▽ 要約
パス:9–12月に1000万円のBTCを試験購入。
フォーシーズ:7/11にBTC投資開始、3名体制で運用。
提携:7/28に蓄電池で業務提携、Web3導入も前進。
海外:StrategyやBoyaa、Evertzの採用が追い風。
化粧品企業 ビットコイン保有が現実味を帯びている。2025年、パス(3840)とフォーシーズHD(3726)が相次ぎBTC方針を開示した。前者は9–12月に1000万円の試験購入、後者は新設の金融サービスで段階運用を掲げた。本稿は両社の狙いと時系列、業務提携の関係、海外先行事例まで立体的に解説する。
パス—試験購入の狙いと設計
9–12月に自己資金1000万円でBTCを段階取得し、30%下落でロスカットとする検証運用を通じて、決済実装や社内規程策定の可否を測るため、慎重に着手した。
同社は当初クリプトに懐疑的だったが、米SECが2024年1月に現物ETFを承認し制度面が進展したことを転機と評価し、デジタル・ゴールドとしての性質を検証対象に据えた。検証期間は2025年9–12月で、相場を常時監視し、急変時は外部アドバイザーと協議—30%下落でロスカット—と運用ルールを明確化している。
購入額・期間・ルール
資金繰りを踏まえた1000万円を上限に、外部助言も踏まえてタイミングを分散し、常時監視と取締役会報告を行うため、急変時は協議の上で売買判断を迅速化した。
実務では四半期ごとの時価評価と影響開示、検証の成果を踏まえた本格参入可否の判断を予定する。海外送金の摩擦低減など実需ユースケースを見据え、社内基準・規程の整備に反映する段取りだ。
決済ユースケースと内部規程
海外取引の一部でBTC決済を想定し運用習熟を図るため、試験結果をもとに暗号資産の取り扱い基準や会計・ガバナンス体制の整備に反映させる計画となった。
フォーシーズHD—BTC参入の全貌
7/11にWeb3.0を活用する新事業を立ち上げ、BTC保有で財務基盤強化を狙う一方、外部助言と小規模からの段階運用でリスクを抑える設計を示した。
同社は金融サービス事業の一環としてBTC投資を開始。開始時の具体額は未定だが、進捗に応じ開示予定とし、市場は材料視して株価が急反発した。美容・健康の既存事業にWeb3を応用し、製品トレーサビリティやパーソナライズ強化も構想に含める。
体制と運用方針
副社長の松野博彦氏、CFOの浦太介氏、経営企画室の3名で始動し、必要に応じて専任チームを拡充するため、投資判断は外部アドバイザーと連携して慎重に行う。
Web3×再エネの実装
再エネ領域の接続費用予測などでAI+Web3活用を進め、サプライチェーン透明化やパーソナライズへの適用も視野に入れるため、事業シナジーの検証を並行させる。
業務提携とBTC方針の関係
7/28の系統用蓄電池での提携はエネルギー事業が主眼のため、BTC投資と直接連動は確認できないが、先端技術志向の共有が意思決定に間接的影響を与えた可能性はある。
蓄電池サイトの選定から接続権取得、資金調達、建設・運用まで協力し、100MW・200MWh級の共同開発を推進。フォーシーズ側のWeb3予測システムの導入も掲げ、異業種連携の厚みが増した。
時系列でみる連関(7/11→7/28→8/26)
7/11にフォーシーズHDがBTC方針、7/28に蓄電池で両社が提携、8/26にパスが試験購入を決議したため、経営層の交流が相互の学習効果を生んだと推測し得る。
なぜ化粧品企業がBTCに向かうか
インフレ耐性と資産分散、国際決済の利便、ブランドの先進性訴求が重なり、制度整備と先行事例の累積を背景に企業財務の選択肢としてBTC採用が現実味を帯びた。
財務・決済・ブランドの三要素
BTCは希少性を持つ価値保存手段と捉えられ、越境送金の摩擦低減やトレーサビリティ施策とも親和性が高いため、財務・オペレーション・マーケの三面で採用動機が整う。Lushの早期決済導入はブランドの先進性訴求の好例だ。
海外先行事例の学び(Strategy/Boyaa/Evertz)
Strategy(旧MicroStrategy)は2025年8月時点で632,457BTCを保有し、市場評価と連動性の高さを示した。アジアではBoyaaが追加で290BTC取得し総保有を3,670BTCへ、ドイツではEvertzが100BTCを追加し長期トレジャリーを明示した。
業界への波及と今後の論点
中堅上場の先行に続き制度整備とエコシステムが進めば大手に波及するため、会計・税務・保管とボラティリティ管理の実務対応力が評価の新基準になる。
日本でもANAPのBTC現物出資による第三者割当増資や、EC系TORICOの暗号資産投資参入など隣接業界の動きが可視化。SECの現物ETF承認やFASBの公正価値評価ルールは、企業導入の心理的・制度的ハードルを下げた。
▽ FAQ
Q. パス社は何円分のBTCをいつ購入?
A. 2025年9〜12月に自己資金1000万円で試験購入し、30%下落でロスカットを実行、相場を常時監視し取締役会へ都度報告する。
Q. フォーシーズHDの運営体制は?
A. 副社長松野博彦、CFO浦太介と経営企画室の3名で開始し、外部アドバイザー連携で段階運用、購入額は未定で進捗に応じて開示予定。
Q. 両社の業務提携の要点は?
A. 2025年7月28日に系統用蓄電池で提携し、100MW・200MWh級の共同開発や接続権取得・資金調達・運用まで協力、予測システムも導入。
Q. 海外の代表的な企業保有例は?
A. Strategy(旧MicroStrategy)は632,457BTC(2025年8月)保有、Boyaaは3,670BTC、独Evertzは100BTC追加。
Q. 会計処理の主要な変更点は?
A. 米FASBのASU 2023‑08で2025年から公正価値評価へ移行し、評価差額を損益計上。日本基準との差異と税務影響の確認が必要。
■ ニュース解説
両社が2025年7–8月にBTC方針と提携を相次いで開示したので、制度整備と海外先行の追い風が重なった背景があり、業界の財務・マーケ双方で波及余地が広がる。
投資家の視点:パスは「少額・明確なルール」による実証で下振れリスクを限定しつつオプション価値を取りに行く設計。フォーシーズHDは「段階運用+外部助言」で誤配分を抑え、Web3連携による非財務面の便益も狙う。共通して、開示の頻度とカストディ・内部統制の整備が評価軸。
※本稿は投資助言ではありません。