▽ 要約
トレジャリー:Strategyが追加購入、GPUSは1億ドル計画
実需:PayPalとLinkhomeが決済・不動産で対応拡大
需給:実現時価総額1.05兆ドル、ETF流入が継続
規制:SEC新方針とGENIUS法で米の枠組み明確化
企業導入の加速、オンチェーン需給の強化、そして米規制の明確化が重なり、市場の基礎体力は2025年に入り一段と増した。この記事では「ビットコイン最新動向 2025」を、事実とデータに基づき簡潔に整理し、意思決定の土台を解説する。
企業・機関の導入と実需の拡大
企業の財務活用と決済ユースケースが同時進行で広がったため、採用の裾野はトレジャリーと日常決済の両輪で拡大した。
9月第2週、Strategy(旧MicroStrategy)は段階的にBTCを追加購入し、保有は約63.8万BTCへ到達した。さらにNYSE American:GPUSのHyperscale Dataが1億ドルのビットコイントレジャリー戦略を開始し、AIデータセンター事業と並行した「二本柱」経営を打ち出した。決済ではPayPalが「Pay with Crypto」を強化し、米国での商用受入れと個人間送金の体験を改善。実需面ではナスダック上場のLinkhome Holdingsが、BTC・ETH・USDCで米不動産を購入できる新プラットフォームをローンチした。
コーポレート・トレジャリー
財務資産としてのBTC採用が継続したため、上場企業・ETF・機関の合算保有は節目を超え、市場の流動性構造に影響を与えている。
Strategyは9/8に1,955BTC(約2.17億ドル)を追加、直近数日でも525BTC(約6,020万ドル)の取得が報告され、累計は約63.8万BTCに拡大した。新規参入ではGPUSが売却資金とATM増資で最大1億ドルのBTCを備蓄予定と発表し、MicroStrategy型の財務モデルに追随する動きが見られる。
決済・不動産のユースケース
大手の導入が進むため、投機に偏らない「使える暗号資産」への移行が加速した。
PayPalは米国商用で暗号資産決済の受入れを拡張し、PYUSDや主要ウォレット連携で外部送金も容易にした。Linkhomeは1.85億ドルの取引実績を背景に、まず一部地域から暗号資産による不動産購入を解禁し全米展開を目指す。
需給・オンチェーン指標の改善
大規模な買い越しと保有の長期化が進んだため、実現時価総額や非流動供給が過去最高域に達した。
米スポットETF群の残高は累計で100万BTC超に到達し、ETFフローが鉱夫の新規供給(約450BTC/日)を上回る局面が増えた。実現時価総額は7月に初の1兆ドル台へ乗せ、9月時点で約1.05兆ドル。長期保有(LTH)や非流動供給の増加が続き、下押し局面でも買い戻しが速い。
実現時価総額・蓄積傾向
価格調整下でもコインの再評価が進んだため、ネットワークに定着する資本の規模が拡大した。
Glassnodeの推計では、2025年9月に実現時価総額が約1.05兆ドルと過去最高を更新。蓄積傾向を示す指標や非流動供給(約1,430万BTC)も高水準で、投機より長期保有に軸足が移る構図が明確だ。
供給サイド(ハルビング後)
2024年4月のハルビングを受け新規供給は日量約900BTCから約450BTCへ半減したため、機関需要の加速時に供給制約が効きやすい。
10年以上動かない「古参コイン」の増加ペース(≒566BTC/日)が発行量を上回るとの分析もあり、ネットの流通在庫は構造的に締まりやすい。
規制・政策の大転換
米SECの執行方針が「予告と是正猶予」を重視する枠組みに改められ、加えて連邦ステーブルコイン法が成立したため、制度面の不確実性は低下した。
2025年春にPaul S. Atkins氏がSEC議長に就任し、技術的違反には事前通知を徹底する姿勢を示した。7月には米初の包括的ステーブルコイン法「GENIUS法」に大統領が署名。さらにXRP・DOGEのETFが9月中旬に市場デビュー見込みとの報もあり、アクセスチャネルの多様化が進む見通しだ。
国家レベルの備蓄構想
行政命令で「戦略的ビットコイン準備(SBR)」の創設方針が示されたため、没収資産由来の政府保有BTCの管理は長期保有前提へと変わった。
加えて議会側でもSBRの恒久化・拡充を図る法案が提出され、業界幹部と連携するロビー活動が進展している。
マクロ環境と価格の現在地
米金融政策は9/17のFOMCで0.25%利下げ予想が優勢のため、金利低下観測がリスク資産の下支えとなっている。
BTCは9/15時点で約11.5万ドルで推移し、7〜8月の高値からの調整をこなしながらETF資金と長期保有に支えられる展開。もっともボラティリティは残り、政策イベントの前後は短期的な振れに注意が必要だ。
▽ FAQ
Q. Strategy(旧MicroStrategy)の直近買い増しは?
A. 2025年9月8日に1,955BTCを追加し、直近で525BTCの取得も判明。累計は約638,000BTC。
Q. Hyperscale Data(GPUS)は何を発表?
A. 9月15日に1億ドルのBTCトレジャリー開始を公表。AIデータセンター拡張と併走。
Q. 実現時価総額はどの水準?
A. 2025年9月に約1.05兆ドルで過去最高域。ETF需要と長期保有増が寄与。
Q. 米規制での重要トピックは?
A. SECの事前通知方針、GENIUS法の成立、SBR創設の大統領令、ETFの裾野拡大。
■ ニュース解説
企業導入・ETF資金流入・規制明確化が同時進行のため、需給と制度の両面で追い風が続く一方で、イベント前後のボラや政策実装のタイムラグには留意が要る。
投資家の視点:長期保有と調達コスト管理を軸に、①分散の原則、②流動性確保、③イベント時のヘッジ活用、④信用リスクの抑制を徹底したい。
※本稿は投資助言ではありません。
(参考:The White House,SEC)