2025年9月 ビットコイン市場動向総括

▽ 要約

メインストリーム化:SEC/CFTC共同方針で登録市場の現物解禁へ
カストディ:USバンクがビットコイン保管を再開し機関受け皿拡大
上場動向:American BitcoinがNASDAQ初日急騰、欧州でも新顔
日本勢:メタプラネットが2万BTC達成も株価は800円台

制度整備は本当に主流化を連れてくるのか――2025年9月ビットコイン市場動向は、その答えを示し始めた。米規制当局の歩調合わせ、銀行の保管再開、新規上場の相次ぎで資金と市場インフラが同時進行で整う。短期の変動は残るが、機関マネーの流入と長期保有の厚みを確認することが、本稿の価値である。

機関・企業の採用が再加速

登録市場での現物取引容認の流れが明確になったため、銀行・上場企業・運用会社の動きが9月初旬にかけて同時多発的に強まった。

ウィンクルボス支援「Treasury B.V.」の上場計画

欧州での投資受け皿が乏しいため、同社は126百万ユーロを調達し1,000超のBTCを確保したうえで、蘭MKB Nedsenseとのリバースリスティングを通じアムステルダムでの上場を計画する。事業はビットコイントレジャリーに特化する。

U.S.バンクが機関向けビットコイン保管を再開

SECのSAB121撤廃を受け会計上の制約が解消されたため、U.S.バンクは2021年以来のカストディ業務を再開し、NYDIGをサブカストディとしてファンドや現物ETFの保管・管理を提供する。

American BitcoinがNASDAQデビュー、初日急騰

トランプ氏の息子らが支援しGryphon Digital Miningとの合併で上場したAmerican Bitcoinは、初日に大幅上昇し出来高も膨らんだため、米市場でのマイニング・トレジャリー併営モデルへの関心が再燃した。

ARKの「7,200万ドル買い増し」報道(未確認)

SNS発の報道で公的開示はなく、真偽未確認の段階であるため、取引所データや四半期開示での裏付け確認が必要だ。

VanEck「メインストリーム化は目前」

SEC/CFTCの共同方針により、NYSE・NASDAQ・CME等の登録取引所で一定の現物暗号資産が扱えるとの職員見解が示されたため、主要市場での現物板が現実味を帯びた。

価格・需給と投資家行動の現在地

8月末の押し目を吸収したため、BTCは11万ドル台を回復し、需給の質は機関主導へシフトしている。

価格の推移とテクニカル

調整後の反発で9月初は11.2万ドル前後まで戻し、上昇トレンドの上側に復帰したため、年初来高値圏への回帰が意識される。

クジラの保有平均は2018年以来の低水準

100〜1万BTC保有アドレス群の平均は約488BTCまで低下したため、11万ドル到達局面での大口利確が続いたと解釈できる一方、相場は需給をこなしながら高値圏を維持した。

超長期(7年以上)の供給シェアは上昇

7年以上動いていないコインのシェアは一段と厚みを増し、短期の利確が出てもネットワークに“売らない供給”が残るため、下支え効果が働く。

企業vs個人のフローは「機関優位」

企業・機関は新規発行量の約4倍のペースで購入している一方、個人はネット売り越しとなったため、上昇相場の主導権が個人から機関へ移っている可能性が高い。

日本・メタプラネットの示唆

同社は累計2万BTCに到達したが、株価は6月の1,930円高値後に9月初は800円台まで調整したため、BTC大量保有=短期の株価上昇に直結しないリスクと希薄化警戒を示した事例となる。

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マクロ・規制のモメンタム

労働需給の緩みから利下げ開始観測が強まる一方、米規制は枠組み明確化と市場アクセス拡大に進み、資金・制度面の追い風が揃いつつある。

FRB利下げ開始観測

7月JOLTSは求人718.1万人と予想を下回り失業者数が上回る局面となったため、ウォーラー理事は9月会合での25bp利下げ開始と3〜6カ月の複数回利下げを示唆した。

CLARITY Actが下院を通過

Digital Asset Market Clarity Act(H.R.3633)は7月に賛成294:反対134で可決され、SEC/CFTCの管轄整理と市場構造の明確化が前進したため、上院審議が焦点となる。

SEC/CFTCの共同方針で現物市場の扉

両局の職員は登録済み取引所で一定のスポット商品の取扱いは妨げられないと明確化したため、上場市場でのBTC/ETH現物板の現実化が近づく。

予測市場Polymarket、CFTCがノーアクション

CFTCはQCXとクリアリング子会社に対しデータ報告等の一部義務を猶予するノーアクションを発出したため、Polymarketの米国再開への道筋が整った。

FRB「決済イノベーション会議」を10/21開催

安定価値コイン、トークン化、DeFi、AI×決済の統合を議題に公式に取り上げるため、米中銀が次世代決済を制度対話の中心に据え始めたシグナルとなる。

▽ FAQ

Q. SEC/CFTCの共同方針は何を変える?
A. 2025年9月2日の共同声明で、NYSEやNASDAQ等で一定の現物暗号資産取引が可能と示され、市場アクセスが拡大する。

Q. U.S.バンクの再開で何が変わる?
A. SAB121撤回で会計負担が軽減し、NYDIGを活用した機関向けビットコイン保管が再始動、ETF等の運用実務が円滑化する。

Q. メタプラネットの現状は?
A. 2025年9月1日時点で2万BTC保有(取得総額約3,023億円)。一方で株価は9月初に800円台で推移している。

Q. 足元のBTC価格は?
A. 9月初旬は約11.2万ドルで推移。8月の押し目後に再上昇し、年初来高値圏へ回帰している。

Q. 機関マネーの動向は?
A. 2025年8月時点で企業の購入は新規発行量の約4倍。個人はネット売り越しで、需給主導権が機関へ移行中と報じられた。

■ ニュース解説

SEC/CFTCの共同方針と米銀の保管再開が重なったため、市場インフラの整備が一段進み、同時に労働市場の減速でFRB利下げ観測が高まりリスク資産の追い風となった。
投資家の視点:機関フロー優位・長期保有の厚み・規制明確化という3点セットを確認しつつ、短期の利確と希薄化リスク(大量BTC保有企業の増資等)を織り込んだポジション設計が有効だろう。

※本稿は投資助言ではありません。

(参考:U.S. Bancorp,SEC,CFTC,Federal Reserve Board,Metaplanet