ベッセント長官、予算中立でBTC取得を模索

▽ 要約

方針:市場からの新規購入はせず、押収分で積み増す
市場:高値約12.4万ドル後に12万ドル割れへ反落
投稿:財務省は予算中立的取得経路の検討を継続
政策:売却停止と「デジタル版フォートノックス」化

市場は「政府の買い支え」を織り込んでいたが、ベッセント長官は新規買付けを否定し、押収資産で積み増すと再表明したため見方は修正された。一方で予算中立的ビットコイン取得の経路探索は継続され、売却停止も改めて確認された。短期のボラティリティは増すが、政策の中長期方向性は明確化した。

米政府の基本方針—「売らず・買わず・押収で積み増す」

新規購入は行わず押収資産で準備金を積み上げ、同時に売却を停止する方針が再確認されたため、市場期待は後退しつつも長期の売り圧力は緩和した。
FOX Business出演でベッセント長官は「買わない、押収分で積み増す、売却を止める」と明言し、準備金の評価額は「150〜200億ドル程度」と説明した。インタビューは広く二次報道され、市場の観測を一気に方向付けた。

価格反応—過去最高値からの急反落

史上最高値約12.4万ドルを付けた直後の発言を受け、ビットコインは心理的節目の12万ドルを割り込み一時11万8千ドル台まで下落したため、短期の期待買いは巻き戻った。
相場は材料出尽くし感も手伝い、デリバティブ市場の清算が下落を加速させた。一方で「政府が売らない」明確化は、需給の下支えとして長期視点ではポジティブと解釈されている。

Xでの追記—「予算中立的取得経路」を明示

テレビ発言後、長官はXで「押収済みBTCが基礎」であることを強調しつつ、予算中立的に取得を拡大する経路の探索を続けると投稿したため、完全な“買付け否定”ではないとの含みも示された。
投稿はホワイトハウスの初期方針(納税者負担ゼロでの積み増しを容認)と軌を一にしており、当面は押収資産を柱にしつつ制度設計を詰める段階にある。

戦略的ビットコイン準備金の制度枠組み

準備金は2025年3月6日の大統領令で創設され、押収したビットコインの売却停止と長期保有が基本理念とされたため、政府の“デジタル版フォートノックス”として位置付けられた。
大統領令と併せて、AI・暗号資産担当としてデヴィッド・サックス氏が指名され、監査と取得方針の検討が進められてきた。サックス氏は「納税者コストなしでのみ積み増す」と繰り返し説明している。

予算中立的取得の選択肢

増税や赤字拡大を伴わないとの条件から、押収済みの他銘柄を売却してBTCへ組替える手法に加え、関税収入の充当や金(ゴールド)再評価益の活用などが案として浮上している。検討はなお初期段階だが、政権内で実務評価が続いている。
一方、法案ベースでは100万BTC規模の購入構想も議論されたが、現状は押収資産を基礎にした“予算中立”案が主流であり、直接的な市場買付けは政策上の優先度が低い。

ガバナンス—売却停止の含意と監査

売却停止は短期の供給圧力を抑える反面、非常時の流動化ルールや監査・受託管理の統一が不可欠となるため、透明性確保と議会監督の枠組み設計が今後の焦点となる。大統領令は「売らない」を原則化し、長期保有の姿勢を明確化した。

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保有規模の現状—約19.8万BTC、評価は市況次第

米政府保有は推定約19万8千BTCで、7月時点で約240億ドルと推計された一方、長官は8月14日時点の評価を「150〜200億ドル」と述べたため、価格前提の差に留意が必要だ。
“デジタル版フォートノックス”のコンセプトは、希少資産の戦略保有という政策意図を示すもので、民間・各国の累積需要と絡み合いながら中長期のマクロ需給を規定していく。

▽ FAQ

Q. 米政府は今後ビットコインを購入しますか?
A. ベッセント長官は2025年8月14日、追加購入はせず押収分で積み増し、売却停止と述べました(評価額150〜200億ドル)。

Q. 戦略的ビットコイン準備金はいつ創設されましたか?
A. 2025年3月6日、大統領令で創設。押収資産を基礎に「売らない」長期保有方針が示されました。

Q. 現在の保有量は?
A. 推定19万8千BTC。Arkhamが7月24日に確認し、当時の時価は約234〜240億ドルとされました。

Q. 予算中立的な取得とは?
A. 納税者負担や赤字拡大なしでの取得で、押収暗号資産の交換、関税収入や金再評価益の活用が候補です。

Q. 価格にはどう影響しましたか?
A. 発言後にBTCは最高値約12.4万ドルから12万ドル割れ(約11.8万ドル)まで下落しました。

■ ニュース解説

ベッセント長官が新規購入見送りと売却停止を示し、創設済みの準備金は押収資産で拡大する一方で予算中立の追加取得も検討されるため、短期は期待後退で反落したが長期需給は引き締まる。
投資家の視点:短期ボラ拡大局面ではレバレッジの管理が肝要。国家保有の不確実性(非常時の売却ルール、監査・保管体制)と政策進捗(予算中立スキームの具体化)をモニターし、ドル金利・インフレと相関の変化に留意した分散配分を検討したい。

※本稿は投資助言ではありません。

(参考:ホワイトハウス,米財務省,FOX Business