暗号資産市場構造法案、クリスマスまでに可決?ルミス発言を検証

▽ 要約

年内可決:ルミス氏が感謝祭〜クリスマス可決目標と発言
議会状況:下院はCLARITY法案を294対134で可決
超党派:上院では民主12〜18名の賛成見込みと報道
市場影響:規制明確化で機関資金流入と信頼性向上

米上院のシンシア・ルミス議員は「暗号資産市場構造法案」を年内、すなわちクリスマスまでに可決し大統領の机に届けると意欲を示した。下院可決済みのCLARITY法案を土台に、上院は銀行委・農業委で審議を詰める。読者は本稿で法案の骨子、進行表、そして市場への影響を短時間で把握できる。

法案の骨子と狙い

デジタル資産の分類と当局の役割を法律で定義し、現物市場の監督を整備するため、予見可能性と投資家保護を両立させる包括枠組みだ。

デジタル資産の定義と区分

「ブロックチェーン利用に価値が依拠する」資産をデジタル・コモディティと定義し、証券・デリバティブ・ステーブルコイン等は除外する設計であるため、分類基準の事前明示が可能になった。
各プロジェクトは自らのトークン特性を評価しやすくなり、登録・開示義務の射程も判別しやすくなる。

SEC/CFTCの権限配分

証券的取引や開示はSEC、非証券型の現物市場はCFTCが新たな登録制度(DCE/DCD/DCB)で監督するため、いわゆる“スポット市場の空白”を埋める。
二重登録や情報共有の仕組みを法定化し、重複規制を避けつつ監視・執行を強化する。

仲介業者の規制・顧客資産保護

取引所・ブローカー・カストディアンに自己資本・分別管理・内部統制を義務付けるため、破綻時の顧客資産毀損リスクを抑制できる。
市場監視や相場操縦の禁止も明文化され、FTX型不正の再発防止を図る。

イノベーション配慮(開示型セーフハーバー)

開示条件付きでの資金調達の道筋や、開発者・ソフトウェア提供者に関する適切な線引き(例:送金業規制の適用明確化)を整備するため、責任ある実装と研究開発を促す。

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議会の進行状況と「年内成立」シナリオ

下院可決済みのCLARITY法を土台に、上院の銀行委・農業委で条文調整を経て本会議採決へ進む可能性が高い。

下院の可決と関連法

2025-07-17に下院はCLARITY法案を294対134で可決し、民主党78名が賛成したため、超党派の基盤ができた。
併せてGENIUS(ステーブルコイン)法は2025-07-18に成立、反CBDC法案H.R.1919は下院219対210で通過している。

上院の工程と発言

銀行委で9月末までの可決、10月に農業委審議という工程が示され、ルミス氏は「感謝祭〜クリスマス」を目標時期としたため、年末会期内成立の現実味が増した。
銀行委のスコット委員長は「民主12〜18名が前向き」と述べ、過半確保の可能性に言及している。

論点と調整余地

投資家保護の強度、デリバティブ規制の具体、セルフカストディやDeFiの扱い、AML対策と開発者の線引きなどで、与野党・監督当局・州規制当局との調整が続く。
ただし上下両院が同一テキスト(CLARITY)を土台に議論している点は、最終妥結を促進する。

市場への影響—信頼回復と資金の呼び戻し

規制の不確実性が縮小するため、機関投資家の参入、国内拠点の整備、流動性の増加が期待できる。

投資家保護と信認向上

登録・監督枠組みの導入で不公正行為の抑止と上場審査の基準化が進むため、玉石混交からの選別が進み、個人投資家のリスク把握が容易になる。
透明性が増し、執行による規制からルール先行型へ移行する。

機関資金の流入とボラティリティ

連邦レベルの明確な線引きによりコンプラ費用の見通しが立つため、年金・保険・銀行等の参加が進み、板厚化による急変動の抑制が期待される。
長期的には、主要銘柄への資金集中と流動性の質向上が価格安定に寄与する。

▽ FAQ

Q. CLARITY法案とは?
A. 下院は2025-07-17に294対134で可決、民主78名賛成。SEC/CFTCの役割と現物市場監督を定義します。

Q. ルミス氏はいつどこで何と言った?
A. 2025-08-20のワイオミング州イベントで、感謝祭〜クリスマスまでの可決を目指すと表明しました。

Q. 関連法はどうなった?
A. GENIUS法は2025-07-18に成立、H.R.1919(反CBDC)は下院219対210で通過し上院審議待ちです。

Q. 上院可決の目安と支持状況は?
A. 銀行委9月末、農業委10月目標。民主12〜18名の賛成余地に委員長スコット氏が言及しています。

Q. 市場への主要な効果は?
A. ルール明確化で機関参入と流動性増が進み、執行リスク低下と価格の安定化に寄与すると見込まれます。

■ ニュース解説

下院はCLARITY法案を可決し上院は銀行委→農業委の工程を掲げたため、ルミス氏は「年末(感謝祭〜クリスマス)」の成立を示唆した。一方で投資家保護やDeFiの扱いなど条文調整の論点は残る。
投資家の視点:超党派の進展と並行して、①取扱所・カストディの規制準拠状況、②上場審査と開示の水準、③セルフカストディと税務の実務を点検したうえで、過度な集中や信用リスクを避ける分散と長期積立の基本を守るのが無難。

※本稿は投資助言ではありません。

(参考:Congress.gov,Office of the Clerk,White House