▽ 要約
イラン通貨危機:リアル90%超下落でBTC実需化
FOMC:9/16–17に0.25%利下げ観測が優勢
米国政策:SBR創設の大統領令と議会審議進展
流動性:ETF資金・USDT増で売買基盤が拡大
通貨危機の現場、米金融政策の転換、国家レベルの備蓄構想など、ビットコインを取り巻く環境は複数の軸で動いているため、複雑に見えます。本稿はビットコイン最新動向を一次情報で串刺しし、何が事実で何が相場の追い風(あるいは向かい風)なのかを短時間で把握できるよう解説します。読後には、数字・日付・制度面の要点がクリアになります。
イランの通貨危機とビットコインの実需
通貨リアルが2018年以降90%超下落したため、資産防衛と海外送金の回避経路としてBTC等の暗号資産利用が広がった。
米制裁再開と国際金融網からの締め出しで、家計・事業者は外貨取得や越境決済の手段を狭められました。ブロックチェーン分析では、2024年のイラン拠点CEXからの暗号資産流出が前年比+70%の約42億ドルに拡大し、地政学イベント前後でアウトフローが跳ねる傾向も確認されています。2025年6月には国内最大級取引所が攻撃を受け、セキュリティ・ガバナンスの脆弱性も露呈しました。
制裁と銀行網遮断が生む実需
国際送金・輸入決済の網が細るため、検閲耐性と24/7の清算性を持つBTC・USDTが現実的な選択肢となった。
送金や在庫の外貨化に暗号資産を使う動機は明確で、P2Pやステーブルコイン経由のオフランプ/オンランプが「迂回路」として機能します。一方で、規制や為替監視の強化、サイバー攻撃の増加が同時に進み、ユーザー保護と監督の難易度は上がっています。
リアル急落の経緯と家計への圧迫
2018年の制裁復活以降リアルが記録的安値となったため、現地購買力の毀損が長期化した。
通貨下落は輸入物価の上昇と貯蓄の目減りを通じ生活を直撃し、家計はハードアセットやドル連動資産への需要を強めました。BTCはボラティリティが大きいものの、資本規制下の「運べる価値」として使われています。
米FOMCの利下げ観測と相場への波及
労働市場の減速が鮮明なため、9月16–17日会合での0.25%利下げ観測が優勢となり、リスク資産のバリュエーションに緩和圧力がかかる。
市場は四半期見通し(SEP)も注視しており、年内複数回の追加緩和シナリオが織り込まれています。一部では0.50%案も取り沙汰されるものの、直近の確率は0.25%中心(約90〜95%)で推移。実質金利の低下は、金利を生まないBTCの相対魅力を押し上げやすい反面、想定外のインフレ再燃やタカ派サプライズは逆風になり得ます。
金利低下とビットコインの関係
政策金利の低下で流動性が緩むため、無利息資産・成長資産に相対的追い風が及ぶ。
ドル金利とリスク許容度は密接です。Tビル等のキャッシュ代替の利回り低下は、ETF経由の現物需要や先物建玉の増勢に波及します。もっとも、イベント通過後の「材料出尽くし」や実質金利の高止まりは反落要因となるため、ポジション偏りの点検は不可欠です。
「戦略的ビットコイン備蓄(SBR)」の政策化
2025年3月6日の大統領令でSBRが創設されたため、没収BTCを原資に「売却禁止の国家準備資産」としての制度設計が進んだ。
大統領令は、各省庁の保有デジタル資産の台帳整備・移管と、60日以内の法・投資評価提出を財務省に指示。さらに、歳出法案や個別法案で財務省に90日報告義務を課す条項が審議され、SBRの保管・会計・サイバー対策の具体化が進展しています。民間側ではGalaxy Digitalのアレックス・ソーン氏が「年内のSBR発表確率は市場が過小評価」と指摘。海外ではパキスタンが政府系の戦略的BTC備蓄構想を公表し、先行国の動きも可視化されています。
行政・立法の足並み
大統領令の骨子を法制化する動きが続くため、SBRの統治と会計処理の明確化が進む。
下院提出法案や歳出関連条項は、カストディ、第三者委託、バランスシート計上、政府間移転の設計を財務省に求めています。SBRは「税財源の負担なき取得」を原則とし、没収等の政府保有分が中核となります。
