▽ 要約
市況:BTCは一時$92,000まで急落し、恐怖指数9〜20の極端な恐怖が続いた。
ETF:現物ETFは週次で最大−$2.0B流出し、AUMと出来高が大きく縮小した。
規制:日本の20%課税案や105銘柄の金商法適用、貸暗号資産・積立金義務化など制度整備が加速した。
2025年11月の暗号資産ニュースを、市況急落とETF資金流出、日本の20%課税案やソラナETF・ステーブルコイン再編など主要テーマで整理する。

10月の急落を経て迎えた11月、ビットコインと暗号資産市場はどこまで悪化し、何が変わったのかが投資家の最大の関心だった。価格面では11万ドル台から一時9万ドル台前半まで崩れ、ETFフローも年初来級の流出局面を経験した一方、日本を中心に制度インフラは大きく前進した。この記事では、2025年11月の暗号資産ニュースを市況・ETF/フロー・規制・取引所リスクの4軸で俯瞰し、年末相場を見据えるうえでの論点と注意点を解説します。
2025年11月の暗号資産市況総括
11月の暗号資産市場は、ビットコイン急落と極端な恐怖指標、マクロ不確実性が重なった「高ボラ・リスクオフ寄りのレンジ相場」となった。
11月前半、BTCは10月末の約$111,000近辺から11月5日に心理的節目である$100,000を割り込み、1日で時価総額約$2,500億縮小という急落を演じた。9日には$102,000近辺まで自律反発したものの、11日には10万ドル攻防へ逆戻りし、ETFの週次流出がBTC▲$1.22B・ETH▲$510Mと拡大したことで戻りは重くなった。中盤には$97,000割れ(15日)、$96,000割れ(16日)と下押しが続き、17〜18日にかけては一時$92,000割れまで売り込まれている。月末にはETF流入の戻りとともに9万ドル台へ反発したが、10月高値からの調整幅は概ね15〜20%に及んだ。
センチメント面では、恐怖・強欲指数が20(Extreme Fear)から10、最終的には9まで低下し、2020年3月コロナショック級の「極端な恐怖」ゾーンに入ったことが象徴的だ。Deリバティブ市場では短時間に数億ドル規模の清算が繰り返され、DeFiではStream連鎖やUSDeのディペッグなどで約$1.0B規模の流出が報告された。こうしたセンチメントの急悪化に対し、USDCが15分で$750Mミントされるなどドル流動性の厚みは維持されており、「現金に逃げつつ、いつでも戻れる待機資金」が積み上がっている構図が読み取れる。
マクロ環境では、米国の人員削減が10月に153,074人と急増し、FRBミラン理事の発言もあって12月利下げ観測が強まった一方、米政府閉鎖長期化やFAAの減便示唆など政策リスクも意識された。株式市場は利下げ期待で高値圏を維持する場面もあったが、暗号資産については「利下げ期待=リスクオン」よりも「ETF換金売りとレバレッジ縮小」が前面に出ており、金利やインフレ指標よりもフロー要因に強く反応した月だったと言える。
ETF・フローとステーブルコイン動向
11月は、ビットコインETFからの大量流出とソラナETF上場、ステーブルコインとRWAへの資金シフトが同時進行した「フロー再編」の局面だった。
月初、10月30日時点でBTC ETFは前日比▲$488Mと流出超となり、週次では▲$799M(4日時点)と年初来級の売り圧力が確認された。11日までの1週間ではBTC▲$1.22B・ETH▲$510Mの週次流出と、ビットコイン優位ながらも全体としてリスクオフの足取りが鮮明になる。13日にはBTC ETF+ $524M流入・ETH ETF▲$107M流出と一時的な買い戻しも入ったが、14日には再びBTC▲$278M・ETH▲$184M流出に転じ、19日には暗号資産ETP全体で週次▲$2.0B、AUMは約$264B→$191Bへ27%縮小した。ETF依存の上昇相場が逆回転すると、AUMの目減りと出来高縮小が価格ボラティリティを増幅する典型例となった。
11月18日にはソラナ現物ETF「FSOL」が手数料0.25%で上場し、ビットコイン・イーサリアムに続くメジャーアルトETFの本格拡大が始まった。19日にはシンガポール取引所(SGX)がBTC/ETHパーペチュアル導入を予告し、ドイツなど一部市場ではETFへの逆張り流入も確認されている。ETFフロー全体では米国主導の換金売りが目立つが、地域・銘柄間で「どの現物・どのETFが最終的な受け皿となるのか」が、今後の中期パフォーマンスを左右するポイントになりつつある。なお、ETFとビットコイン市況の連動性を整理するうえでは、「11月5日 暗号資産市況:BTC急落と主要動向」も合わせて参照しておきたい。
