12月8日 ビットコイン17万ドル予測とUSDT1900億枚

▽ 要約

市況:JPモルガンがビットコイン理論価格17万ドルを維持しつつ、市場はデリバティブ縮小とETF流出で慎重姿勢が強まる。
規制:FOMC利下げ判断、中国・韓国の規制強化とフランス銀行の売買解禁が交錯し、マクロとルール両面で再価格付けが進む。
企業:Moore Threadsの1500BTC紛争やSolanaレンディング内紛、Binanceの上場時間疑義が、ガバナンスとカウンターパーティーリスクを浮き彫りに。
流動性:USDT供給1900億枚とStable主網ローンチなどがドル建て流動性を押し上げる一方、ETHの取引所残高低下が供給タイト化を示唆。

ビットコイン17万ドル予測とUSDT供給1900億枚という強気材料が示される一方で、12月8日時点の市場はデリバティブ縮小とETF流出が続き、FOMCや各国規制、企業スキャンダルなど複数リスク要因を同時に織り込みつつ、「投機資産からインターネット底層インフラへ」という長期テーマも浮かび上がっている。

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ビットコイン急落とボラティリティの高まりの中で、JPモルガンのビットコイン17万ドル予測やUSDT供給の過去最高更新が「強気相場は本当に続くのか」という疑問を投資家に投げ掛けています。本稿では、12月8日時点の市況・規制・企業動向を整理し、短期リスクと長期テーマ「投機資産からインターネット底層へ」を俯瞰します。読了後には、日々の価格変動に左右されず、どの指標とイベントを優先してモニターすべきかの整理ができることを解説します。

市況総括:17万ドル理論価格と足元の調整局面

ビットコインはデリバティブ縮小とETF資金流出で「冷えた」センチメントが続く一方、JPモルガンは理論価格17万ドルを維持しており、短期と中長期の評価に大きなギャップが生じています。

JPモルガンの17万ドル予測とStrategyリスク

ビットコインはハッシュレート低下とマイニングコスト上昇による下押し圧力を受けつつも、JPモルガンは長期理論価格を約17万ドルと試算し、今後6〜12カ月に大幅な上昇余地があると分析しています。同レポートは、現局面のカギをマイナーではなく、約65万BTCを保有するStrategy(旧MicroStrategy)のバランスシートに置き、企業価値÷保有BTC(mNAV)が1.0を維持できるかが焦点と指摘しています。

同レポートによれば、mNAVは現状約1.13と、まだ1.0を上回っており、会社が約14.4億ドルの現金を持つことから、向こう2年の利払い・配当はBTC売却なしでも賄えるとされます。一方で、2026-01-15のMSCI指数からの除外が確定し、受動的ファンドから最大88億ドル規模の売りが出るシナリオでは、同社がBTC売却に追い込まれる「負のスパイラル」もリスクとして明示されています。

デリバティブ・ETFフローが映す慎重姿勢

11〜12月にかけてビットコイン先物の未決済建玉は減少基調が続き、10-10の急激な清算フラッシュ後にレバレッジが一段と縮小していることが報告されています。オプション市場では、BTCが8万ドル割れを試す局面でプット需要が優勢となり、その後の反発局面でようやくコールへのリスクテイクが戻るなど、「追随よりヘッジ」を優先する姿勢が鮮明です。

現物ETFでも、今年1月に設定されたIBITからの資金流出が6週連続となり、過去5週間の累計解約額は27億ドル超とされています。一方、永続先物の資金調達率は概ね中立〜わずかにプラス圏にとどまり、過度なショート偏重でもなければ、バブル的なロング偏重でもない、フラットなポジション構成となっています。これは、短期的な方向感の欠如と同時に、「レバレッジが一巡した後の落ち着いた市場」に近づきつつあるシグナルとも読めます。

オンチェーン指標とETH供給動向

オンチェーンでは、CryptoQuantが示すSOPR比率やGlassnodeの活動度指標が、長期・短期保有者の利確圧力が一巡しつつあることを示しており、価格調整の裏側で需給の「リセット」が進行していると解釈できます。ETHについては、CEX保有残高が過去最低の8.8%まで低下し、残高は2024年半ば以降約43%減少したとされています。ステーキング・L2活動・DAT保有など「売りに出にくい領域」への移行が進む中で、将来的な供給タイト化が価格弾性を高める可能性にも留意が必要です。