国際比較と先行例
パキスタンが国家備蓄構想を発表したため、米国の初動遅延リスクが意識される。
政府・準政府のBTC保有は米中英などで既に可視化され、エルサルバドルは法定通貨化と買い増しを継続。一方、備蓄の可否はマクロ安定性・法体系・対外関係に左右され、各国で賛否が割れます。
市場マネーの流入と流動性の現状
7月に週次+37億ドルの資金流入が観測された一方、直近は小幅流出もあるため、資金循環は「強弱交錯」の局面にある。
CoinShares週次では足元でBTC単体に+5.24億ドルの流入が続いた週もあり、ETF・ETP経由の需要は底堅い一方、ETHや一部アルトからの流出が全体を相殺する週も見られます。マクロイベントや原資産ボラの連動でフローが振れる地合いです。
ステーブルコイン供給の拡大
USDT時価総額が約1,700億ドル、24時間出来高が1,000億ドル超のため、板厚・スプレッド改善を通じて相場の受け皿が拡大した。
直近でも10億USDTの新規ミントが観測され、月間では発行増が数十億ドル規模。発行体は米国内規制に準拠する新ドル連動通貨(米発行体)の立ち上げも表明し、規制適合と流通拡大の両立を狙います。市場の「デジタルドル」需要は依然強いとみられます。
著名人の評価と投資家心理
強気の発言が相次ぐため、個人マインドには追い風が吹く一方で、誇張表現の鵜呑みは禁物だ。
経済学者サイフェディアン・アモスはBTCを「デジタル黄金」と位置付け、固定供給と検閲耐性を強調。ロバート・キヨサキは「0.01 BTCでも将来は大きい」と煽情的に語り、マイケル・セイラーは「21の真実」でBTCの多面的性質(資産・ネットワーク・プロトコル)を整理。マックス・カイザーは「フィアットはBTCに対し数学的にゼロへ」と極論を掲げます。これらは投資家心理を押し上げますが、ファクトと意見を峻別し、ボラティリティや政策リスクを織り込む必要があります。
▽ FAQ
Q. 米FOMCはいつ、どの程度の利下げが見込まれますか?
A. 2025年9月16〜17日開催で0.25%観測が優勢。CMEは約90〜95%を示唆。
Q. 米国の戦略的ビットコイン備蓄(SBR)は何ですか?
A. 2025年3月6日の大統領令で創設。没収BTCを売却禁止で保有し財務省が設計。
Q. イランの通貨危機はBTC需要にどう影響しましたか?
A. 2018年以降リアル90%超下落。2024年の暗号資産流出は前年比+70%の約42億ドル。
Q. 直近のETF資金動向は?
A. 7月は週次+37億ドル。9月8日週は総額小幅流出もBTC単体+5.24億ドル。
Q. ステーブルコイン供給は?
A. USDT時価総額は約1,700億ドル、24h出来高1,000億ドル超。直近も10億USDTを発行。
■ ニュース解説
利下げ観測の高まりとSBR創設の制度化が進んだため、流動性と政策面でBTCに順風が吹く一方で、イラン事例が示すように地政学と規制・サイバーリスクは増幅している。
イラン通貨は長期下落し2024年の暗号資産流出は+70%に拡大、FOMCは9/16–17に0.25%利下げ観測が優勢で、米国は大統領令でSBRを創設し議会が90日報告を要求、7月にはデジタル資産に週次+37億ドルの流入があった一方で直近は強弱が交錯、USDTは時価総額約1,700億ドルで直近も10億発行が観測されたため、中期的には政策・流動性の追い風で受給改善が示唆されるが、規制強化やサイバーリスク、再インフレは下振れ要因となる。
投資家の視点:イベントドリブン(FOMC・法案審議)でフローが振れやすい局面です。①金利感応度の高いレバレッジや先物偏重を抑え、②スポット主体・分散の流動性管理、③ステーブルコインの発行先・保管先(法域・準拠法)を精査、④政策見出しと原文(大統領令・法案本文)を両睨みで解釈する、のが一般的な守りです。
※本稿は投資助言ではありません。