▽ 要約
ステーブルコイン参入 JGB裏付けと1:1償還を設計
FINX JCryptoと提携、2025-09始動し5,000万円投資
2027年末までに第一種・第二種資金移動業の取得を目標
BTC戦略は取得・マイニング・オプションで多層化
国内規制が整い実需接続の環境が生まれるなか、コンヴァノは「コンヴァノ 円建てステーブルコイン」構想を公表し、JGB等を準備金にした1:1償還と交換業者連携で段階導入を示した。美容サービス発のWeb3参入として異例だが、同社のBTC保有・マイニング・インカム事業と相互補完する設計が特徴で、決済・与信・流通の実装を通じた収益多角化が視野に入る。
発表の骨子と市場背景(2025年8月27日)
円建てステーブルコイン参入を決定し、JGB担保の1:1償還とFINX連携を掲げたため、法制度整備後の実需接続を狙う動きが具体化した。
同日開示では、法定通貨連動型ステーブルコインの企画・開発開始と、暗号資産交換業者FINX JCryptoとの業務提携基本契約(9月1日付予定)が決議された。準備金は日本国債(JGB)や円預金を想定し、償還請求に対する1:1対応、分別管理、台帳突合と定期レポーティングで透明性を高める。初期投資は2026年3月期に5,000万円、9月からPoC・限定パイロットを進める計画だ。発表直後、株価は後場で急伸し材料視された。
設計要件(準備金・KYC・ネットワーク)
JGB等の準備金で1:1償還と分別管理を徹底し、KYC/AMLとトラベルルールを統合したうえで、既存資金移動業者と接続する。
発行・償還・準備金台帳・オンチェーン残高の突合を中核機能とし、可監査性と運用統制を重視する。送金ネットワークは第一種・第二種資金移動業者との複線接続を想定し、障害時の経路切替や規制変更への迅速な追随を設計に織り込む。秘密鍵管理やAPI公開のSLAも段階的に定義し、商用化前に閉域で検証する。
投資計画とタイムライン
2025年9月始動・2026年3月期に5,000万円投資し、2027年12月末までに第一種・第二種資金移動業の取得を目指す。
9月に共同ガバナンスを立ち上げ、60日以内にKPIとセキュリティ基準を確定する。2025年末〜26年初にPoC(台帳整合・KYC/AMLワークフロー・監査リハーサル)を実施し、要件充足次第で限定パイロットへ移行。商用提供は許認可・監査完了とユーザー保護水準を満たした段階から段階的に判断する。
法規制の整理
2023年改正資金決済法で円連動型は電子決済手段となり、発行は銀行等や資金移動業者に限定されたため、発行・仲介の要件が明確になった。
国内では2025年8月、JPYCが資金移動業者登録を完了し、国内初の円建てステーブルコイン発行可能な体制が整った。制度上は発行者の準備金保全と1:1償還、仲介者の行為規制(交換業)、AML/CFT・トラベルルール等の運用が必須となる。
他社動向との比較
JPYCの資金移動業登録やSBI×三井住友銀行の流通検討、MUFGのProgmat Coinなどが進む一方、コンヴァノはサービス企業発の参入で差別化する。
SBI VCトレードとSMBCは国内流通・ユースケース検討で合意し、MUFG信託×Progmatは「Progmat Coin」基盤で国内SCの発行・相互運用を進める。コンヴァノはJGB担保・分別管理・監査容易性を明記し、Web3の実需レイヤー構築を前面に出した。
ビットコイン保有・マイニング戦略
インフレ・円安耐性を狙いBTCを財務リザーブとし、マイニングとオプション収益を組み合わせるため、資本効率と流動性の両立を図る。
同社は「21,000BTC財務補完計画」(2027年3月末までに21,000BTC保有)を掲げ、トレジャリーとしての長期保有を明示。オプション売りによる「ビットコイン・インカム事業」(当面は現金担保)を併用し、マイニングでの内生的なBTC創出も組み合わせて、取得・保有・収益化の三層を構築する。
