テザー否定と資金流出:ビットコイン需給逼迫

▽ 要約

テザー否定:BTC売却で金購入は事実無根
マクロ:ETH現物ETFは5日で9.52億ドル流出
ネットワーク:難易度136Tで安全性強化
需給:企業・機関の買いが新規供給の約4倍

市場のノイズが増す中、テザーのBTC売却説否定、ETH現物ETFの資金フロー反転、難易度ATH、長期保有の過去最高が重なりビットコイン需給逼迫が鮮明になったため、短期の変動に対し中長期のファンダを整理する価値が高い。

テザー社の「BTC売却で金購入」説の検証

テザーは「BTCを売っていない」と明確に否定し、Q2報告の保有減少はXXI移管の見かけで、純保有は維持・増加したため、売却説は成立しない。
テザーCEOパオロ・アルドイーノ氏は9月7日にXで売却を否定、利益をBTC・金・土地へ配分する方針を再確認した。Q2のBDOアテステーションではUSDT準備の健全性と利益計上が示され、BTCは準備資産の一部として継続保有されている。さらに、2025年に発表された「Twenty One Capital(XXI)」関連に約2万BTCを移管したとする説明があり、帳簿上の見かけ減少を補正すれば純保有は10万BTC超の水準と整合する。

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米財務長官ベッセント発言の論点

「バイデン期の雇用の大半は不法移民に渡った」とのTV発言が波紋を呼んだが、雇用統計の定義と推計手法には幅があり、解釈対立があるため、事実認定は慎重を要する。
ベッセント財務長官はNBC「Meet the Press」で強い表現を用いたが、番組内でも異論が提示された。政府統計は市民権や在留資格を直接把握しないため、推計は前提に依存する。加えて長官は同番組で関税訴訟の返還リスクにも言及しており、政策全体の波及を意識した発言と読める。政治的文脈が強いテーマのため、一次データと複数の一次・有力二次ソースで裏取りする姿勢が重要だ。

ETFフローの反転(ETH流出・BTC流入)

9月上旬、ETH現物ETFが5日連続で計9.52億ドル流出となり、一方でBTC現物ETFは週次で約2.46億ドル流入に転じたため、相対的にビットコイン選好が強まった。
8月はETH側に月間+38.7億ドルの大規模流入が観測されたが、9月は景気減速懸念の高まりと価格調整で資金が安全資産視されたBTCへ回帰。フローの転地は短期センチメントの指標であり、持続性はマクロ要因(米雇用・FOMC)に左右される。

巧妙化する“通話型”フィッシングと実務対策

会議リンクに偽装したマルウェアで認証情報を奪う手口が広がり、数百万ドル規模の被害も生じたため、リンク検証と権限最小化が必須になった。
偽Zoom/Teamsリンクを踏ませ、Macのキーチェーンやブラウザ保存情報、ウォレット情報を収集する手口が報告された。296ETH規模の被害解析では、盗難資金が複数取引所・スワップに分散されていた。教訓は①相手・案件の多面的リサーチ、②会議URLは自発発行・公式経路のみ、③ホットは最小・コールド分散の徹底、である。

Paxos×Hyperliquid「USDH」提案の射程

準備金利息の95%をHYPE買い戻しに充当する設計のため、発行残高の拡大がトークン需要とエコシステム強化に連動する。
Paxosは米連邦法「GENIUS法」およびEUのMiCAに準拠した枠組みを掲げ、規制適合性とスケールの両立を狙う。買い戻しHYPEはバリデータや開発者、コミュニティへ再分配される提案で、機関マネーの受け皿としての信頼性向上が期待される。充当率の引上げを求める声もあるが、まずは実装と市場適合性が焦点だ。

長期保有(非流動)供給の過去最高更新

8月末に非流動供給は1,430万BTCへ達し、流通の約72%が長期保有化したため、売り出し可能な浮動供給は一段と絞られた。
Glassnode集計では直近30日で+2万BTCが非流動化。8月中旬の史上高値(約12.4万ドル)後に15%調整が入っても長期保有は増加を続け、ストア・オブ・バリューとしての定着を裏付ける。供給側の硬直は需給逼迫を通じて中長期の価格弾力性を高める。

エルサルバドル――法定通貨化4周年の現在地

2025年9月7日で導入から4年が経ち、コールド保管の強化と運用透明性の要請が並行するため、積立方針は継続しつつもガバナンス改善が課題だ。
同国は2024年に相当量をオフライン保管へ移行し、公開アドレスの「貯金箱」管理を強化。一方、IMFとのEFF合意ではリスク管理・透明性向上が要請され、年内も報告フレームの整備が続く。DCA購入の公表と実購買の整合は、今後も検証対象となる。関連の「ボルケーノ債」、地熱採掘も進展中。

採掘難易度ATHが示す安全性と産業構造

難易度は136T超で過去最高に達したため、ネットワーク安全性は強化される一方、採算は大手優位に傾きやすい。
難易度の上昇はハッシュレート増加の反映であり、51%攻撃コストの上昇=安全性の実質強化を意味する。他方で電力・設備の効率差が収益を左右し、小規模マイナーの淘汰圧力が高まる。歴史的には難易度ATHは繰り返し更新されてきたが、集中度合いと分散性のバランス監視は欠かせない。

企業・機関の買い需要が新規供給の約4倍

半減期後の新規発行約450BTC/日に対し、企業が約1,755BTC/日を吸収し、ETF等も約1,430BTC/日を純購入したため、需給ギャップは顕著だ。
Riverのフロー分析では企業(財務BTC保有企業+一般企業)とETFの合計で日次約3,600BTCが市場から吸収される。取引所残高の低下と併せ、売られにくいコインの積上がりが続いている。こうした構図は価格押し上げ圧力として中長期で作用しうる。

▽ FAQ

Q. テザーはBTCを売却して金を買ったのですか?
A. いいえ。9/7のX投稿で否定し、XXI移管で見かけ減。保有は10万BTC超と第三者推計も整合します(2025年)。

Q. ETH現物ETFの直近フローは?
A. 9月上旬に5日連続で計9.52億ドル流出、同週にBTC現物ETFは約2.46億ドル純流入と対照的でした。

Q. 非流動供給の現状は?
A. 2025年8月末で1,430万BTC(流通の約72%)。直近30日で+2万BTC増と、調整局面でも積み上がりました。

Q. USDHの仕組みは?
A. 準備金利息の95%でHYPEを買い戻し、開発者・バリデータ等へ還元。GENIUS法とMiCA準拠を掲げます。

Q. 難易度ATHは何を意味?
A. 136T超で安全性向上を示す一方、電力・設備競争が激化し小規模マイナーの採算は厳しくなります。

■ ニュース解説

テザーの売却否定、ETH→BTCの資金シフト、非流動供給と難易度の過去最高が同時進行したため、短期調整でも供給側は引き締まり、中立的に見て基盤は強化された。
投資家の視点:①短期はマクロ(雇用・FOMC・政策発言)とETFフローに敏感、②中期は非流動化と企業・ETF吸収の持続性、③リスクは規制・セキュリティ・マイナー収益悪化。現金比率と積立テンポを事前に決め、情報ソースの一次確認とOPSEC徹底を優先したい。

※本稿は投資助言ではありません。

(参考:Paolo Ardoino(X),Tether