【要約】
2024年において、米国の上場企業やテック企業を含む主要60社の内部取引(インサイダーによる株式売却)は約369億ドルに達しました。その中にはCoinbaseのCEOであるBrian ArmstrongやMicroStrategy創業者Michael Saylorなど、暗号資産業界を代表する経営陣も含まれています。さらに、CoinbaseがBaseネットワーク上でのCOIN株トークン化を検討しているほか、BUXヨーロッパ子会社を買収し、欧州経由でCFD(差額決済取引)を提供する下地を整えている可能性が浮上しています。本記事では、こうした一連の動向を6つのポイントに分けて解説し、事実に基づく最新情報をお届けします。
1. 2024年の内部取引売却ランキングと暗号資産業界
2024年の内部取引売却総額は、S&P 500上位60社だけでも約369億ドルに上りました。これにはAppleやNvidiaといったテック大手に加え、WalmartやAmazonの経営陣も含まれています。特にAmazon元CEOのJeff Bezosが134億ドルと全体の約3分の1を占めるなか、暗号資産業界からはCoinbaseとMicroStrategyが大きく名前を連ねました。
ランキングでは、Coinbaseが企業別で第7位に位置し、MicroStrategyも上位に入っています。暗号資産関連企業が主要上場企業と肩を並べる形で売却額ランキングに登場している点は、市場における暗号資産セクターの存在感を示す一例と言えます。
2. Brian Armstrongによる6.36億ドルのCOIN株売却
売却額8位にランクインしたのが、CoinbaseのCEO Brian Armstrong氏です。同氏は2024年を通じて、合計6.36億ドル相当のCOIN株を売却したと報じられています。CoinbaseはNASDAQに上場している大手暗号資産取引所であり、Armstrong氏は創業者として長らく経営を牽引してきました。
売却理由の公式発表はなく、個人的な資産分散や事業展開に必要な資金確保など、さまざまな可能性が考えられます。とはいえ、このような大規模な売却は投資家の注目を集め、暗号資産市場全体への影響も無視できません。
3. Michael Saylorの4.108億ドル相当のMSTR売却
MicroStrategyの共同創業者兼エグゼクティブ会長であるMichael Saylor氏は、暗号資産界の中でもビットコイン強気派として知られています。しかし、2024年には4.108億ドル分のMicroStrategy株式(MSTR)を売却し、ランキング第13位に入っています。
MicroStrategyはビットコインを大量保有することで有名な企業ですが、そのトップが大きく株式を売却したことに対し、市場からは「ビットコインへの投資方針に変化はないのか」という声が上がっています。現時点でSaylor氏がビットコインの保有姿勢を変えるとの発言はなく、売却の背景については詳細が明らかになっていません。
4. Base上でのCOIN株トークン化計画
Coinbase開発チームのJesse Pollak氏がSNS上で明かしたところによると、Baseネットワーク上でCOIN株をトークン化する構想が検討されています。現時点では「研究段階」であり、具体的な導入時期や方法については確定していないとのことです。
非米国ユーザーは、すでにBackedなどのRWA(Real World Asset)トークン化プラットフォームを通じて、COIN株の代替手段を得ることが可能です。米国内ユーザー向けには、規制クリアを前提とした対応が必要となるため、実現には時間を要するとみられます。しかし、もし本格的に展開されれば、今後「世界中のあらゆる資産をオンチェーン化する」というCoinbaseのビジョンにおける大きなステップとなるでしょう。
5. BUXヨーロッパ子会社の買収とCFD提供の可能性
さらに注目されるのは、CoinbaseがBUX(旧称Stryk)のセイシェル子会社ではなく、キプロス(塞浦路斯)子会社を買収した点です。これによってCoinbaseは、キプロス投資会社(CIF)のライセンスを取得したと見られています。このCIFライセンスは、差額決済取引(CFD)の提供に必要とされるもので、欧州経済領域(EEA)の国々でも金融サービスを展開可能になる可能性があります。
実際にCFDを導入するかは未公表ですが、金融当局の監督下でデリバティブ商品を提供する展開がある場合、欧州のプロ投資家や機関投資家に向けた新たな成長チャンスが期待されます。なお、この買収は2024年10月に完了した模様で、企業登録情報でも社名がCoinbase Financial Services Europeに変更されています。
6. 暗号資産産業における展望と今後の焦点
Coinbaseがグローバルで規制対応を進める一方、暗号資産業界全体でも法整備や新興技術への注目度が高まっています。特に今後は、以下のような点が注目されるでしょう。
- トークン化された株式:COINの事例を皮切りに、さらなる上場企業株式のオンチェーン化が進むか
- CFDなどデリバティブ製品:欧州を中心に、機関投資家向けの暗号資産デリバティブ市場が拡大する可能性
- 規制とコンプライアンス:MiCAや各国のライセンス要件によって、事業者の展開が左右される
Coinbase CEOや他の経営陣による大規模な株式売却は、企業の成長戦略や暗号資産市場の進化と無関係ではないと考えられます。CFDの提供がどのように実現し、BaseネットワークでのCOIN株トークン化がどの程度まで進むのか。暗号資産分野が伝統的な金融商品と手を組む事例として、今後の推移が要注目となるでしょう。