関連:ビットコイントレジャリーTOP100:11月版(11/1)
ステーブルコインでは、10月11日の急落以降、時価総額が約$308.7B→$302.8Bと約$6.0B縮小し、USDCとUSDeが主な減少源となった。USDCは約$2.8B減少し、特にSolanaチェーンでは残高が1カ月で約18.24%減少、発行量は$12.8B→$8.7Bと約$4.1B減っている。アルゴリズム型USDeはTVLが$14.6B→$7.38Bと半減し、一時$0.65までディペッグするなど、高レバレッジ型モデルの脆弱性が露呈した。一方で、USDTは約$184.7Bと過去最高水準に達し、PYUSD(約$0.25B→$0.36B)や利回り付きUSYCも急増、米国債連動RWAトークン残高は$33B→$36Bへと約10%増加している。「レバレッジ担保としてのステーブル」から「規制順守・利回り付きインフラとしてのステーブル/RWA」へのシフトが、11月の大きな潮流と言える。
規制・政策:日本と海外の制度転換
2025年11月は、日本で暗号資産105銘柄の金商法適用や20%課税案、貸暗号資産・積立金義務化など制度面の議論が一段と具体化し、海外でも予測市場やステーブルコインを巡る枠組みが前進した。
日本では、交換業者取扱い105銘柄を金融商品取引法(FIEA)上の「金融商品」として再分類し、株式並みの情報開示とインサイダー規制、課徴金制度を適用する方針が示された。改正案は2026年通常国会提出を目標とし、2025年内のWG取りまとめ→2025-12与党税調→2026年法案審議→段階的施行というタイムラインが想定されている。同時に、105銘柄を一律20%分離課税とする案やETF整備の検討も進められており、国内口座数1,213万・預り資産5兆円超という市場規模に見合う制度への移行が狙いだ。
投資家保護の観点では、仮想通貨交換業者に対する責任準備金の積立金義務化や、貸暗号資産を金商法監督下に置く方向性が示された。積立金はハッキングや破綻時の補償原資をあらかじめ積み上げる仕組みであり、支払いスピード向上と補償確度の向上が期待される一方、中小業者にはコスト負担増と淘汰リスクも生じる。貸暗号資産については再貸付や委任検証に対する管理・開示義務、IEOは年50万円超を年収・純資産5%かつ上限200万円とする案が俎上に上がり、虚偽記載への罰則・課徴金、内部者取引規制も検討対象となった。
さらに、JBAが政府運営の「Japan Cold Wallet」構想を提案し、国内交換業者の暗号資産を政府運営のコールドウォレットに集約して外部送金時のみチェーンに触れる設計を検討している。現行でも95%以上がコールド管理されているが、国家管理の単一金庫とすることでハッキング機会を最小化しようとする一方、「単一障害点」「国家による資産コントロール」のリスクも議論の焦点だ。
海外では、GoogleがPolymarketの予測市場データを検索・Google Financeに段階的導入すると公表したほか、CFTCがPolymarketを条件付きで認可するなど、オンチェーン予測市場を正面からライセンスする動きが出てきた。タイPDPCによるWorldcoinへの約120万件の虹彩データ削除命令、南アフリカ準備銀行による暗号資産・ステーブルコインの新たな金融リスク指定など、プライバシーと金融安定リスクの両面からの規制強化も進んでいる。一方、米SECがトークン4類型の整理と「投資契約の終期」を示唆し、MiCAや香港・シンガポールの枠組みも運用局面に入りつつあり、規制の「線引き」が徐々に明確化しつつある点は中期的に重要だ。
取引所・プロジェクト・セキュリティと今後の論点
11月は、MEXC口座凍結疑惑やPort3ハック、Upbitからの流出など取引所・ブリッジリスクが相次ぎ、同時にSam Altman氏の元パートナー強盗事件など「物理的セキュリティ」が改めて意識された。
日本人投資家にも利用者が多いMEXCについては、金融庁から無登録業者として2度警告を受けているうえ、X(旧Twitter)上で累計5億円超の口座凍結報告が出ており、「違法ではないが高リスクな海外取引所」としての認識が強まった。同じ11月24日には、Port3 Networkのクロスチェーン・トークンであるCATERC20のバグにより$PORT3が10億枚増発されるハックが発生し、ブリッジ設計と監査体制の脆弱さが露呈している。28日には韓国UpbitでSolana系資産約540億ウォン相当が流出し、親会社の再編局面も相まって、韓国個人資金の一部が株式市場へ回帰する動きが報告された。
