▽ 要約
価格:2015〜2024の春節休暇は平均+10%前後とされる。
前後差:休暇前は1月調整と重なり下落しやすい年がある。
流動性:アジア休暇で出来高が細り、値動きが増幅しやすい。
注意:規制・ETFなど外部要因で季節性は簡単に崩れる。
春節期の上昇は統計上は目立つ一方、休暇前の調整・薄商い・規制介入が重なるため、再現性は年次の環境次第で変わる。

ビットコイン春節は本当に上がりやすいのか。過去の集計では休暇中の上昇が続く一方、休暇前の調整や出来高減少、規制・マクロ要因で結果は変わる。本稿は2015〜2025を軸に、価格・取引動向と背景を投資家目線で解説します。
春節アノマリーの統計的特徴
春節休暇中にBTCが上昇しやすいという主張は、“連続プラス”の見た目で語られやすい。
春節(旧正月当日から連休最終日)を切り出した集計では、2015〜2024の各年がいずれもプラスで平均は+10〜11%前後とされ、2018年は+24.7%、2024年は+17.3%と上昇幅が大きい。
一方で、最小は2015年の+1.7%程度とされ、上昇が「確定」ではなく“幅がぶれる季節性”である点が重要だ。
中国語圏ではこの季節性を「紅包行情(お年玉相場)」と呼ぶ例もあり、期待が先行しやすい点が特徴になる。
「春節前の魔咒」と1月調整の重なり
春節前に下がりやすいという見方は、旧正月の4〜6週間前に調整する年があるという観察から広がった。
背景として「休暇の出費で現金化の売りが出る」という説明が語られるが、下落の時期や強さは年によりばらつき、2021年のように春節直前まで強含む局面もある。
この弱含みは、年初に調整が起きやすい「1月効果」と区別しにくく、春節だけを原因に断定しにくい。
したがって「春節前の魔咒」は、投資家心理を動かす“物語”としての影響と、統計的な再現性を分けて扱う必要がある。
背景:流動性・文化要因・情報伝播
春節期はアジアの参加者が休暇に入り、市場の流動性が細ることで値動きが増幅しやすい。
取引量が落ちると少額の成行注文でも価格が動きやすく、上昇局面では上振れが誇張され、下落局面では投げが加速しやすい。
株式市場で知られる「休暇前後の出来高低下」と似た構図が、24時間取引の暗号資産でも起き得る点は押さえておきたい。
春節の買い需要は、ボーナスや紅包(お年玉)など“季節の資金”の行き先として説明されやすい。
特別収入を元手にリスク資産へ追加投資する行動や、若年層が少額で「運試し」購入する行動が指摘され、ポジティブな期待が相場に織り込まれやすい。
さらに、帰省で親族が集まり投資話題が共有されることで新規購入が誘発される、という社会的説明もある。
ただし文化要因は定量化が難しく、最終的に観測できるのは「価格と出来高の結果」である点を忘れないようにしたい。
資金フローと規制が季節性を上書きする
春節アノマリーは、資本移動や規制のニュースが出た瞬間に上書きされ得る前提で読む必要がある。
2010年代半ばまで中国系取引所が取引量で大きな存在感を持ち、中国の資本規制や人民元動向がBTCに波及しやすかった。
例として、2015年の人民元切り下げ局面では資産防衛需要が強まったとされ、BTC価格が約$200から$600へ短期で急伸した事例が語られる。
一方で、2017-02-10前後には中国人民銀行(PBOC)が取引所への監視を強め、引き出し停止などの措置が価格急落の要因になったとの報告がある。
規制強化は2021年にピークを迎え、中国本土での暗号資産取引は違法と位置付けられた。
それでも需要は消えず、海外サービスの利用などを通じて参加が続いているとの見方がある。
ブロックチェーン分析の採用指数では、中国が2022年時点で上位(10位)に位置したとされ、市場として無視できない規模が残る。
このため春節シーズンの値動きも「季節性」だけでなく、当局姿勢や資本移動の制約を常に同時に見る必要がある。
直近2024〜2025:統計と材料の“重なり”を点検
2024〜2025の春節は、季節性の検証に加え外部材料が同時に走った局面として整理すると読み違いが減る。
2024-02-10:休暇中の上昇が目立った年
2024年の旧正月は2024-02-10で、休暇入り前の2月上旬からBTCが上向いたとされる。
この局面では、米国でのスポットビットコインETFを巡る期待など複数の材料が重なり、春節要因だけで説明しにくい。
具体的には、旧正月直前の2024-02-09に約$47,000、休暇中の2024-02-12に$50,000超という水準が取り沙汰された。
結果として春節期間の騰落が+17%超となり、“紅包行情”の再現として語られやすくなった。
2025-01-29:上昇確率の統計が先行した年
2025年の旧正月は2025-01-29で、過去統計を根拠に「休暇後20日間は上がりやすい」とする分析が紹介された。
過去12年で11年上昇といった集計は強気材料になりやすいが、サンプル数が小さいため過度な一般化は危険だ。
報道ベースでは、春節期に「설 랠리(旧正月ラリー)」が続くかが話題になり、市場心理の下支えになった。
一方で、春節後の長期トレンドは他要因の寄与が大きく、途中経過だけで結論づけない姿勢が妥当になる。
今後の注目点:検証の視点とリスク管理
春節アノマリーを投資判断に使うなら、まず“どの期間を春節と定義するか”を固定して検証する必要がある。
休暇の開始・終了は年により異なり、当日(旧正月)だけを見るのか連休全体を見るのかで結果が変わる。
BTCは24時間取引のため、株式の休場と違って「参加者が減るが市場は開いている」という特殊性がある。
薄商いでボラティリティが上がるなら、上昇の平均だけでなく下振れリスクも同時に測るのが現実的だ。
外部材料が重なる年ほど、季節性の見かけ上の再現性は高くも低くもなる。
ETFフロー、金利見通し、大口のオンチェーン移動、主要国の規制方針などは、季節性を簡単に打ち消す。
したがって春節は“イベントのカレンダー”として注視しつつ、主因は別にある可能性を常に残すべきだ。
再現性を過信せず、データの更新と前提の点検を毎年行う姿勢がリスクを減らす。
▽ FAQ
Q. 春節期間の上昇は統計的にどれくらい?
A. 集計ではBTCは2015〜2024の春節休暇が全てプラスで、平均+10〜11%前後とされるが、期間定義や取引所差で変わる。
Q. 春節前に下がる「魔咒」は本当?
A. 旧正月の4〜6週間前(1月頃)に調整する年があり、換金売り説などから「春節前の魔咒」と呼ばれるが、2021年のような例外もある。
Q. 取引量や流動性はどう変わる?
A. 春節はアジア勢が休暇で参加が減り、出来高が落ちて1〜2週ほど薄商いになりやすく、値が飛ぶため急騰急落の両方向に注意が要る。
Q. 規制は春節アノマリーを崩す?
A. 2017-02のPBOC検査や2021年の全面禁止など、政策は季節性を上書きし得るため、カレンダーよりニュース優先で点検する。
■ ニュース解説
春節期の上昇は統計上は魅力的に見えるが、背景は文化要因だけでなく流動性と政策の重なりにある。そのため同じカレンダーでも、市場環境が変われば結果は逆転し得る。
投資家の視点:春節の定義(当日〜連休最終日など)を固定し、前後の出来高・ボラと規制ニュースを並べて点検すると、アノマリーの過信を避けやすい。
※本稿は一般的な情報提供を目的としており、特定銘柄・金融商品の売買を推奨するものではなく、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
(参考:Bloomberg)





