11月20日暗号資産市況:ZEC急騰とRevolut提携

▽ 要約

ビットコインは$89,000割れ、ETHも$2,900を下回り、ETFから資金流出が続く
ZECは2カ月で約700%高、シールドプール拡大でプライバシー需要と投機が交錯
RevolutがPolygonを決済基盤に採用し、6,500万ユーザーにステーブル決済を拡大
SolanaやXRPなどオルトETFの累計流入は約$700Mと限定的で、価格はむしろ下落

ビットコイン急落とZEC700%高、Revolut×Polygon提携、ETFフローや規制ニュースを横断し、11月20日の暗号資産市況と持続し得るテーマを解説する。

11月20日の暗号資産市況は、ビットコインとイーサリアムの調整が続く一方で、ZECの約700%高やオルトコインETFの拡大、Revolut×Polygon提携など、ファンダメンタルとフローが分岐した局面となっている。
短期的にはETFからの資金流出とレバレッジ清算が価格を押し下げる一方、決済・クラウド・インフラ領域では大型採用と規制明確化が進んでおり、暗号資産市況全体の基盤はむしろ厚みを増している。
本稿では、投資家がフォローすべき「価格・フロー」「規制・政策」「企業・プロジェクト」「イベント」の4軸から、11月20日時点の暗号資産市況を立体的に読み解く。

市況総括(価格・フロー・センチメント)

ビットコインとイーサリアムが11月20日に再び下落したため、市場全体ではリスクオフとレバレッジ調整が優勢となっている。
現物価格は、BTCが一時$89,000割れ、ETHも$2,900を下回り、11月の下落率はETHで20%超と「調整相場」の色彩が濃い。恐怖・強欲指数は16と極度の恐怖水準で、ETFからはビットコイン約$373M、イーサリアム約$74Mの純流出が続くなど、パッシブフローも価格の重石になっている。

デリバティブでは、24時間の清算額が約$273M、清算人数は11万人超と、レバレッジ過多なポジションの巻き戻しが進行中だ。BTC・ETHともにロング側の清算が多く、足元は「多すぎる強気ポジションの整理」による下押しとみなせる。まだ流動性は保たれているものの、追加の清算クラスター(BTC $87k近辺、ETH $2,900・$2,760近辺)が意識されている。

一方、ZECはこの秋にかけて2カ月で約700%高となり、同じベア寄り環境下でも「テーマ性のあるアルト」へ短期資金が集中している。シールドプール残高は3月末の約266万ZECから11月初旬には約498万ZECへ増加し、建玉も$18.75Mから$1.38Bまで急拡大したことから、プライバシー需要とレバレッジ投機が重なった典型例といえる。

レンジ・需給の見方

清算とETFフローが重なるなか、BTCは$87k〜$93k、ETHは$2,900〜$3,300を中心とするレンジで、上下とも厚い注文と清算クラスターが混在する「揉み合いゾーン」に入っている。

PANewsの「Trading Moment」では、$94k〜$96k帯にショートが積み上がる一方、$87k〜$81kにかけては中長期投資家が買い下がる構図が指摘されており、「レンジ上限でのショートカバー」と「下限での現物・低レバ積み増し」が当面の基本シナリオとなる。
恐怖指数やETF流出額を踏まえると、テクニカルだけでなくフロー面でも「短期売り一巡」がどこで確認できるかが、次のトレンド転換点を探るうえでの焦点となる。

規制・政策アップデート

米国とブラジルで税制・債券・監督体制に関する動きが相次いだため、価格調整局面でも政策面のニュースフローは引き続き重要なドライバーとなっている。

Jack Dorsey率いるBlockは「Bitcoin is Everyday Money」キャンペーンを通じ、$600以下のビットコイン決済をキャピタルゲイン課税の対象外とする免税枠の創設を米議会に提案した。現行制度では少額決済でも譲渡益を計算する必要があり、これが日常決済普及のボトルネックになっているためである。

米ニューハンプシャー州では、BitGoがビットコインを超過担保として保管する形で、額面$100MのBTC担保付き市債が承認された。担保価値が130%を割り込むと自動清算される条項を組み込むことで、債券保有者を優先的に保護する構造になっており、ビットコインを裏付け資産とする公的ファイナンスの試金石となる。

