億ドル、Etherealizeが最大の4,000万ドル、Utilaが2,200万ドル等。上場企業の暗号トレジャリー調達は累計16.06億ドル、ETH150,000相当の私募など大型が並ぶ。

予測市場とWeb3ロボの新潮流

規制前進・PMF定着で予測市場に大型資金が集まり、DePIN×ロボも台頭した。
Polymarketは評価額10億ドルで2億ドル超調達観測、Kalshiは評価額20億ドルで1.85億ドル調達済み。Web3ロボではDePIN×遠隔操作・データ生成が進み、機械経済の新ユースケースが広がる。

短・中・長期の相場観

短期は景気後退懸念で押し目、中期は利下げと制度化で資金回帰、長期は再インフレ・スタグ懸念に留意となる。
向こう3–4週は下押しとボラ拡大、Q4 2025〜1月にかけてはETF・MMF資金の回帰で新高値を試す展開、2026年入りの物価再燃なら利下げ打ち止めで天井圏というシナリオが有力との見立てもある。

▽ FAQ

Q. 9月9日の主要スケジュールは?
A. Sonicは8:00に1.5億S解放、MOVEは20:00に5,000万。NasdaqのSTKE承認やBinanceのAVNT上場も重なる(9/9基準)。

Q. HyperliquidのUSDHの特徴は?
A. 発行者は提案公募と検証者投票で選定、内部決済・清算に特化し、準拠性と透明性を前提に設計される。

Q. WGCのPGIはPAXG/XAUTと何が違う?
A. PGIは機関向け枠組みで共同持分・担保利用を重視、PAXG/XAUTは小口決済やDeFi活用が中心で性格が異なる。

Q. Nasdaqの株式トークン化は何を変える?
A. DTC清算や株主権を維持したままトークンで売買可能にし、既存規制市場とブロックチェーンを橋渡しする。

■ ニュース解説

雇用悪化で利下げ観測が強まったため短期は慎重姿勢が続く一方で、Nasdaqの申請やWGCのPGI、USDH構想とDAT資金の拡大が制度化を押し上げ、中期の資金回帰余地が広がった。
投資家の視点:短期はイベント前後のボラに備えポジションサイズを適正化、中期はRWA・DAT・高流動ステーブル等の制度化テーマをウォッチ、長期は再インフレや政策反転のシナリオ管理を徹底。

※本稿は投資助言ではありません。

(参考:PANews