【要約】
・BNB Chainチームが「チェーン上AI代理（AI Agent）」の作り方を解説する動画を準備しているとの情報がCZ（Binance共同創業者）から発信
・Web2ではすでにAI Agentが営業・マーケティング・財務など幅広い分野で実用化
・Web3におけるAI Agentはブロックチェーンの特性を活かし、特にDeFiや分散化領域で新たな可能性を開拓
・Web2とWeb3でAI Agentがどのように競合し、あるいは融合していくかが今後の焦点
・DeFi領域では「DeFAI」と呼ばれるAI Agentの活躍が期待され、今後の発展が注目されている

BNB Chainチームの新たな試み：AI Agent構築チュートリアル

2025年2月16日、Binanceの共同創業者であるCZがSNSプラットフォーム「X（旧Twitter）」で示唆した情報によれば、BNB Chainの開発チームは、ブロックチェーン上でAI Agent（チェーン上AI代理）を構築するための動画チュートリアルを近く公開予定とのことです。
この発表は、チェーン上AI代理（以下「AI Agent」）を学習したい開発者にとって大きな関心を集めています。AI Agentの概念自体は決して新しくはありませんが、ブロックチェーンと組み合わせることで、中央集権的な制約を超えた新たな応用領域が期待されています。

Web2のAI Agent活用：既に始まっている成果

さまざまな業種で導入が加速

従来のWeb2企業は、営業・マーケティング・財務・カスタマーサポートなど、あらゆるビジネス領域でAI Agentを導入し始めています。これらのAI Agentは、24時間体制で動き、事務的な処理やデータ入力、見積りなどを自動化してくれます。多くの企業がコスト削減と業務効率化を実現しており、一部のAI Agentサービスは年間5万〜20万ドルもの利用料金を徴収していると報じられています。

Web2 AI Agentの具体例

• Apten_AI: SMS連携のAI Agentを使い、販売促進から顧客フォローアップまでを自動化
• Bild_AI: 建築図面を読み込み、必要材料や仕様を解析し、コスト見積りを自動生成
• Casixty: RedditなどのSNS上で話題分析を行い、自動応答を通じてブランド認知度を向上

これらWeb2のユースケースは、すでに高い価値を証明しており、利用企業数も増加傾向にあります。

Web3におけるAI Agent：DeFiとの融合が鍵

Web3 AI Agentの特徴

Web3では、単なる作業効率の向上だけでなく、「トークンインセンティブ」や「分散化」というブロックチェーン特有のメリットを活かせる点が大きな強みです。具体的には、**DeFi（分散型金融）**の市場が既に1000億ドルを超える規模に成長しており、AI Agentを活用する「DeFAI」という新しい潮流が形成されつつあります。

DeFi特化型AI Agent例

• sendaifun: Solana上で動作し、トークン管理から高度なDeFiオペレーションまで多彩な機能を提供
• ai16zdao: 100種以上のプラグインと連携し、SNSの自動投稿やDeFi取引の自動実行を可能に
• Cod3xOrg: ノーコード環境で自動取引AI Agentを作成
• gizatechxyz: 投資家向けに設計された自律型DeFiアシスタント

これらのWeb3 AI Agentは、オンチェーン取引データやウォレット情報など、ブロックチェーン上に蓄積された「構造化データ」を活用しているのが特徴です。従来のWeb2 AI Agentにはない透明性と検証可能性を備えているため、より精緻なリスク分析や自動化が可能になります。

Web2とWeb3の垂直AI Agentが融合する未来

Web2垂直Agentの強みとWeb3の先進例

Web2のAI AgentはSaaSモデルが中心で、使いやすさと導入スピードの速さが特徴です。たとえば、スポーツ分析や個人アシスタントなど、目的を明確化した垂直領域（バーティカル）向けAI Agentが次々に登場しています。
一方、Web3では独自の代替手段として、**トークン門（代替手段としての有料会員制）**を使う事例が増えています。これは、一定数のトークンを保有しているユーザーに対して高度な機能を解放し、基礎機能は無料で提供する方式です。また、API使用料やトークンの取引手数料によって収益を得るビジネスモデルが確立されつつあります。

チャレンジと今後の展望

短期的には、Web3のスタートアップが製品の市場適合性（PMF）を得るまでは課題も多く、最低でも年間100万〜200万ドル以上の安定した収益がなければ、Web2の企業と同等に競争するのは難しいとみられています。しかし、トークンインセンティブによるコミュニティドリブンの成長や、グローバルでのアクセスのしやすさなど、Web3ならではの強みも存在します。

DeFAIやセキュリティ分野でのAI Agent活用

DeFAIでの活躍

DeFiのフロントエンドとなるAI Agentが、「ステーキング」「レンディング」「借入」といった複雑な操作を自動化できるという点は、個人投資家から機関投資家まで幅広く注目されています。DeFi利用者の増加とともに、このようなエコシステムはさらに拡大していくでしょう。

セキュリティチェックや研究におけるAI活用

• soleng_agent: GitHubのリポジトリ解析を通じた開発サポート
• CertaiK_Agent: AIを使ったスマートコントラクト監査サービス。今後、契約のリスク評価や脆弱性検知などが一層重要視される見込み

AI Agentによるセキュリティ強化は、利用者保護のみならず、Web3全体の信頼性向上にも寄与すると期待されます。

競争か融合か：Web2とWeb3の未来

現時点では、Web2のAI Agentが多くの資金力とユーザーベースを有し、市場をリードしています。一方、Web3のAI Agentは、代替不可能なトークンインセンティブ、分散化プラットフォーム、公開されているチェーン上データといった利点を持ち、差別化を図っています。
今後はWeb2とWeb3の垂直AI Agentが互いに刺激し合い、ユーザビリティやセキュリティ面でさらに高度化していく可能性があります。特に、BNB Chainのように積極的にAI導入をサポートするチェーンが増えることで、これまでにないユースケースが生まれるかもしれません。

以上のように、Web2で培われたAI Agentの実績と、Web3がもつ代替不可能な強みは、いずれ融合の局面を迎える可能性が高いと考えられています。BNB Chainチームの新たな動画チュートリアル公開により、チェーン上AI代理の技術標準化が進むことに期待が寄せられています。いずれはWeb2とWeb3双方の特徴を最大限活かした、次世代のAI Agentが主流となる時代が到来するかもしれません。