ブラジルでは、仮想通貨やステーブルコインを用いた越境送金を金融取引税(IOF)の対象とする案が検討されている。これまで外為トランザクションに課されていた税率適用を、暗号資産を経由した支払いにも拡張するもので、アービトラージ的な税回避を封じる狙いがある。

また、米SECは2026年の検査重点項目からデジタル資産に関する専用セクションを外しており、「暗号だけを切り出した特別監視」から、ETFや証券全般に織り込む形へのシフトがうかがえる。一方でFDICではTravis Hill代理議長の常任化プロセスが進行中であり、銀行監督の側面から暗号ビジネスへの目線がどう変化するかも注視が必要だ。

企業・資金調達・プロジェクト動向

複数のプレーヤーが決済・インフラ・ETF・融資で前向きな発表を行ったため、価格調整の裏側で「採用と制度化」のトレンドはむしろ加速している。

RevolutとPolygonの提携

欧州ネオバンクRevolutは、Polygonをステーブルコイン送金・決済・トレーディングの基盤として採用し、UKとEEAを中心にUSDC・USDT・POL送金をアプリから直接行えるようにした。2025年11月時点でPolygon経由の取扱高は累計$690M超に達し、同社の6,500万ユーザー(うち1,400万が暗号資産ユーザー)に対して、MiCA準拠の低コスト決済レールを提供している。
RevolutはキプロスでMiCAライセンスを取得しており、自社ステーブルコイン発行の検討も進むとされる。StripeやMastercardもPolygonを決済インフラに採用しており、「大手決済×L2チェーン」という構図がスタンダード化しつつある。規制順守を前提にしたステーブルコイン決済の拡大は、取引所依存のボラティリティとは異なるかたちで、暗号資産のユースケースを底上げする要因となる。

ZEC逆行高とプライバシー需要

ZECは9月末の約$58から11月上旬に$750まで上昇し、最大約12倍の値上がりを記録した。オンチェーンでは、シールドプール残高が3月の約266万ZECから11月4日には約498万ZECへ増加、総供給に占める比率も18%から29.38%まで拡大しており、「選択的プライバシー」機能に対する実需の伸びが確認できる。
一方で、建玉は$18.75Mから$1.377Bへ急増し、11月7日には資金調達率が-0.42%まで低下するなか価格が一日で48%上昇するなど、ショートカバーによるセンチメント主導の局面も顕著だった。ZECの上昇は「プライバシー需要を材料にしたテーマ株化」と整理でき、トレンドの持続性を判断するには、交易量やシールドプールTVLの持続を継続的に観察する必要がある。

ETF拡大とオルトコインの限界

Solana・XRP・LTC・HBARの4種類のスポットETFが相次いで上場し、累計純流入額は約$700Mに達したものの、銘柄別の価格パフォーマンスは軒並みマイナスとなっている。Solana ETF群には約$420M、XRP ETFには約$270Mの資金が流入したが、上場以降SOLは約31%、XRPは約13%下落し、LTC・HBARもそれぞれ7〜26%程度調整した。
ビットコインが時価総額の約60%を占める一方で、ETHとステーブルコインを除くオルトコインのシェアは約20%にとどまり、単一銘柄ETFは流動性とボラティリティの両面で構造的な制約を抱える点が指摘されている。ETFの「銘柄ラインナップ拡大」が必ずしも価格押し上げ要因にならず、むしろ既存ホルダーの出口として機能しうるリスクにも留意が必要だ。

Kraken・HSBC・Bitfuryなどの機関マネー

KrakenはCitadel Securitiesから$200Mの戦略投資を受け、直近の$600Mラウンドに続き企業価値は$20Bへと引き上げられた。IPO準備とグローバル展開を加速するための資本注入であり、かつ従来慎重だった伝統金融のプレーヤーが暗号資産取引ビジネスへ本格参入する象徴的な案件である。
HSBCは、米国とUAEの法人顧客向けにトークン化預金サービスを拡大する計画を示し、24時間リアルタイム決済や自律的な流動性管理の実装を目指している。また、BitfuryはAI・量子計算・分散型IDなどを対象とした総額$1Bの投資プログラムを発表し、マイニング収益を次世代インフラへのエクイティ投資に振り向ける戦略を明確にした。

関連:『米政府12.7万BTC押収とETFフローの関係』

インフラ・プロトコルアップデート(Filecoin・Aave・Ethereum L2)

