▽ 要約
カンパニー調達:CIMGとFalconedgeが財務でBTC採用を加速
ハッシュ最高:ネットワークが976EH/s、供給は一段と硬直
ETF動向:保有量は125万BTC規模、資金フローは再流入へ
テクニカル:日足RSIが23台で売られ過ぎ、反発余地も
企業の財務でビットコインを採用する動きがアジアと欧州で加速し、同時にビットコインETF保有量が主要取引所個別の保有を上回る局面が広がったため、需給は2025年後半にかけて一段と締まる見込みだ。ビットコインETF 保有量の増勢と資金フローの反転は、押し目形成局面での基礎需給の強さを裏付ける。
企業財務のBTC化が進展(CIMGとFalconedge)
両社が発行・上場資金をBTCに振り向けるため、現物需要が制度マネーの回路で増幅される構図となった。
香港のデジタルヘルス企業CIMG(Nasdaq: IMG)は、非米投資家9者に新株2.2億株(1株0.25ドル)を発行し、対価として500BTCを受け取る契約を締結した。調達総額は5,500万ドル、BTC評価は1枚11万ドル相当で、決済は2025年9月上旬予定と明示された。ヘルスケア事業と暗号資産保有の「二本柱」戦略で、マクロ不確実性下の成長機会としてBTCを位置付ける。
ロンドンのFalconedgeは、Falcon Investment ManagementのスピンオフとしてプレIPOを完了し、9月上場を見据えIPO資金の大半をビットコイン・トレジャリーに充当する計画を公表した。CEOロイ・カシ氏は「BTCを主要準備資産に」と述べ、機関財務への組み込みを正面から掲げた。
CIMGのディールと狙い
決済通貨を直接BTCにしたため、希薄化の対価がそのまま現物需要となる。
新株発行5,500万ドルで500BTCを受け取り、資産側にデジタルリザーブを積み上げる。規模は中型だが、規制市場(Nasdaq)上場企業がReg Sを活用し、決済をBTCで完了させる事例は象徴的だ。受渡しが9月上旬である点は需給のタイミングにも注目される。
Falconedgeの「上場=トレジャリー構築」
上場調達=BTC積増しの方程式が示唆する需給効果は大きい。
プレIPO後、9月のIPOで得た資金の大半をBTC準備にあてる計画を掲げた。同社は暗号資産の規制ホスティングや初損保証などで実績を持つ母体から独立し、機関向けの助言と自己財務の両輪でBTCエクスポージャーを拡大する。
ETFと取引所のパワーバランスが変化
ETFの保有が短期調整を挟みつつも一段と積み上がったため、現物在庫の集約先が「取引所→ETF」にシフトしている。
米現物ビットコインETFの合計保有は2025年7〜8月にかけて約125万BTCに到達し、Satoshiの推定保有(約110万BTC)を上回る水準となった。一方、主要取引所の個別保有量はコインベース約70万BTC、バイナンス約58万BTC規模と推計され、個別比較ではETFの大型ファンドが上回る状況が見られる。資金フローも8月25日に+2.19億ドル、26日に+8,810万ドルの純流入となり、直前の6営業日連続流出から明確な反転が確認された。イーサリアムETFも同時期に連日4億ドル超の流入が継続した。
保有量の「重心」が移る
ETFに現物が吸い上げられるため、取引所の売り圧在庫は減る。
2024年末には「ETF保有がSatoshi超え」の節目を通過し、2025年夏にはIBITなどの単体保有が主要取引所の推定残高を上回る事例も出てきた。取引所の総残高は長期的には逓減トレンドで、需給の硬直化が進む。
資金フローの転換点
直近の売り優勢が一服したため、ETF経由の押し目買いが戻った。
8月中旬の連続流出(累計約12億ドル)後、25日に+2.19億ドル、26日に+0.88億ドルの純流入へ転じた。調整局面で現物を拾う長期資金がETFに回帰し、価格の下支え要因となった。
ハッシュレートと供給曲線(99%採掘の地平)
計算資源の過去最高更新が続くため、ネットワーク安全性の底上げと投資の再加速が示唆される。
ビットコインのハッシュレートは8月8日に約976EH/sの最高水準を記録し、27日も約944EH/sで高止まりしている。支持者のマックス・キーザー氏は「ハッシュが価格に先行する」と繰り返し強調しており、マイニング投資の加速は先行指標とみなされやすい。供給面では既に93〜94%が採掘済みで、99%到達は2032〜2035年のレンジが一般的な推計、残る1%は2140年頃まで徐々に発行される。
ハッシュが先行する仮説
マイナーの投資は需給タイト化のシグナルになりやすい。
ハッシュが上がる局面は設備投資の前倒しや電力契約の拡大を意味し、価格より先に動くとする見方がある。他方で因果は双方向との反論もあり、価格とハッシュの相関は時期によりブレる点も押さえたい。
供給の最終局面へ
新規供給の希薄化が進むため、現物調達コストは構造的に上がる。
2035年までに99%が掘り尽くされ、残余の1%弱を2140年頃まで配分する。ETF・企業財務・長期保有者の競合が強まると、流動在庫はさらに縮む。
テクニカルとセンチメントの現在地
下降局面での投げ売りが出尽くしたため、短期的な反発余地が生まれている。
8月下旬、日足RSIは一時23台まで低下し異例の売られ過ぎ水準を示現した。先行局面でのETF流出と合わせて短期のキャピチュレーションを誘発し、25日以降はETFに資金が回帰。過去の類例でもRSIが極端に低下したのち短期リバウンドが入る傾向はあるが、戻り待ちの売り圧力やマクロ要因には引き続き注意が必要だ。
▽ FAQ
Q. CIMGの取得条件とスケジュールは?
A. 5,500万ドルで新株2.2億株発行・500BTC取得、1株0.25ドル・BTC約11万ドル、2025年9月上旬決済予定。
Q. ETFはどれくらいBTCを持つ?
A. 2025年7〜8月時点で約125万BTC(総供給の約6%強)とされ、Satoshi推定の110万BTC超。
Q. ハッシュレートは今どのくらい?
A. 8月8日に約976EH/sで過去最高、8月27日も約944EH/sで高水準を維持している。
Q. 99%採掘完了はいつ?
A. 2032〜2035年の見通しで、残余1%弱は2140年頃まで段階的に発行される。
Q. RSIは何を示している?
A. 8月下旬に日足RSIが23台まで低下し売られ過ぎを示唆、短期の自律反発が入りやすい局面。
■ ニュース解説
企業のBTC採用とETF保有の増勢が続く一方で、8月は一時的な資金流出とテクニカル悪化が重なり調整が深まったため、月末にかけてフロー反転とリスク選好の回復が観測された。
投資家の視点:機関フローとハッシュ・供給の中期強材料を押さえつつ、短期はRSIやETFデイリーフローで過熱・冷え込みを点検し、エントリーは分割・DCAで価格変動リスクを平準化、損切り・ポジションサイズの規律を優先したい。
※本稿は投資助言ではありません。
(参考:PR Newswire,Strategy)