規制・マクロ・インフラ:FOMCと各国戦略

今週はFOMCの利下げ判断、韓国の「無過失賠償」構想、中国のブロックチェーン推進方針、フランス大手銀行の売買解禁が重なり、マクロと規制が同時に市場を動かす局面となっています。

12月8〜14日のマクロ・イベント

12月8〜14日の一週間では、Stable主網ローンチや主要トークンの大口アンロックに加え、12-10のFOMCが最大の焦点となります。PCEや雇用指標が利下げ観測を後押しする中、市場は2026年にかけ63bp程度の緩和を織り込みつつあり、FOMCのドットチャートとパウエル議長会見が「利下げペースの上限」を示すかが注目点です。

同週は、Aptos約1,131万APT(約1,930万ドル相当)、Linea約13.8億LINEA(約1,110万ドル相当)などの解禁も予定され、個別銘柄レベルではフロー主導のボラティリティ拡大に備える必要があります。

中国・韓国・フランスの政策と採用

中国では、中央網信弁(サイバー空間管理当局)のトップが、AI・ブロックチェーンなど「数智技術」のイノベーション加速と、ブロックチェーン共通サービス能力の向上を方針として示しました。これは、トークン取引とは切り離しつつ、基盤技術としてのブロックチェーンを国家インフラに組み込む方向性を再確認するものです。

韓国では、第二段階の暗号資産立法において、ハッキングやシステム障害時に事業者へ「無過失損害賠償責任」を課す案が検討されており、売上高の最大3%までの罰金適用も議論されています。これにより、主要取引所は金融機関並みのシステムリスク管理とサイバー保険・自己資本バッファの強化を迫られる可能性があります。

一方、フランス第二の銀行グループBPCEは、12-08から約3,500万人のリテール顧客向けにBTC・ETH・SOL・USDCなどの売買機能をアプリに統合すると発表しました。欧州銀行が自社アプリ内に暗号資産取引を組み込む動きは、MiCA施行後の「規制されたチャネル」へのトレード移行を象徴する出来事と言えます。

長期テーマ:投機資産から「世界データベース」へ

PANews寄稿の長文分析では、加密資産は価格投機の対象から、インターネットとデジタル金融の「底層インフラ」へと役割を変えつつあると整理されています。年間で約9兆ドル規模に達したステーブルコイン取引量は、VisaやPayPalに匹敵しつつあり、ブロックチェーンは通貨そのものより「安全で相互運用可能な伝送レイヤー」として価値が顕在化している、という視点です。

同稿は、将来のLayer1を「世界コンピュータ」ではなく「世界データベース」と位置づけ、各アプリケーションは自前のロジックを維持しつつ、最終的なトランザクションデータだけを共通のL1に書き込む構造を想定します。検証者はロジック実行ではなくデータ利用可能性と順序整合性を担保し、Layer2やアプリチェーンが自由に増えてもスケール可能な設計です。

この文脈では、Stable主網のような「ステーブルコイン特化L1」や、クロスチェーンでのインタラクションを前提としたプロジェクトは、単発の値動き以上に、中長期的なインフラストーリーの一部として位置づけておく必要があります。

企業・プロジェクト動向:GPU銘柄、レンディング、ステーブル

企業・プロジェクトでは、「中国版NVIDIA」と呼ばれるGPU企業のスキャンダル、Solanaレンディング内紛、USDT供給の歴史的高水準、NVIDIA CEOの発言などが、リスクと長期ストーリーの両面を象徴しています。

「国产GPU第一股」と1500BTC債務問題

上海の科創板に「国产GPU第一股」として上場した摩尔线程は、12-05の上場初日に公募価格114.28元に対して650元で寄付き、初値騰落率約469%、時価総額3,000億元超と報じられました。しかし、聯合創始者の李豊氏を巡っては、2017年の「マ勒戈币(MGD)」ICOで5,000ETHを調達し、チーム構成の誇張や2100年までの長期ロックなどが批判された経緯が再び注目されています。

さらに、OKX創業者Star氏からの1500BTC借入を巡る債務紛争も再燃しました。2014-12-17締結、2017-12-31まで延長された借幣契約に基づき、Star氏側は2018年時点で約8,000万元(約1,000万ドル)相当のBTCが返済されていないと主張し、現在価値は約1.35億ドルに達するとされています。Star氏はX上で「負の歴史の影に留まるべきではなく、債務は法律に委ねる」とコメントし、紛争の解決を司法に委ねる姿勢を示しました。

