▽ 要約
市況:BTC$85,948、ETH$2,798まで下落。
フロー:Bitcoin ETFは2025-12-17に$457M純流入。
政策:米SECが保管要件を整理、取引所論点も提示。
焦点:流動性改善がデリバ・ステーブルで進行。
BTCは86,000ドルを割り込み、ETF資金流入や規制議論があってもリスクオフが優勢で、流動性設計と信用リスクの論点が再点検されている。

BTCが86,000ドルを割り込み、ETHも2,800ドル台まで下落した。Bitcoin ETFの資金流入が続く一方、米金融政策の受け止めや規制議論、取引インフラの流動性設計がボラティリティを左右している。本稿は、値動きの背景と主要トピックを投資家向けに解説します。
市況総括
BTCは86,000ドル割れまで下落し、現物フローとリスク許容度の綱引きが続く。
OKXではBTCが$85,948.20(-2.90%)、ETHが$2,798.81(-5.62%)まで下落した。
短期ではレバレッジ調整とマクロ指標の解釈が重なり、値幅が出やすい地合いが続いている。
BTC・ETHの水準と需給
オンチェーン指標と出来高の「節目」が意識され、下方ブレ時の売り圧が点検されている。
2025-12-17の米国ビットコイン現物ETFは純流入$457Mで、FBTCが$391M、IBITが$111Mと主導した。
一方でARKBは-$36.9629Mとなり、総AUMは$112.574B、累計純流入は$57.727Bと集計されている。
オンチェーン分析では、BTCは$81,000の支持帯と$93,000の売り圧の間で推移しやすいとされる。
特に$81,300を明確に割り込む局面では、追加売りの誘発リスクが論点になる。
センチメントとリスク資本
アルトの回復力より、資金の通り道とリスク資本の収縮がセンチメントを規定している。
ある見方では、2024-11-01〜2024-11-30のミーム熱(例:TRUMP)が実質的な「アルトシーズン」となり、その後は原生アルト市場が長期調整に入った。
BTCが機関投資家とマクロ要因に左右されやすくなった結果、従来の「BTC急落=熊相場確認」という枠組みは効きにくいという指摘もある。
暗号VCではShima CapitalがSEC提訴後に事実上の閉鎖と報じられ、投資家のデューデリジェンス強度が問われた。
同社は資金調達$169.9M超や、ファンドの90倍リターン主張と実態2.8倍の乖離などが争点とされ、VCサイドの選別が進みやすい。
規制・政策アップデート
保管と市場構造の整理が前進し、金融政策は流動性操作の解釈が相場の期待を揺らしている。
米SEC:保管要件と取引市場構造
SECは暗号資産証券のカストディで「実質支配」を求め、取引所・ATSでの取り扱い論点を募っている。
SECはブローカー・ディーラーが暗号資産証券を保管する際、秘密鍵の統制、BCP、顧客資産の分別などを含むリスク管理を整理した。
運用面では、物理的な占有・管理(possession or control)を満たすための手続きと、委託先管理の粒度が焦点になる。
加えて、暗号資産の取引を全米証券取引所やATS(代替取引システム)で扱う場合の論点として、上場基準・開示・市場監視などの検討を進めている。
制度側の整備が進むほど、米国での機関オペレーションは「できること/できないこと」が明確になりやすい。
米連邦準備制度は、無保険銀行の暗号資産活動を制限していた2023年ガイダンスを撤回し、監督フレームの更新を進めた。
銀行の関与余地が広がる一方で、コンプライアンスとガバナンスの要求はむしろ実務で重くなる可能性がある。
金融政策と「QE-lite」論争
利下げと短期国債購入は流動性を改善しても、長期金利の抑制とは別物という整理が重要だ。
FOMCは政策金利を3.50%–3.75%へ引き下げ、同時に月$40Bの短期国債(T-bills)購入を開始した。
短期国債中心の購入は市場の久期(duration)を直接吸収しにくく、約84%がT-billsとされる発行構成も踏まえると、長期金利低下を保証しない。
この措置はレポ市場や銀行流動性の安定を狙う「機能的オペ」に近く、実質金利や株式割引率を一段と下げる政策とは区別される。
そのため、見出しほどリスク資産に追い風にならない局面があり得る。
貿易戦・通貨戦が強まればドル体制の調整(ドル安)とボラティリティ上昇が意識されやすい。
ただし、価値保存資産の再評価は政策の「金融抑圧」局面で強まりやすく、タイミングは不確実だ。
次期FRB議長レース
次期議長人事は利下げ期待と中央銀行の独立性を同時に動かし得るため、暗号資産のマクロ感応度を高める。
トランプ氏は次期FRB議長を「近く」指名するとし、候補にKevin WarshとKevin Hassettが挙がっているとされる。
Warshは「利下げ+バランスシート縮小」を組み合わせる案を示し、政治要請とインフレ抑制の両立を狙う構図が浮上している。
企業・資金調達・プロジェクト動向
統合取引所、資本効率、統一流動性がキーワードになり、競争はプロダクト設計へ移っている。
取引所:Coinbaseの統合戦略
Coinbaseは株式・予測市場・DEX統合まで射程に入れ、複数収益源で景気循環耐性を高めようとしている。
Coinbaseは株式取引、予測市場、SolanaのDEX統合、ブランド型ステーブル、デリバティブなどを組み合わせ「全能取引所」化を進めている。
プロダクト拡張は収益源の多様化になる一方、規制区分が異なる事業を束ねる統制コストも増える。
Ethereum:需給とスケーリング
