12月6日暗号資産市況:規制強化とインフラ進化

▽ 要約

市況:BTC約9.2万ドル、ETH3,100ドル台で調整継続
規制:日本・中国・米国で不正取引とRWAを同時に締め付け
インフラ:Fusaka後のETH、Starknet・Solana DEX・RWAが進展

ビットコインの一服とETF資金流出、中国・日本・米国による規制強化、Fusaka後のイーサリアムやStarknet・RWAの動きをまとめて点検します。

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ビットコインが9万ドル台で足踏みするなか、12月6日時点の暗号資産市況が「一時的な押し目」なのか「トレンド転換」なのか判断しづらくなっています。市場では、米国の12月利下げ観測や人民元高進行といったマクロ環境の変化に加え、中国7協会によるRWA・空気通貨への警告、日本でのフィスココイン相場操縦認定、米検察によるTerra創業者ド・クォンへの懲役12年求刑など、規制・司法面のニュースが一気に顕在化しました。この記事では、これらの材料を整理しつつ、Fusaka後のイーサリアムやStarknet、SolanaのHumidiFi、RWA市場などインフラ側の進展を横断的に解説します。

市況総括:ビットコイン9.2万ドルとマクロ環境

ビットコインとイーサリアムは12月第1週にかけて高値圏から調整しつつも、マクロ環境の緩和期待とテック資産の評価拡大に支えられ、依然として強気相場の範疇に収まっています。

マクロとセンチメント

米国では、12月10日のFOMCで25bp利下げが行われるとの市場確率が約87%まで上昇し、量的引き締め終了と「準QE」とも言える準備管理買い入れの開始観測が出ています。加えて、米国債残高は初めて30兆ドルを突破し、債務負担の重さが意識される一方で、流動性再供給への期待がリスク資産を下支えする構図です。

為替面では、人民元がドル安と中国資産への資金回帰を背景に7.0の節目に迫り、「年内破7」観測が急速に高まっていますが、中国当局は双方向変動を維持したい思惑もあり、持続性には不透明感が残ります。日本では、日銀が12月会合で28年ぶりの利上げに踏み切る可能性が示唆されており、金利差縮小期待は円・円建てリスク資産双方のボラティリティ要因となっています。

センチメント指標を見ると、12月5日時点でビットコインは約92,045ドル、イーサリアムは3,167ドル、恐怖・貪欲指数は「28(恐怖)」と、強気一辺倒からは明確にトーンダウンしています。24時間の清算額は約2.43億ドル、うちBTC約8,376万ドル、ETH約7,361万ドルと、ロング・ショート双方でレバレッジ縮小が進んでいることがうかがえます。

BTC・ETHとETFフロー

テクニカル面では、ビットコインは年初来の重要水準である93,500ドル近辺で上値を抑えられ、96,000ドルを明確に上抜けて初めて「トレンド再加速」と判断できるとの見方が増えています。反対に、93,500ドルを維持できない場合は81,500ドル、さらには68,000ドル近辺までの深い押しを警戒する声もあります。

一方、強気派は本サイクルのピークを15万〜20万ドル(Brad Garlinghouse氏は18万ドル)とするシナリオを依然として維持しており、長期保有者の平均取得コストとされる約96,956ドルを回復できるかどうかが信認回復の分水嶺とされています。

フロー面では、直近の現物ビットコインETFが約1.95億ドルの純流出、イーサETFも4,157万ドル超の流出と、短期マネーが一部撤退する動きが確認されています。これに対し、ソラナやXRPのETFでは小幅ながら資金流入が続いており、オルトへの分散が続く「ローテーション局面」とも解釈できます。

イーサリアムは3,200ドルのレジスタンスを突破し、3,650〜3,900ドルを目標とする見方が広がる一方、Fusakaアップグレード後もL2手数料低下の恩恵が価格にどこまで織り込まれているかはなお議論が残ります。

規制・政策アップデート:中国7協会、日本フィスコ、Terra裁判

各国・地域の規制当局は、投機過熱や不正取引、ステーブルコインのシステミックリスクに対するスタンスを改めて明確にしており、価格ではなく「制度面のターニングポイント」として注視する必要があります。

中国7協会のリスク提示:RWAと空気通貨への強い牽制

12月5日、中国インターネット金融協会など7つの国家級金融業界団体が共同でリスク提示文書を発出し、虚擬通貨・RWAトークン・マイニング名目の投資案件に対して厳しいトーンの警告を出しました。

