【要約】
・ビットコインが11万ドルを突破しゴールデンクロスの議論が浮上
・Treasure Globalが1億ドル規模のデジタル資産財務戦略を発表
・ViaBTC Capitalの分析:ビットコインは開発者とマイナーの合意形成が鍵
・イーサリアムはEIP-1559やPoS移行などで価値見直しの兆し
・香港・米国など各国規制も新たな局面へ
11万ドル後のゴールデンクロスとは
ビットコイン(以下、BTC)が11万ドルを超えたことで、テクニカル分析でよく言われる「ゴールデンクロス」の登場が注目を集めています。一般にゴールデンクロスは50日移動平均線が200日移動平均線を上回る際に生じ、強い上昇シグナルと考えられるのが通説です。しかし歴史を振り返ると、ゴールデンクロス直後には10%前後の急落がしばしば起こり、その後に大きく上昇して新高値をつける――という動きが複数回見られました。
筆名cyclop氏の分析(PANews経由、Timによる翻訳)によれば、過去にも2021年2月や2024年3月などゴールデンクロスが形成された直後にBTCが一時的に下落し、そののち大幅なリバウンドで最高値を更新する「洗い落とし」が繰り返されたとのこと。今回も11万ドルを超えたあたりで8%程度の下落が生じ、現在は10万ドル付近で推移しているため、「同じように短期調整をはさみながら15万ドルを目指す」シナリオが想定されています。一方で10万ドルを明確に割り込むと、9万ドル台半ばまで調整が深まるリスクも指摘されているのです。
Treasure Global、1億ドルデジタル資産財務戦略
ナスダック上場企業であるTreasure Global Inc.(TGL)は、AIプラットフォーム強化を目指す中で1億ドル規模のデジタル資産への投資を打ち出しました。
- 5000万ドルは既存の株式ファイナンス枠から
- さらに5000万ドルを戦略投資家から追加調達
これらの資金はビットコイン・イーサリアム・規制対応ステーブルコインといったブロックチェーン原生資産へ投じられるとのこと。これにより同社は「効率的な資金活用を狙いつつ、トークン化やブロックチェーンを活用したロイヤルティプログラム構想も視野に入れる」といわれています。
ビットコイン開発をめぐる「マイナー vs 開発者」論
ViaBTC Capitalは「ビットコインの将来的アップグレードやイノベーションは、誰が主導するのか」という点を深掘りしています。ビットコイン開発はコミュニティ主体で行われ、
- Bitcoin Core開発者による改良提案(BIP)が議論される
- マイナーによる信号投票(ブロックに特定バージョンを設定)で合意をとる
というプロセスが必要です。
2021年のSegWit導入や2021年末~2022年にかけてのTaprootアップグレードでも、マイナーの合意形成が難航する場面がありました。さらにOP_CAT等の新たな機能追加(操作コード再導入)をめぐり、「保守派開発者は慎重姿勢を崩さないが、新機能派はより複雑なスクリプト実行を求めている」という構図もあるようです。ビットコインは「不変が安全性を担保する」一方、「イノベーションを排除しすぎるとエコシステムの衰退につながる」との議論が絶えません。
ETHの評価見直し:PoSとEIP-1559で価値を再定義
イーサリアムの合意機構がPoWからPoSへ移行(Merge)して久しく、現在はバーンメカニズム(EIP-1559)によって発行数が大幅に抑制されています。近時は米ナスダック上場企業やファンドなどがETH現物のETFなどを通して大量に購入する動きが報じられ、今やETHは「企業の戦略資産」として再評価されつつあるとの見方があります。
加えてイーサリアムはRollupを中心とした拡張戦略を推進し、大規模取引をL2に任せることでメインネットの安全性を維持しながら実用的スループットを高めようとしています。ただし複数のRollupが乱立すると流動性が分散し、ユーザー体験の断絶が生まれる課題も顕在化。今後は相互運用性やデータ可用性(DA)をめぐるアップグレードが大きな焦点になるでしょう。
規制と市場:香港・米SEC・そしてグローバル企業
香港の財務当局は「仮想通貨政策宣言」の第2版を近く発表すると明言し、既存の金融インフラとブロックチェーン技術の融合を目指す姿勢を示しています。一方、米国証券取引委員会(SEC)では、これまでの強硬な規制執行に加えて「通知とコメント手続き」によって暗号資産の新たなルール形成を行う方針が語られました。
Treasure Globalなど海外企業がデジタル資産への資金投下を活発化させているのも、各国が適切な規制と産業育成のバランスを模索している証左でしょう。
ニュースの解説
現状の仮想通貨市場では、ビットコインが11万ドル台に達した一方で「ゴールデンクロス」に伴う急落リスクも懸念されています。ただ、過去の例からは急落後に再度力強い上昇が出現するパターンが多く、10万ドルが割れなければ15万ドル近辺への挑戦も十分視野に入るとの分析が有力です。
また、ナスダック上場企業のTreasure Globalが1億ドルをデジタル資産へ投資する計画や、イーサリアムをめぐる投資家の再評価は、機関資金の流入が続く可能性を示唆しています。ビットコインコアの開発動向や、マイナーとの合意形成におけるコンセンサスモデルの課題なども引き続き注目されるでしょう。
さらに香港や米国をはじめ、世界各地で規制関連の動きが活発化しており、これらが企業や投資家の行動に影響を与える構図が一段と強まりそうです。今後は新たなアップグレードやファイナンス手法によるエコシステム拡大の一方で、短期的な調整局面をいかに乗り越えるかが市場の焦点となるでしょう。