▽ 要約
基本:ビッド・アスク常時提示で流動性を供給。
サービス:板厚維持・裁定・上場初期支援まで。
費用感:初期$10万・月$2万+在庫貸与が一例。
留意点:不正摘発強化、健全なMM選定と契約管理。
板が薄いとスリッページが拡大し価格発見が歪む、そこで効くのが暗号資産 マーケットメイクです。定義は「常時の双方向提示で流動性を供給しスプレッドを縮める」ことで、適切に設計すれば出来高と安定性を同時に高められます。本稿は仕組み・代表企業・費用・選定とリスクを一次資料で整理し、実務の指針を解説します。
マーケットメイクの定義・役割
常時ビッド/アスクを提示して約定機会を連続させるため、スプレッド縮小と価格発見の効率化が進む。
マーケットメイカーは「相手方不在」を埋める存在です。板に継続的に指値を並べ、在庫管理で大口にも対応し、価格ジャンプを抑えます。DEX領域のAMMは数式で価格付けする別系統ですが、中央集権型の板取引におけるMMと目的は同じく流動性の連続性確保にあります。
スプレッドと価格発見
気配の厚みが増すほど裁定が通りやすくなるため、同一資産の価格差は縮み、実効スプレッドも低下する。
約定機会の増加は参加者の取引コストを押し下げ、意図しない価格飛びを減らします。
板厚と深度の維持
各価格帯に買い/売りを多層に配置するため、瞬間的なフローでも価格が飛びにくい。
高頻度な在庫回転が求められ、約定状況に応じてアルゴがリアルタイム調整します。
取引所プログラムとリベート
取引所はMM向けの手数料優遇・リベート設計を持ち、板への常時コミットを促す。
MM企業の主なサービス
双方向提示・板管理・裁定・上場初期の流動性供給まで、依頼主(取引所/プロジェクト)に合わせて実装される。
高頻度アルゴで価格の連続性を担保し、複数市場を跨ぐ裁定で価格乖離を圧縮します。新規上場時は「超初期流動性」を厚くし急変動を緩和、OTCやデリバティブでも在庫とヘッジを提供します。
双方向提示と高速執行
成行フローに対し板の前後で連続的に気配を再構築するため、短時間の需給ショックでも実効スリッページを抑えられる。
注文板の設計・監視
板の深度と残存時間をモニタし、流動性目標(スプレッド幅・サイズ)に対して自動補正する。
裁定・クロスマーケット
取引所間の価格差を活用するため、マルチヴェニューで同時に在庫を回転させる。
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代表的なマーケットメイカー(世界/日本)
老舗クオンツから新興まで裾野が広がり、拠点・認可・事業範囲は各社で異なるため用途に応じ選定する。
- Jump Trading / Jump Crypto(米・1999/2021)— HFTの知見で流動性提供、開発投資も展開。
- Wintermute(英・2017)— 大手MM。2025年にはCantorとのBTC担保クレジットラインも話題。
- GSR(2013)— グローバル展開、2025年に英国FCA登録子会社が承認。
- DWF Labs(2022)— 投資+MMモデルで急拡大、活動手法を巡り報道が物議。
- B2C2(2015)— 2020年にSBIが90%取得、日欧米で展開。
- Keyrock(2017)— ベルギー拠点の機関投資家向け流動性提供。
- 暗号屋(Ango‑ya)(福岡・2019)— 上場初期流動性の設計支援、2025年にMMボット外部提供を発表。
費用感と契約スキーム
典型は初期費+月額+在庫貸与だが、市況やKPI連動で変動し、ローン+コール等の成功報酬型も一般化している。
- 公開事例(GSR × Blockstack/Stacks, 2019)
初期費$100,000、月額$20,000(6か月)、BTC/ETH合計$1,000,000貸与という条件が米SEC開示資料・報道で確認できます。 - モデルの型
リテイナー(毎月費+トークン/見合い資産の貸与)とローン+コールオプション型(貸与+権利付与)の二類型が代表的です。 - コールオプション例
Aurora DAOのコミュニティ提案では、MMへのトークン貸与と、将来価格に一定プレミアムを乗せた行使条件の枠組みが提示されました。 - 取引所連携とリベート
MMプログラムへの参加で手数料優遇・リベートを受ける設計も一般的です。
目安の整理
・セットアップ費:$100k(公開事例)
・月次費:$20k(公開事例)
・在庫(貸与):BTC/ETH計$1m(公開事例)
※ 実額は規模・ペア数・KPIで大きく変動
信頼できるMMの選び方と主なリスク
実績・透明性・認可・契約条件・保管体制を精査し、相場操縦・ウォッシュトレード等の違法手法と明確に一線を画す相手を選ぶ。
- 実績・評判の検証:上場支援や板厚KPIの達成状況を一次情報で確認。
- 契約透明性:サービス範囲、KPI、解約・返還条件、オプション条項を明文化。
- 法令遵守:FCA等の登録・AML/KYC体制を確認(例:GSR UKの登録承認)。
- カストディ/在庫リスク:貸与資産の保全・返還方法、担保や信託の有無を設計。
- 不正・摘発リスクの顕在化:
- 2025年2月、Gotbit創業者がポルトガルから米国へ送還、3月に有罪答弁、6月に禁錮8か月判決(会社は約$23m没収)。当局はウォッシュトレード等を摘発。
- DWF Labsを巡る相場操縦疑惑をWSJ等が報道(Binanceは証拠不十分と説明)、議論が継続。
- 法的リスクの体系:各国当局は市場操作・AML違反を強化、MMは罰金や業務制限の対象となり得ます。
▽ FAQ
Q. マーケットメイクの定義は?
A. 常時ビッド・アスクを提示し流動性を供給、スプレッドを縮小して価格発見を助ける行為。
Q. 代表的な企業はどこ?
A. Jump、Wintermute、GSR、DWF Labs、B2C2、Keyrock、国内は暗号屋など。
Q. 具体的な費用例は?
A. GSRとBlockstackの2019年契約で初期$10万・月$2万・BTC/ETH$100万貸与が公開されています。
Q. リスクや最新の摘発事例は?
A. 2025年、Gotbit創業者が送還・有罪答弁・判決。相場操縦やウォッシュトレード摘発が強化。
Q. 契約形態の違いは?
A. リテイナー型(固定+貸与)とローン+コール型が代表。後者は行使価額等の条件管理が重要です。
■ ニュース解説
Gotbit創業者の2025年送還・有罪答弁・判決が示すように摘発は実体化しており、相場操縦疑惑を巡る報道も続くため、契約と監督の厳格化が加速する。
米司法省は2018–2024年のウォッシュトレードを摘発し、2025年に送還・有罪答弁・判決まで進みました。一方、民間報道は特定MMの取引行動を検証し、市場監視の在り方が問われています。結果として、依頼主側のデュー・ディリジェンスと契約ガバナンス強化が必然となります。
投資家の視点:上場前後は「板の連続性」と「在庫の質」を観測し(スプレッド、深度、成行10万USDの影響幅)、プロジェクトはKPIを数量化して(目標スプレッドbp・最小サイズ・対応時間帯)報酬と連動させる必要があります。また、オプション条項は価格維持動機の歪みを招き得るため返還・行使条件を透明化し、さらに認可・体制(FCA等)と不正時の解約条項、資産保全(信託/マルチシグ)を明記することが求められます。
※本稿は投資助言ではありません。
(参考:U.S. Department of Justice,SEC(EDGAR))