MBK×FINX、ビットコイン不動産決済を本格展開

▽ 要約

協業 9/29にFINXと協業、3億円分BTC取得を開示。
仕組み 買主はBTC送金、売主は円受領の同時履行型。
法規 交換業・宅建業の枠内で設計、AML/CFT徹底。
市場 円安下で海外投資家の需要取り込みを狙う。

海外資金の受け皿を求める不動産市場に、円安とデジタル資産の波が重なった。マーチャント・バンカーズ(MBK)はFINX JCryptoと組み、ビットコイン不動産決済を実装しつつ3億円分のBTCも保有に加えた。ビットコイン不動産決済という新手法の狙い・仕組み・法規制と、投資家が押さえるべき影響点を解説する。

発表の要点と時間軸

開始発表(9/22)を受け、9/29に協業と3億円分BTC取得を公表したため、スキームは信頼性を増し実装フェーズに入った。
MBKは2025年9月22日に「不動産のビットコイン決済サービス」開始を公表し、29日にFINX JCryptoとの協業と自己資金3億円でのBTC購入(約17.6BTC、取得単価約1,700万円)を発表した。協業ではFINX管理のウォレットを活用し、同時履行と法令順守を担保する構成だ。

購入の位置づけと財務影響

価格ヘッジと実需対応の双方を目的としたため、短期PL影響は限定と見込まれる。
購入したBTCは長期化する円安・インフレへの資産保全と、決済原資の機動的確保の二面で位置づけられる。公表では2025年10月期への影響は軽微とされ、まずはスキーム稼働と案件形成の加速が主眼となる。

FINX JCryptoの機能

交換業と宅建業の二ライセンスを活かすため、送受金と契約実務の両輪をカバーできる。
FINX JCryptoは暗号資産交換業(関東財務局長第00012号)と宅建業免許を保有し、「Coin Estate」ブランドで暗号資産を用いた不動産決済ノウハウを蓄積してきた。2024年10月にはAvenir Group傘下入り、2025年に現商号へ変更し、企業向けWeb3支援も展開する。

決済スキームの実装

円建て売買を前提に、BTCは資金移動手段として機能するため、売主の受入ハードルを下げた。
海外買主は物件代金相当のBTCをMBKが開設する専用ウォレットへ送付し、同時にMBKが売主へ円で支払う。売買契約・登記は円建てで確定し、ブロックチェーンで送金トレースを確保するため、国際送金の時間・手続コストを圧縮できる。

対象市場とユースケース

クロスボーダー資金を短時間で日本物件へ移すため、購入意思決定から決済までのリードタイムが短縮する。
主対象は日本不動産を取得する海外投資家で、①国内仲介会社が扱う海外顧客案件、②MBKの香港・エストニア子会社経由の案件に適用する。BTCは1〜2承認で高額送金の可用性が高く、円安局面の相対的割安感が資金流入を後押しする。

MBK保有物件への適用

自社保有19物件(評価約82億円、年賃料約7億円)にも適用余地があり、在庫回転とIR訴求の両立が図れる。
MBKは都市部の収益不動産を保有しており、英語サイト等での海外販売と組み合わせることで、暗号資産マネーの受け皿を拡大できる。

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法規制・実務の要点

現行制度内で交換業者を介在させたため、資金決済法・宅建業法・犯収法の要件に沿う運用がしやすい。
暗号資産は資金決済法上の「暗号資産」に位置づけられ、交換サービスには登録が必要。登記上の売買価格は円で記載されるため、契約時に為替・BTC数量を確定する。KYC・トランザクション監視等のAML/CFTは登録業者の枠組で実装する。

ステーブルコインの選択肢

国内での電子決済手段制度が整備されたため、将来はステーブルコイン活用も代替オプションとなる。
2023年以降、電子決済手段(いわゆる円建て型ステーブルコイン)に関する制度が整備され、価格変動リスクを抑える決済手段の検討余地が広がった。一方、海外発行銘柄の国内流通には制約が残り、当面はレート固定と迅速円転が現実的だ。

税務・会計の留意点

個人買主はBTC使用時に課税イベントが生じ得るため、事前の取得原価管理が不可欠となる。
暗号資産の使用・売却時には所得計算が発生する。法人側は保有評価や売却損益の計上タイミングに留意が必要で、即時円転スキームは価格変動の貸借対照表影響を抑えやすい。海外投資家は自国税制の確認も不可欠だ。

メリットとリスクのバランス

国際送金の迅速化・コスト削減と引き換えに、価格変動・流動性・セキュリティの管理設計が鍵となる。
メリットは①送金時間の短縮、②国境を跨ぐ両替・事務の簡素化、③新規投資マネーの呼び込み、④手数料構造の効率化、⑤資金移動の透明性向上。リスクは価格変動、規制変更、流動性、セキュリティ、売主側心理的抵抗、税務・会計の複雑さで、契約条項・エスクロー・マルチシグ等の設計で抑制する。

国内外の動向と事例

大手の導入・通貨拡充例が現れ、海外でも暗号資産決済の不動産取引が増加傾向にある。
国内では大手が2025年にBTC/ETH決済を導入後、XRP・SOL・DOGEへ拡大し多言語サイトで海外顧客を獲得。海外ではトルコの大手が2,500件超の暗号資産決済実績を公表するなど、ユースケースが広がる。

市場の反応と今後

材料視で短期的に出来高が膨らんだため、案件の成約実績が次の評価軸となる。
発表前後の株価は9/24に一時346円まで買い進まれ、9/30は278円で小幅高。今後は成約件数、円転コスト、OTC活用、海外投資家リーチ(Avenirネットワーク)の実効性が検証点となる。

▽ FAQ

Q. MBKはいつ、いくらのBTCを購入した?
A. 2025年9月29日、自己資金3億円で約17.6BTC(単価約1,700万円)を取得。

Q. FINX JCryptoの登録状況は?
A. 暗号資産交換業(関東財務局長第00012号)と宅建業〔東京都知事(1)第109600号〕を保有。

Q. 決済スキームの特徴は?
A. 買主はBTC送金、MBKは売主へ円払いの同時履行で、為替確定と迅速円転で価格変動を抑制。

Q. サービス発表日は?
A. サービス開始は2025年9月22日公表、協業とBTC購入は9月29日公表。

Q. 市場の初期反応は?
A. 9月24日に高値346円、9月30日は278円で小幅高となり、出来高も増加した。

■ ニュース解説

9/22の開始公表に続き9/29に協業と3億円のBTC取得が示されたため、交換業者のインフラを組み込んだ実装が進み、円安下で海外資金の導線が整う一方で価格・規制・流動性の管理が肝となる。
投資家の視点:①案件化スピードと成約件数、②円転・OTCの実効コスト、③AML/CFTの運用品質、④外部市況(BTC・為替)の感応度、⑤Avenir経由の海外需要の持続性をモニターしたい。ボラ期はレート固定・短期決済・ヘッジ条項の有無も確認材料。

※本稿は投資助言ではありません。

(参考:マーチャント・バンカーズ,FINX JCrypto 会社案内,金融庁