項目対象要旨・リスク認識
1ビットコイン等の仮想通貨法定通貨ではなく、中国国内で決済・流通手段としての正式な地位を持たない。
2πコインなどの「空気通貨」技術的実態やビジネス価値が乏しく、詐欺・マルチ商法と結びつきやすい高リスク対象。
3ステーブルコインKYC・AML要件を十分に満たさず、マネロンや違法資金移転に悪用されるリスクが高い。
4RWAトークン化虚偽資産・投機・経営破綻リスクを伴い、現時点で中国当局はいかなる形でも承認していない。

銀行・証券・基金・期貨・インターネットプラットフォームを含む会員機関には、境内での仮想通貨・RWA関連サービス提供を禁じるとともに、関連社群・広告・海外取引リンクから距離を置くよう求めており、中国向けビジネスを展開するプロジェクトや取引所にとっては、事実上の「全面オフショア化」要求に近いインパクトがあります。

日本:フィスココイン相場操縦と開示違反

日本では、証券取引等監視委員会が12月5日、上場企業フィスコとブロックチェーン関連企業クシムに対し、暗号資産「フィスココイン」の評価損を適切に計上せず、有価証券報告書に虚偽記載を行ったとして課徴金納付命令を勧告しました(フィスコ1,500万円、クシム1,200万円)。

報道によれば、元経営陣が自社発行トークンの価格を取引を通じて不当に吊り上げ、本来計上すべき評価損を回避していたとされ、国内で暗号資産相場操縦が具体的事例として認定されたのは異例とされています。現行制度では、監視委に暗号資産そのものの不公正取引に対する犯則調査権がなく、今回の課徴金対象は「不正会計」にとどまりましたが、金融庁は今後、暗号資産の不公正取引にも課徴金を科せるよう金商法改正を検討していると伝えられています。

このケースは、「自社トークン+上場株式」という組み合わせのガバナンス・開示リスクを象徴する事例であり、日本市場におけるトークン発行モデルの見直し圧力が強まるとみられます。

米国:Terra創業者ド・クォンに懲役12年求刑

TerraUSDの崩壊で約400億ドル規模の損失を出したとされるTerraform Labs共同創業者ド・クォンについて、米検察はニューヨーク連邦地裁に対し懲役12年を求刑しました。

クォン氏は既に通信詐欺・商品/証券詐欺の共謀など複数の罪で有罪を認めており、量刑ガイドライン上は最長25年ながら、司法取引に基づき検察側は12年以下の刑を求めることで合意しています。判決言い渡しは12月11日に予定されており、FTXなど一連の事件と併せて「2022年バブル崩壊の責任追及フェーズ」が一つの区切りを迎えることになります。

同時に、米国ではドル建てステーブルコインに関する包括法制や市場構造法案の策定が進んでおり、ステーブルコインやトークン化資産が国債市場・決済インフラに与える影響が改めて議論されています。

企業・プロジェクト・資金調達:RWA・L2・Solana DEX

規制強化と並行して、RWAやL2、ソラナ系DEXなどインフラ・プロジェクト側では着実な進展が続いており、「技術と制度のギャップ」をどう埋めるかが中長期テーマとなっています。

RWAとステーブルコイン:First Digital・WLFI・規制サンドボックス

RWA周刊によると、2025年11月28日〜12月5日の期間でRWA全体のオンチェーン時価総額は181.7億ドルと前月比でわずかに減少した一方、ホルダー数は約55.68万人まで増加し、裾野拡大が続いています。ステーブルコイン時価総額は3,017億ドル超に達するものの、月次トランザクション量や月間アクティブアドレスは2桁台のマイナス成長となっており、「量から質」への転換局面に入ったとの見方が示されています。

プロジェクト面では、香港拠点のステーブルコイン発行体First DigitalがSPACを通じた上場計画を進めているほか、トランプ家系支援のWorld Liberty Financial(WLFI)が2026年1月にRWA商品をローンチする計画を公表するなど、トークン化証券・トークン化MMFの実案件が増えています。一方、Bloombergの記事を基にした分析では、ステーブルコイン残高が今後3兆ドル規模に拡大すると予測する強気派に対し、JPモルガンやドイツ銀行などは「国債需要の純増効果は限定的で、既存MMFからのシフトにとどまる」として冷静な見方を崩していません。

英国FCAのステーブルコイン規制サンドボックスや、イスラエル中銀のデジタルシェケルとステーブルコイン規制のロードマップなども進展しており、RWA/ステーブルコインは「無規制のグレーゾーン」から「厳格な枠内での制度化」へと段階的に移行しつつあります。