FilecoinはOnchain Cloudをローンチし、検証可能なストレージとチェーンネイティブ課金を組み合わせた「分散クラウド」への転換を明確にした。ENSやMonad、Safeなどが初期パートナーとして名を連ねており、AIやDeFiワークロードをWeb3インフラ上に直接載せる選択肢を提供する。
AaveはV4テストネットと新UI「Aave Pro」を公開し、チェーン横断で流動性を集約するHub-and-Spokeアーキテクチャを打ち出した。これにより、複数チェーンに分散していたプールを「Liquidity Hub」に集約しつつ、各スプロークから多様な資金フローを扱う設計となる。さらに、イーサリアム財団は「Ethereum Interoperability Layer(EIL)」構想を提案し、ERC-4337ベースでL2間トランザクションをウォレット一回署名で完結させるビジョンを示した。

イベント

マクロの観点では、11月20日のFOMC議事要旨公表とNvidia決算がリスク資産全体のセンチメントを左右するイベントとして注目され、暗号資産市況にも波及している。
「Trading Moment」は、11月下旬に集中するFOMC議事録・米雇用統計・インフレ指標が、来年の流動性見通しとドル金利パスの再評価を促すと指摘する。特にNvidiaはAI投資サイクルの象徴として位置付けられており、決算ガイダンス次第ではNASDAQとともにハイベータ資産であるBTC・ETHのボラティリティを再加速させる可能性がある。

ミクロでは、LayerZeroやKAITOなど複数トークンのロック解除、Binance Futuresによる一部パーペチュアルの上場廃止など、個別プロジェクト起因のフローイベントも重なっている。さらに、12月18日のCoinbaseプロダクトイベントや、ETFステーキングを巡る米財務省・IRSのガイダンス更新も控えており、ニュース次第で特定セクターに短期資金が集中する展開も想定される。

▽ FAQ

Q. 2025-11-20時点のBTC・ETH相場で最も重要なポイントは?
A. BTCは一時$89,000割れ、ETHも$2,900を下回り、24時間清算額約$273Mとレバレッジ縮小が進み、ETFからもBTC約$373M・ETH約$74Mの資金流出が出ている。

Q. ZECがこの秋に約700%急騰した要因とリスクは?
A. シールドプール残高が266万ZECから約498万ZECへ増え、建玉も$18.75Mから$1.38Bへ増加する中で、MiCA後のプライバシー需要とHyperliquidでのショートカバーが重なり、需給とセンチメントが同時に極端化した。

Q. Revolut×Polygon提携は暗号資産エコシステムにどんな意味を持つ?
A. 6,500万ユーザーを抱えるRevolutがPolygonをステーブル決済レールとして採用し、MiCAライセンス取得と併せてUSDC等のクロスボーダー送金を$690M超提供しており、トラディショナル金融とL2の接続点として重要な事例といえる。

Q. オルトコインETF4銘柄の資金流入とパフォーマンスは?
A. Solana・XRP・LTC・HBARのETFには累計約$700Mが流入したが、SOLは上場後約31%、XRPは約13%、HBARは約26%下落しており、ビットコインやイーサリアムに比べて規模・流動性・ボラティリティの制約が大きい。

Q. 規制・インフラ面で11月20日前後に押さえるべき論点は?
A. $100M規模のBTC担保市債承認、Blockによる$600免税枠提案、HSBCのトークン化預金拡大、Aave V4テストネットやFilecoin Onchain Cloud開始など、価格調整局面でも実経済とDeFi双方で制度化・実装フェーズが進んでいる。

■ ニュース解説

ビットコインとイーサリアムが調整する一方で、ZEC急騰やオルトETF拡大、Revolut×Polygon提携、BTC担保市債やトークン化預金など、実需と制度化の動きは11月20日時点でも着実に積み上がっているため、短期フロー主導のボラティリティと中長期の採用トレンドが乖離した局面と捉えられる。
投資家の視点:個別テーマ(プライバシー・L2・オルトETF)への短期集中と、規制・インフラ整備という長期ドライバーを分けて評価しつつ、レバレッジ水準とETFフローを確認しながらポジションサイズを調整することが重要であり、現物とデリバティブ、BTC・ETHとオルトのリスクバジェットを意識したポートフォリオ構築が求められる。

※本稿は一般的な情報提供を目的としており、特定の暗号資産の売買や投資戦略を推奨するものではありません。

(参考:PANews