米政府の大量売却リスクでビットコインは再び暴落するのか?トランプ新政権の暗号資産政策に注目
- 2025/1/9
- BTC
【要約】
ビットコイン価格(BTC)は、2025年1月上旬にかけて再び下落リスクが意識されています。市場では10万ドルを再度超えた直後に急落したため、9万ドル割れを警戒する声が上がっています。一方で、米国政府が「シルクロード」関連で押収した約65億ドル相当のBTCを売却できるようになったとの報道が広がり、投資家心理にも影響を及ぼしています。本記事では、BTCの暴落懸念と米政府の大量売却リスクをめぐる事実と市場見解を整理し、短期的なビットコイン価格の行方を探ります。
ビットコイン価格は再び暴落するのか?:市場の背景
近年、ビットコイン価格は激しい変動を繰り返していますが、2025年1月上旬には10万ドル付近で推移した直後に日足チャートで「陰線包み(ベアリッシュエンゴルフィング)」と呼ばれる強い下落シグナルが確認されました。これにより、価格が再度9万ドル台まで急落するのではないかという警戒感が高まっています。実際、1月8日の日中変動幅は過去19週間で2番目に大きい下げ幅を記録しました。
一部のアナリストは、米国の好調な雇用統計を受け、金融市場全体がややリスク回避に傾いたことや、株式相場の不透明感がビットコインなど暗号資産(仮想通貨)市場にも波及したと指摘しています。ビットコインは10万2,760ドル前後から一時9万2,500ドル付近へと急落し、投資家心理にブレーキをかけました。
マクロ指標と安定通貨(ステーブルコイン)の供給動向
米国労働省が発表した11月の雇用統計では、雇用者数が予想を上回る伸びを示し、米国経済が回復傾向にあることがうかがえます。通常、景気が好調になると株式市場や暗号資産市場は買いが集まりやすいというイメージがありますが、最近の局面では利上げの継続観測やドル高傾向が重なり、ビットコイン価格が急落する局面も見られました。
しかしながら、暗号資産アナリストの一部は、ステーブルコイン供給がいわゆる「価格発見」ステージに入ったと指摘し、長期的には市場に流動性が供給されるとみています。ステーブルコインが増えることは、将来的に暗号資産全体へ新規資金が流入する可能性を示唆するため、依然として強気継続の見方も存在しています。
米国政府による大量ビットコイン売却リスク
1月9日、米国司法省(DOJ)が「シルクロード」と呼ばれる暗号資産闇市から押収したビットコイン約6万9,370BTC(評価額約65億ドル)の売却権限を得た、というニュースが報じられました。これは暗号資産市場にとってかなり大きなインパクトを与えうる話題です。報道直後、ビットコイン価格は9万5,000ドル台から一時9万4,000ドルを割る場面がありましたが、その後やや回復して推移しています。
ただし、この裁判所の許可が出ても、直ちに米国政府が市場で売却するわけではないと多くの専門家が分析しています。米国連邦政府の資産売却には複数の行政手続きが必要で、上訴の可能性が残されている場合はさらに時間がかかるためです。過去にも米政府が保有するBTCが実際に売却されるまでには数ヶ月以上かかった事例があります。
トランプ新政権の方針と市場の思惑
時期的に注目されるのは、1月下旬に就任が予定されるトランプ新政権との関係です。トランプ氏は以前、ビットコイン大会に登壇した際、「政府が保有するビットコインは売却しない」と宣言し、さらにビットコインを米国の戦略的資産として認める意向を示唆していました。しかしながら、今回の司法省の売却許可という動きはその発言と矛盾するかたちになり、いまだ確定していないトランプ政権の暗号資産政策への不透明感を増大させています。
同時に、「シルクロード」創設者ロス・ウルブリヒト氏の刑期を軽減すると公約していたこともあり、トランプ政権が実際にどのような手続きを踏んでいくのか、暗号資産コミュニティは注目しています。現時点では、この売却が直ちに行われる可能性は低いとみられますが、市場の投資家心理に水を差す材料であることに変わりはありません。
実際の売却が与える価格への影響と投資家の見解
米国政府は過去にも押収したBTCを売却してきましたが、多くの場合、場外取引(OTC)を通じて実施されます。そのため、市場に直接の売り板が登場しないこともありますが、「政府が大量のビットコインを現金化する」というニュース自体は投資家の不安をあおりやすく、短期的な価格下落圧力が懸念されます。
一方で、大手取引所やトレーダーは「今回の65億ドル相当のビットコインは、市場に新たな買い手が控えているため、仮に売りが出たとしても時間をかけて吸収される」との見解を示す向きがあります。大手アナリストは「アメリカ政府が約1週間分の市場取引量に相当するBTCを売却しても、市場は十分に対応できる」との楽観的な見方を示しています。
実際に、ビットコインは長期的には需要拡大が続いているとの指摘もあり、価格が大きく下落した場面は「押し目買い(いわゆる“抄底”)」のチャンスと考える投資家も少なくありません。
今後の見通し:9万ドル割れへの警戒と流動性の行方
歴史的に見ても、ビットコインは5%以上の急落後、すぐに反発する可能性は高くないことが統計的に示唆されています。あるトレーダーは「直近の値動きは9万2,000ドルから9万0,000ドルのレンジで底固めが進むかもしれない」と指摘し、短期的な下落に備えて買いのタイミングを探る投資家がいることも事実です。
米国政府による押収BTC売却に関する手続きが進めば、一時的にさらなる下落要因となる可能性がありますが、ステーブルコイン供給増の観点や取引所の流動性を考慮すると、十分に吸収可能との見方も根強くあります。トランプ新政権が実際にどのような暗号資産政策を打ち出すのかによっては、市場に新たな追い風が吹く可能性も残されています。
最終的には、投資家心理やマクロ経済の動向を注視しながら、価格変動リスクを管理することが重要となるでしょう。ビットコイン価格が再び暴落するかどうかは、今後数週間から数ヶ月の米国政府の対応と暗号資産市場全体の資金流入状況が鍵を握るといえます。