資金調達と購入履歴(2025年7~8月)
7月の社債・自己資金で計165BTC取得し、8月12・22日の決議・実行で計200BTCを追加、27日に20億円の追加購入を再決議した。
7/22・24・31の3回で合計約165BTCを購入。8/12・8/22にかけて決議・実行分として200BTC(約35.08億円、平均1,754万円/BTC)を取得し、8/27には新たに20億円の追加購入を決議。資金は第1~3回社債・第4回ワラントの払込金などを組み合わせ、希薄化抑制と資金確保の両立を図る。
マイニング・インカム事業
テキサス等の再エネ電源とDRで月10BTCを目標とし、オプション売りで年10%のプレミアム収入を狙うことで、保有BTCの内生化を進める。
「グリーン・ビットコインマイニング」は2025年9月発効、10月稼働予定。再エネ調達・デマンドレスポンス制御・高効率機器でコストと環境負荷の最適化を図る。インカム事業は2026年3月期に最大300億円を充当し、安定的なオプションプレミアムの獲得を目標とする。
SBI×Chainlinkの示唆
RWA・ファンド・規制型ステーブルコインの相互運用が日本で前進したため、PoRやCCIPなどの標準が国内の制度設計に波及する可能性がある。
SBIグループとChainlinkは2025年8月下旬に戦略提携を発表し、日本を初期フォーカスにRWA・ファンドNAVのオンチェーン化、規制型ステーブルコインの準備金証明(Proof of Reserve)やクロスボーダーPvP決済(CCIP活用)を進める。国内銀行・証券・事業会社の実装基盤が整うにつれ、発行・流通・監査のベストプラクティスが共有されやすくなる。
▽ FAQ
Q. いつ始動し、いつまでに発行体を目指す?
A. 2025-09-01始動、2026年3月期に5,000万円投資、2027-12末に第一種・第二種資金移動業の取得を目標とする。
Q. 準備金と償還はどう運用する?
A. 日本国債(JGB)や円預金で1:1償還、分別管理と定期報告で透明性を担保し、監査容易性を確保する。
Q. 連携先とその資格は?
A. FINX JCrypto(関東財務局長 第00012号)と提携、交換業者としての実装・運用知見を活用する。
Q. BTC保有の足元と追加計画は?
A. 2025-08-22時点で累計364.925BTC購入、8-27に追加20億円の取得を決議し、9月末までの完了を目指す。
Q. 業界動向との関係は?
A. 8-18にJPYCが登録、8-22にSBI×SMBCが流通検討、8-25にSBI×Chainlink提携で、相互運用と透明性が進展中。
■ ニュース解説
円建てステーブルコイン参入とBTC調達・マイニング・オプション収益の多層戦略が同時進行のため、実需決済と財務補完を結ぶ「円×Web3」の接続が進む一方で許認可・監査・運用統制が成否を左右する。
JGB等を裏付けとする1:1償還・分別管理、FINX JCryptoとの提携、2025年9月始動と5,000万円投資、2027年末までの資金移動業取得目標、7〜8月のBTC取得加速が並行し、2023年改正資金決済法やJPYCの登録、SBI×SMBC・SBI×Chainlinkの動向を踏まえて、円決済のオンチェーン接続や与信・送金の効率化、企業のBTCトレジャリー普及が進展する一方で、運用要件と市場ボラティリティの管理が鍵となる。
投資家の視点:短期は開示どおりのKPI(PoC到達・KYC/AML体制・台帳整合)と資金調達・BTC取得進捗、規制当局や監査法人との整合性、為替・BTC相場感応度を点検したい。中期はJGB運用の金利・満期分布、PoR等の透明性指標、安定的なマイニング稼働とオプション収益のボラ管理、SBI×Chainlinkなど外部エコシステムとの相互運用をモニターする。
※本稿は投資助言ではありません。
(参考:コンヴァノ,金融庁,SBIホールディングス)