イーサリアムFusakaとStarknet:L2コスト低下とBTCFi

12月3日にアクティベートされたイーサリアムのFusakaアップグレードは、コンセプト的には地味ながら、L1/L2両面の実効性能を底上げする「エンジニアリング型アップデート」と位置付けられます。Blob拡張とPeerDAS(データ可用性サンプリング)によってL2のDAコストが半減以上し、Gas Limitは6,000万に引き上げられました。

さらに、最小Blob手数料(EIP-7918)の導入により、L2需要が低迷しても一定のETHバーンが維持される設計に変わり、Dencun後に弱まっていた「超音速マネー」=ETH通貨デフレのストーリーを部分的に復元しようとしています。これにより、富達・ブラックロックなど伝統金融機関によるバリデータ参加やステーキングビジネス参入のハードルが下がるとの期待も出ています。

L2の一つであるStarknetは、7月以降のTVLが約3倍の3億ドル、ステーブルコイン時価総額が1.54億ドルと過去最高を更新し、過去3カ月のネットインフローは5.84億ドルで全チェーン2位と報告されています。日次アクティブアカウントは5〜6万、STRKステーキングは10億枚超、BTCネイティブステーキングは1,791BTC(約1.66億ドル)規模に達するなど、BTCFiとプライバシーDEXを軸にしたエコシステム形成が進んでいます。

12月にはLayerZeroやStargateの統合、原生USDC対応なども予定されており、RWAやペイメント系ユースケースを含めた「ZK+BTC+プライバシー」の複合ストーリーがどこまで現実の収益・手数料創出につながるかが焦点となります。

関連:Ethereum FusakaでL2手数料はどう変わる

Solana暗池HumidiFiと低コスト「薅羊毛」案件

Solana上の暗池型DEXであるHumidiFiは、稼働から半年でソラナDEX出来高の50%超を占める最大プロトコルとなり、12月5日にトークンTGEを予定しています。プロジェクトは自らのモデルを「Prop AMM」(自営的AMM)と称し、
・高性能サーバーによるオフチェーン計算
・カスタムオラクルでの価格配信
・検証者と直結した低レイテンシーなオンチェーン約定
を組み合わせることで、大口取引時のスリッページ低減やアービトラージボットへの耐性強化を狙う設計です。

一方で、軽白書によればトークンの約90%をチームが支配しているとされ、想定FDV約6,900万ドルに対してガバナンス集中リスクや売り圧懸念も指摘されています。JupiterのWETトークン公募で約557万ドルが調達されるなど資金需要は確認されるものの、TGE後に取引量と収益がどこまで持続するかは未知数です。

別のPANews寄稿「行情惨淡,盘点10个低成本‘薅羊毛’机会」では、Starknet上の高頻度パーペチュアルDEX「Lighter(LITER)」をはじめ、比較的少額から参加可能なエアドロップ・TGE候補10案件が紹介されています。Lighterは2025年10月にメインネットローンチ済みで、TVL約11億ドル、日次ユーザー5.6万人超、最大日次出来高189億ドルとされ、TGEは2025年末〜2026年Q1に予定、コミュニティ割当は50%とされています。

もっとも、これらはいずれも高ボラティリティかつ規制・技術リスクが残る早期プロジェクトであり、「低コスト=低リスク」ではない点には留意が必要です。

イベント・テーマ:CZ vs Schiffと12月の重要日程

イベント面では、Binanceブロックチェーン週の「BTC vs ゴールド」討論と、12月FOMC・Terra判決など、象徴的なテーマがいくつか重なっています。

CZ vs Peter Schiff:ビットコインvsトークン化ゴールド

ドバイで開催されたBinanceブロックチェーン週では、CZと長年のビットコイン批判者であるPeter Schiffが「ビットコイン vs トークン化ゴールド」をテーマに公開討論を行いました。CZが1kgのゴールドバーをSchiff氏に手渡し、真贋証明の難しさを問うシーンは、現物ゴールドとデジタル資産の対比を象徴する演出として大きな話題となりました。

議論の中でSchiff氏は、自身もゴールドをトークン化するプロジェクトを進めていることを認め、「分割・転送・保管コストの面ではトークン化ゴールドが現物より優れている」と発言しています。これは、従来のゴールド最大派がRWA文脈に歩み寄りつつあることを示す一方で、「それでも基礎資産は黄金であり、ビットコインには内在価値がない」という従来の主張は崩していません。CZ側は、2100万枚の固定供給と検証可能な台帳を前提に「価値の源泉は物理性ではなくネットワーク」であると反論し、両者の立場の違いは明確なままです。