ETHは取引所残高が2016年以来の低水準とされ、拡張ロードマップは2026-01-01〜2026-01-31にGas上限80,000,000を視野に入れる。
開発者は2026-01-01〜2026-01-31までにGas上限を60,000,000から80,000,000へ引き上げる計画を示し、blob容量拡大のハードフォークも進む見通しだ。
取引所にあるETH供給が2016年以来の低水準とされる点は、短期の売り圧低下材料として意識されやすい。
ETHGasはPolychain主導で$12Mを調達し、Ethereumのブロックスペース先物(最大64ブロック分の実行権)を提供する計画を掲げた。
ブロック資源を金融商品化する試みは、需要急増局面でのヘッジ手段になり得る一方、流動性設計が市場安定に直結する。
デリバ:HyperliquidのPortfolio Margin
Portfolio Marginの導入はオンチェーンデリバの資本効率を高め、機関型フローの入り口を広げ得る。
HyperliquidはPortfolio Marginをpre-alphaで開始し、現段階は借入USDCと担保HYPEに限定している。
将来的にUSDHの借入やBTC担保を追加する構想があり、資産拡大に伴うリスク管理が要点になる。
伝統市場ではCMEが1988年にPortfolio Marginを導入し、少なくとも$7.2Tの増分規模を生んだとされる。
同様の効果がチェーン上で再現されれば、深い板・小さいスプレッド・極端局面の耐性向上が期待される。
ステーブル:BNB Chainの$U構想
新たなUSDステーブルの「統一流動性ハブ」構想は、信用と透明性が採用の分岐点になる。
BNB Chain上でUTech Stables($U)が注目を集め、CEX・DEX・決済の分断を埋める統一流動性を掲げた。
準備金をほぼリアルタイムに検証するPOR(Proof of Reserves)を標榜する一方、チーム情報は限定的とされる。
2025-12-18のローンチが示され、BUSD退場後の「原生ステーブル不在」を埋める存在かが焦点になっている。
ただし、準備資産の監査・償還設計・取引所上場の進捗は、初期のボラティリティを左右する。
信用リスク:AIインフラ債務とマイナー
AIデータセンター投資の債務化は、暗号マイナーの資金繰りとも連動し、流動性ショック時の波及経路になり得る。
AIインフラの債務ファイナンスは2025年に前年比+112%で$25Bに達したとの推計があり、資産の陳腐化と返済構造のミスマッチが論点だ。
推論コストが前年比-20%〜-40%と下がる環境では、稼働率と単価の前提が崩れるとDSCRが急変しやすい。
ビットコインマイナーの負債が+500%とされる中、担保価値と金利が同時に動く局面ではレバレッジの巻き戻しが起こりやすい。
金融インフラ側で「清算流動性」が薄い場合、連鎖的な売りの伝播経路が課題になる。
今後の注目点
短期は重要水準と流動性指標、次に制度整備の論点が価格形成に影響しやすい。
BTCは$81,000〜$93,000のレンジが意識され、$81,300割れの反応と出来高を確認したい。
現物フローが堅調でも、マクロショック時はボラティリティが先行しやすい。
制度面では、SECの保管要件と取引市場構造の議論が、米国の機関投資家が取れるオペレーション範囲を左右する。
「保管できる主体」と「取引できる市場」が整えば、リスク管理の標準化が進む可能性がある。
プロダクト面では、Hyperliquidの対象資産拡大、$Uの準備資産開示、Coinbaseの新サービス展開が流動性の所在を変え得る。
信用リスクの源泉としてAIインフラ債務にも目配りし、レバレッジの巻き戻し局面を想定したシナリオ管理が重要だ。
▽ FAQ
Q. BTCが86,000ドルを割れた背景は?
A. OKXで2025-12-19にBTCは$85,948、日内-2.90%で86,000ドル割れ、ETHも$2,798まで下落。
Q. 米国の現物ETFフローはどうだった?
A. 2025-12-17に米国ビットコイン現物ETFは純流入$457M、FBTC$391M・IBIT$111M、ARKBは-$36.9629M。
Q. 米SECの保管要件で重要な点は?
A. SECは2025-12-18にブローカー・ディーラー向けに鍵管理・分別保管・BCPを含むpossession or controlを整理。
Q. EthereumのGas上限はいつどこまで上がる?
A. 開発計画では2026-01-01〜2026-01-31までにGas上限を80,000,000へ、現行60,000,000から引き上げる方針。
Q. HyperliquidのPortfolio Marginは何が変わる?
A. Hyperliquidはpre-alphaでUSDC借入とHYPE担保に限定、Portfolio MarginはCMEで$7.2T増分の実績がある。
■ ニュース解説
BTCとETHの下落が進む一方で現物フローはプラスだったため、相場は需給だけでなく政策解釈と流動性に強く反応している。
ただし、カストディやデリバの資本効率が改善すれば中長期の市場構造は厚くなり得る。
投資家の視点:短期は$81,300近辺の攻防、制度面はSECの保管・市場構造議論、プロダクト面は統一流動性や信用リスクの波及経路を点検したい。
※本稿は一般的な情報提供を目的としており、特定銘柄・金融商品の売買を推奨するものではなく、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
(参考:PANews)