この事案は、伝統株式市場で高評価を受けるテック企業の創業者と、過去のトークン発行・借幣契約が複雑に絡む典型例であり、トークン投資家・株式投資家双方にとって「オフチェーンの法的リスク」を改めて意識させる材料となっています。

NVIDIA CEOの「余剰エネルギー」発言

NVIDIAの黄仁勲CEOは、市場報道によれば「ビットコインは余剰エネルギーを吸収し、新しい通貨としてそれを蓄える存在であり、どこへでも持ち運べる」とコメントしました。GPU需要の中核であるAIと、エネルギー集約的なPoWマイニングを並行して語るこの発言は、ビットコインを単なる投機対象ではなく、エネルギー金融インフラの一部として位置づける視点を示唆しています。

もっとも、マイニングコストが約9万ドル前後と試算される現状では、電力価格の上昇とBTC価格の調整が同時に進むと、高コストマイナーの退出とハッシュレート低下を通じてネットワーク・セキュリティに影響を与え得る点にも留意が必要です。

USDT1900億枚、Stable主網、Solanaレンディング内紛

Coingecko経由のデータを引用した報道によれば、USDT総供給は12-07時点で191,099,037,578枚、流通供給185,632,100,913枚、市場価値約185,929,020,830ドルとなり、いずれも過去最高を更新しました。ドル建て流動性が単一発行体に集中する構図が一段と強まり、テザー社の準備資産の透明性・規制対応は、個別発行体を超えたシステミックリスクの観点からも引き続きウォッチが必要です。

その一方で、ステーブルコイン特化の公的チェーンを標榜するStable主網が12-08 21:00(UTC+8)にローンチ予定であり、アプリケーションと法定通貨建て決済をシームレスにつなげるインフラとしての期待も高まっています。Solanaエコシステムでは、Jupiter Lendが「ゼロ伝染リスク」を謳ったプロモーションを修正し、Kaminoとの間でリスク・ディスクロージャーを巡る対立が表面化しましたが、Solana財団のLily Liu氏は「借貸市場はまだ約50億ドル規模に過ぎず、相互攻撃より市場拡大に集中すべき」と訴えています。

これらの動きは、ステーブルコインとレンディングが暗号資産市場における「クレジット・マネー」の役割を担いつつあること、そしてその信頼性がプロトコル設計だけでなく開示とガバナンスに強く依存していることを示しています。

取引所・ガバナンス:Binance内部調査とリスク管理

取引所ガバナンスでは、上場銘柄に関する内部情報の扱いと、SNS発信のタイミングを巡る疑義が、主要取引所のコンプライアンス体制に改めて焦点を当てています。

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上場ツイートと発行タイミングの疑義

加密コミュニティからは、Binance公式アカウントの投稿時刻が「30分」であるのに対し、トークンの上場・発行時刻が「29分」と1分早かったにもかかわらず、正しいロゴ画像を添付していた点が指摘されました。これに対しBinanceは「関連するフィードバックは認識しており、内部調査を開始した」「上場やその他の汚職に関してはゼロトレランス」とコメントし、調査結果はコミュニティに共有するとしています。

暗号資産市場では、取引所上場がしばしば短期的な価格ドライバーとなるため、上場インサイダー情報とフロントラン取引の有無は、規制当局だけでなく機関投資家にとっても重要なチェックポイントです。こうした疑義案件に対して、どれだけ迅速かつ透明性の高い調査・再発防止策が示されるかは、取引所ごとの「ガバナンス・プレミアム」を分ける要因と言えます。

投資家が確認すべき取引所リスク

韓国で議論されている無過失賠償責任や、ヨーロッパにおけるMiCA適合ライセンスなど、規制面のハードルは今後も上がっていきますが、個別投資家レベルでは以下のような観点で取引所を評価することが現実的です。

  • 上場・デリスティングの基準やプロセスが明文化され、第三者に検証可能か
  • 準備金証明(PoR)が独立監査付きで定期的に開示されているか
  • デリバティブ取引や自己勘定取引のリスク管理方針が説明されているか
  • 重大インシデント発生時の報告・補償方針が、事前にルールとして提示されているか

特に、今回のようなSNS発信と上場タイミングに関する疑義は、オンチェーンデータや板の動きを通じて市場が相対的にチェックしやすい領域であり、投資家側も継続的なモニタリングを行う余地があります。