DeFi・レバレッジ領域では、USDeのディペッグやListaのUSDX金庫強制清算など、ステーブルコインとレンディングを組み合わせた高レバレッジ構造のリスクが顕在化した。HyperliquidやLighterといったデリバティブDEXは高い成長を続けているが、HYPEトークンやHyperEVMの手数料キャプチャ設計を巡り、「TVLや出来高ではなく、トークンホルダーへのキャッシュフロー還元設計が評価軸になる」という認識も強まっている。こうした事例は、「高レバレッジ+複雑な設計+監査・ガバナンス不備」が重なるプロダクトほど、ボラティリティ局面で一気に破綻リスクが顕在化しやすいことを示している。
セキュリティ面では、OpenAI共同創業者Sam Altman氏の元パートナーである投資家Lachy Groom氏が、サンフランシスコの自宅で武装強盗に遭い、約$11M相当の暗号資産を奪われたと報じられた。ハードウェアウォレットやマルチシグを用いたとしても、物理的な脅迫には脆弱であるという現実が改めて浮き彫りになった格好だ。同時に、Vitalik Buterin氏が「Galaxy Brain Resistance」で指摘したように、「賢い人ほど複雑な理屈でリスクを正当化しがちであり、単純な行動ルールが必要」というメッセージも、レバレッジ取引や高利回り商品を利用する投資家に突き刺さる内容となっている。
こうした事件や制度整備を踏まえると、11月は「価格下落とともに、どこまで集中リスクを許容できるか」「どこまで自分でリスクを理解したうえでプロダクトを選んでいるか」を再点検する月だったと整理できる。
▽ FAQ
Q. 2025年11月のビットコイン価格レンジは?
A. 11月はBTCが約$111,000から一時$92,000まで下落し、その後9万ドル台へ戻る高ボラレンジが続いた(11月1日〜29日)。
Q. 11月のビットコインETF資金フローはどう変化したか?
A. ETFは週次で最大約$2.0B流出し、AUMが2,640億ドルから1,910億ドルへ27%減少するなど、中旬を中心に換金売りが強まった。
Q. 日本の105銘柄・20%課税案はいつ施行される見込み?
A. 2025年内にWG取りまとめ→2026年通常国会提出の予定で、暗号資産105銘柄の金商法適用と20%分離課税は2026〜27年に段階的施行となる公算だ。
Q. ステーブルコイン市場ではどのようなシフトが起きた?
A. 10-11急落後に約60億ドル流出し、USDC・USDe残高が縮小する一方、USDT約1,847億ドルとRWAトークン残高360億ドルが拡大し、実需・利回り志向が強まった。
Q. 11月の主なセキュリティ・取引所リスクは?
A. MEXCの5億円超口座凍結疑惑、Port3の$PORT3 10億枚増発ハック、UpbitのSolana系540億ウォン流出、約$11M盗難の強盗事件などが相次いだ。
■ ニュース解説
11月の暗号資産市場は、ビットコインETFからの流出とマクロ不安、ステーブルコイン・RWAへの資金シフト、日本を中心とする制度整備が同時に進んだため、「極端な恐怖」と「制度化・インフラ強化」が同居する月となった。BTCは一時$92,000まで下落し、ETF AUMも大きく縮小したが、同時にソラナETF上場や日本の105銘柄再分類・20%課税案、Japan Cold Wallet構想、積立金義務化・レンディング規制など、長期の投資インフラを支える枠組みはむしろ前進している。
投資家の視点:11月の値動きは、ETF主導の上昇相場から「フローの逆回転」に入った局面であり、レバレッジと集中リスクの高さが露呈した形だと整理できる。個別銘柄や取引所の短期的な値動きに振り回されるのではなく、
①現物ETF・ETPの銘柄別フローとAUM
②ステーブルコイン構成(USDC/USDe vs USDT・RWA)の変化
③規制・税制のマイルストーン(WG取りまとめ・法案・ガイダンス)
④セキュリティ・OPSEC事例と自分の管理体制、という4点を定点観測したうえで、自身が取れるリスクの上限と時間分散の方針をあらかじめ定義しておくことが重要になる。特定銘柄やプロダクトに依存しすぎず、プロバイダ・カストディ・地域・通貨を含めた多層的な分散を意識することが、今後も続く高ボラ環境での損失限定とチャンス捕捉の両立につながるだろう。
※本稿は一般的な情報提供を目的としており、特定銘柄・金融商品の売買を推奨するものではなく、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。