12月イベントカレンダー:FOMC、Fusaka、Terra判決

日付イベント内容区分補足メモ
12月10日FOMC(利下げ観測が強い)マクロ政策金利・今後の利下げペースに注目
12月11日ド・クォン量刑言い渡し予定規制・司法Terra崩壊に関する象徴的な裁判
12月上旬〜Fusakaアップグレード完了直後のL2ガス動向技術・インフラL2手数料・トラフィック推移を確認
12月中各種ETFのリバランスマクロ・フローBTC・ETH・アルトETFの資金フロー

さらに、SpaceXが未公開株のセカンダリーで8,000億ドル評価を目指しているとの報道もあり、OpenAIの5,000億ドル評価を上回る「史上最大の未上場テック企業」が現れる可能性も意識されています。ハイベータなテック資産のリスクオンがどこまで継続するかは、暗号資産への資金配分にも波及し得る要素です。

▽ FAQ

Q. 2025年12月6日時点でビットコイン相場はどの水準ですか?
A. 2025-12-5時点でBTCは約92,045ドル、恐怖・貪欲指数28と報告され、レバレッジ整理を伴う「一服局面」にあるとみられます。

Q. 中国7協会のリスク提示はRWAビジネスにどう影響しますか?
A. 2025-12-5の文書でRWA代幣化は未承認と明示され、境内機関の発行・取引が禁止されたため、中国居住者向けRWA事業は海外拠点やジオフェンス設計が一段と重要になります。

Q. StarknetやHumidiFiなど新興プロジェクトの共通リスクは?
A. StarknetのTVL約3億ドルやHumidiFiのFDV約6,900万ドルなど成長余地は大きい一方、チーム保有比率やスマートコントラクトのバグ、流動性急変といった固有リスクが残ります。

Q. イーサリアムFusakaアップグレードで何が変わりましたか?
A. 2025-12-3のFusakaでL2のDAコストは半減以上、Gas上限は6,000万に引き上げられ、PeerDAS導入により検証者参加ハードルが約85%低下したとされます。

■ ニュース解説

ビットコインが9.2万ドル近辺で調整を続ける一方で、イーサリアムFusakaやStarknetなどインフラ層は前進し、中国・日本・米国ではRWAや相場操縦、ステーブルコインに対する規制・司法対応が加速しているため、市場は「長期の強気ストーリー」と「短期の不確実性」がせめぎ合う局面にあります。こうした環境下では、価格だけでなくマクロ指標、ETFフロー、規制当局のスタンス、主要プロジェクトの実需指標を多面的に追う必要があります。

事実関係としては、
・マクロ面で利下げ観測と米国債増発、人民元高進行がリスク資産全般を揺さぶっていること
・暗号資産では、BTC・ETHが高値圏から一服し、ETFに短期的な資金流出が出ていること
・規制面では、中国がRWAと空気通貨を明確に牽制し、日本でフィスココイン相場操縦が開示違反として認定され、米国ではTerra崩壊に対する量刑が本格化していること
・技術・インフラ面では、FusakaによりイーサリアムのL1/L2性能とガス経済がアップグレードされ、StarknetやSolanaのHumidiFiなど新興エコシステムがTVLと出来高を伸ばしていること
・RWA/ステーブルコインは市場規模こそ拡大しているものの、米国債需要や財政問題の「魔法の解決策」ではないとの冷静な評価も根強いこと
が挙げられます。

投資家の視点:本稿で触れた個別プロジェクトや銘柄は、いずれも高ボラティリティかつ規制・技術リスクを伴うものであり、短期価格目標や個別の売買判断に直結させるのではなく、
(1) マクロ環境(利下げペースとドル・人民元動向)、
(2) 規制の方向性(中国のRWA規制、日本の不公正取引への対応、米ステーブルコイン法制)、
(3) インフラの実需指標(L2のガスコスト・TVL・アクティブユーザー)をモニターしつつ、中長期でどのチェーン/セクターが「持続的に手数料とキャッシュフローを生むのか」を見極める材料とするのが現実的です。
レバレッジや短期集中投資は、価格調整局面や規制イベントのボラティリティを踏まえるとリスクリワードが急速に悪化し得るため、ポジションサイズと流動性管理を最優先に検討する必要があります。

※本稿は一般的な情報提供を目的としており、特定銘柄・金融商品の売買を推奨するものではなく、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

(参考:PANews