イベントと今後1週間の注目スケジュール

今週は、マクロ・規制・プロジェクトイベントが日ごとに積み上がる形となっており、短期トレードだけでなく、流動性環境の変化という観点からの整理が重要です。

12-08はStable主網ローンチ(21:00, UTC+8)、BPCEによるBTC・ETH等の売買機能解禁、Solana系プロジェクトのトークンセール再開など、ステーブル・L1・CeFiが交差する1日となります。12-09にはBounceBitの約2,993万BB解禁、Linea空投申請締切、Polygon(POL)ネットワークアップグレードに伴う入出金停止が予定されています。

12-10未明にはFOMC利下げ判断とパウエル議長会見が控え、直後にLinea約13.8億LINEAの大規模アンロックやBinance先物の複数ペア終了が続くため、ボラティリティと出来高の急増が想定されます。12-11のTerra創業者Do Kwon被告の量刑(最高25年)の行方は、旧LUNA/UST崩壊後の法的精算プロセスの節目となり、米韓当局のスタンスを示す象徴的なイベントです。

12-12にはAptos約1,131万APT解禁と、xAIの150億ドル規模Eラウンド最終締切が重なり、「AI×暗号資産」領域への資本配分も改めて問われます。具体的なトレード戦略は読者のリスク許容度と投資方針に依存しますが、イベントカレンダーを事前に整理し、レバレッジとポジションサイズを調整しておくことが、今週の基本的なリスク管理の出発点となるでしょう。

▽ FAQ

Q. JPモルガンの「ビットコイン17万ドル」予測は何に基づいていますか?
A. 2025-12-04付レポートで、金との比率とマイニングコストからBTC理論価格17万ドルを算出し、6〜12カ月の上昇余地を示しています。

Q. USDT供給が1900億枚を超えたことは、市場にどんな影響がありますか?
A. 2025-12-07時点でUSDT総発行約1,910億枚・時価総額約1,859億ドルとなり、ドル流動性がテザー社に集中し、発行体リスクと規制対応の重要性が一段と高まっています。

Q. 「国产GPU第一股」摩尔线程と1500BTC債務問題の投資家への含意は?
A. 2014〜2017年の借幣契約を巡る1500BTC(現在約1.35億ドル)紛争は、上場企業創業者と過去のトークン案件の法的リスクが株価や評判に波及し得ることを示し、ガバナンス評価の必要性を浮き彫りにしています。

Q. 12月8日週で特に注目すべきイベントは何でしょうか?
A. 12-08のStable主網ローンチとBPCE売買解禁、12-10のFOMC利下げ判断、12-11のDo Kwon量刑、12-12のAptos約1,131万APTアンロックが、価格・流動性・規制認識を同時に揺さぶる主要イベントになります。

■ ニュース解説

ビットコインはETFからの資金流出とデリバティブ縮小で「2022年初頭の弱気局面」に似た構造を示しつつ、JPモルガンの17万ドル理論価格やUSDT供給1900億枚、ETH取引所残高の歴史的低水準など、中長期的には需給がタイト化し得る要素も併存しているため、単純な弱気相場入りとは断定できない局面にあります。一方で、Moore Threadsの1500BTC紛争やBinance上場プロセスへの疑義、韓国の無過失賠償構想などは、暗号資産ビジネスが従来金融並みのガバナンスと法的責任を求められる段階に入ったことを示しており、FOMCやDo Kwon量刑とあわせて「リスクプレミアムの再価格付け」が進む可能性があります。

投資家の視点:短期的には、12-10のFOMC・主要トークンアンロック・レンディングや取引所を巡るニュースヘッドラインがボラティリティを高めるため、レバレッジと証拠金管理を優先しつつ、イベント前後でのギャップリスクを認識することが重要です。中期的には、
①マイニングコストとStrategyのmNAV推移、
②USDT・他ステーブルの供給と発行体リスク、
③ETHや主要L1の取引所残高とオンチェーンロック比率、
④主要国の規制・銀行による採用状況といった指標をモニターし、価格だけでなく「構造的な需給」と「制度的受容」の変化を見極めることが、ポジション構築やリバランスの前提条件になります。
なお、本稿で触れた見解や数値はいずれも一般的な情報であり、特定銘柄やサービスを推奨するものではなく、個々の投資判断にはポートフォリオ全体のリスク許容度や投資期間に応じた慎重な検討が不可欠です。

※本稿は一般的な情報提供を目的としており、特定銘柄・金融商品の売買を推奨するものではなく、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。

(参考:PANews