9月12日 暗号資産市況:ETF流入と香港草案

▽ 要約

ETF:米現物型に7.57億ドル流入、3日連続。
香港:HKMAがCRP‑1草案、26年施行目標。
韓国:9/16にVCの暗号企業投資を正式解禁。
トレジャリー:CPOPがBTC300、Robinも配分。

市場の関心は「米ETFの資金動向」「アジア規制の変化」「企業のBTC保有強化」のどこに集まるのか。結論は、9月12日 暗号資産 市況の主役はETF資金の回帰で、香港の資本規制草案と韓国のVC解禁が制度面の追い風となる。これらを一望することで、短期の資金フローと中期の制度ドライバーを同時に把握できるように解説する。

米ビットコインETFの資金回帰

米現物ETFは9月10日(米東部)に7.57億ドルの純流入となり3日連続の資金流入で、総純資産は1,478億ドルに達したため、需給は中立からやや強気に傾いた。
主要銘柄ではIBIT(BlackRock)が2.11億ドル、FBTC(Fidelity)が2.99億ドルの流入で牽引し、累計純流入はそれぞれ591億ドル、121.8億ドル規模。流入が現物需要を下支えする一方、短期のボラティリティはマクロとオプションクォートに左右されやすい点は不変だ。※データは9/10時点の集計。

フローの読み方—「連続性」と「幅」

連続日数は需給の基調を、1日当たりの額は勢いを示すため、3連続かつ数億ドル級の定着が続くかが焦点となる。
9月10日の7.57億ドルは十分な厚みだが、連続性が崩れるとオプション・ガンマの影響で現物の下押し圧力が増す局面もある。次の注目はCPI/PPIとFOMC見通しに伴うリスク資産の再配分だ。

香港—銀行の暗号資産資本規制を再設計

HKMAは銀行向けの新モジュール「CRP‑1(暗号資産の分類)」草案を業界に回付し、許認可済みのステーブルコイン等に対する資本要件の最適化を提案したため、銀行のデジタル資産受入れのハードルが段階的に下がる可能性がある。
実施目標は2026年初で、Basel基準の適用枠組みを香港流に整備する方針。並行して、初回のステーブルコイン免許申請では中国系大手ネット企業や中資系銀行香港支店の不在観測も出ており、初期は限定的な顔ぶれで制度が走り出す見込みだ。

関連:人民元ステーブルコインは実現するか—香港発の規制と国際化の行方

市場インパクト—「銀行の関与度」をどう高めるか

資本要件の軽減は表口座での保有障壁を下げるため、ライセンス済みステーブルコインの残高拡大と銀行経由のオン/オフランプ整備を後押しする。
一方で、許認可やリスク管理の要件は高水準が維持され、無許可資産は高いリスクウェイトが続く見通しだ。短期にはステーブルコインの銀行経由流通が広がり、中期にはRWA/トークナイゼーション案件の実装余地が増す。

アジアと企業動向—VC解禁とトレジャリー強化

韓国は9月16日にVCの暗号資産関連企業投資を正式解禁するため、取引・仲介業も「制限業種」から外れ資金循環が改善する見込みだ。
企業サイドでは、中国上場企業POP Culture(CPOP)がBTC300(約3,380万ドル)をトレジャリーに追加、エネルギー輸送のRobin Energyは500万ドルの初回配分を完了した。スポット需要の裾野がアジア・コーポレートにも拡がっている。

資本市場—CoinSharesの米上場計画

欧州の大手アセットマネジャーCoinSharesはSPAC(Vine Hill Capital)との合体で米ナスダック上場を目指し、AUMは約80億ドル規模とされるため、米市場でのプロダクト拡張と競争激化が見込まれる。
Q2売上は4,152万ドルと四半期増収だが、EBITDAは前期比減少。米系大手との競争下で、収益基盤の多角化と規模拡大が課題だ。

DeFi・インフラ—HyperliquidとL2ガバナンス

Hyperliquidのネイティブ・ステーブルコインUSDHの発行事業者選定を巡り、DragonflyのHaseeb氏が「事前合意」疑惑を指摘したため、透明性と適合性の両立が改めて焦点となった。
Native Markets、Paxos、Ethena、Skyなど有力案が並び、収益還元(HYPE買い戻し比率)や法令適合(GENIUS Act等)、オンランプ連携(PayPal/Venmo等)で差別化を競う。並行して、L2ではScroll DAOがガバナンスの「一時停止」を宣言し指導部が総退任、設計の見直しを図る動きも出ている。

フローの行き先—メメコインから予測市場へ

メメ相場が減速する中で予測市場の存在感が増し、Solana圏では「メメコイン取引量の38%」に相当する規模感まで拡大したとの推計が示された。
CEX上場・エアドロ期待に依存しないイベント連動型の還元構造が、短期リスクを取りたい資金の受け皿になっている。

▽ FAQ

Q. 米BTC現物ETFの資金流入は続く?
A. 9/10に7.57億ドルの純流入で3日連続。IBIT2.11億、FBTC2.99億ドルが主因。

Q. 香港HKMAのCRP‑1草案の狙いは?
A. Basel基準を香港で実装し、許認可済み資産の資本要件を最適化して銀行関与を促す。

Q. 韓国のVC解禁で何が変わる?
A. 2025/9/16に暗号企業投資が解禁、取引・仲介業も対象外となり資金調達環境が改善。

Q. 企業のBTC購入は広がっている?
A. CPOPがBTC300を購入、Robin Energyは500万ドル配分と、アジアや実需企業へ拡大。

Q. DeFiでは何が争点?
A. USDH発行入札で収益配分と適合性が焦点。Scrollはガバナンス再設計に向け一時停止。

■ ニュース解説

ETF資金が回帰し需給が改善した一方で、香港の資本規制草案と韓国のVC解禁が制度面の追い風となり、企業のBTC購入も相次ぐため、現物需要とオン/オフランプ整備が同時進行で強化されつつある。
投資家の視点:短期はETFフローの「連続性」と米マクロイベントを監視し、中期は香港のCRP‑1や韓国の制度変化が与える資金流入経路の拡張を織り込む。セクターでは、ガバナンスや適合性の再設計が進むDeFi基盤の案件選別が重要。

本稿は投資助言ではありません。

(参考:PANews