ブータンのビットコイン保有、GDPの40%に到達

▽ 要約

エネルギー戦略:水力発電で12,000BTC採掘、環境負荷は小
マーケット影響:保有額11~13億ドル、GDP比40%に匹敵
政策スタンス:政府系DHIが金替わりの資産と公言
リスク指摘:価格急落なら財政赤字拡大の懸念

ブータン ビットコイン GDP40%――ヒマラヤの小国が暗号資産で歳入を押し上げています。
「水力発電の余剰電力でビットコインを掘る」――この戦略により、政府系ファンドのビットコイン保有額が国内総生産の4割に達したとWSJ(2025年6月27日)が報じました。
「なぜ国家が仮想通貨を貯め込むのか」という疑問に、本記事は結論として「再生可能エネルギー活用による外貨獲得策」という視点を提示します。読み進めれば、経済メリットと潜在リスクを体系的に理解できるはずです。

経緯と保有状況

2020年からの自国内採掘で約12,000BTCを蓄積した。
ブータン政府系持株会社Druk Holding & Investments(DHI)は、2020年以降に建設した複数の水力発電併設マイニング施設でビットコインを産出。追跡会社Arkhamは保有量を11,600〜12,200BTCと推定し、時価は11〜13億ドルに上る。

再生可能エネルギーを活用

水力発電の余剰電力が採掘コストを大幅に抑制。
ブータンは河川落差を利用した水力発電がGDPの主要源。夏季の余剰分をマイニングに振り向けることで、輸出より高い収益を実現している。

取得手段は採掘中心

国外購入ではなく「掘って保有」が基本方針。
DHIのCEOは「ビットコインを金のような価値貯蔵手段とみなす」と説明。価格変動に左右されず長期保有を志向する。

経済メリット

国家収入と公務員給与の財源を拡充。
保有ビットコインの一部売却で2023年に1億ドルを捻出し、2年間で公務員給与を65%引き上げた。輸電インフラや教育分野への再投資も進む。

外貨準備の多様化

ドル依存度の軽減と国際送金手数料の削減が狙い。
少額貿易国であるブータンにとって、分散型資産による準備は財政安全弁となる。

潜在リスク

価格急落時に財政難へ直結。
ビットコインは2022年に最大75%下落した前例があり、国家収入の不安定化が指摘される。

価格ボラティリティ

BTC依存度が高まるほど歳入変動も激化。
GDP比40%という規模はエルサルバドルを上回り、値崩れ時の影響は相対的に大きい。

規制・透明性

採掘場所や収益配分は「国家機密」とされ、市民への説明不足が課題。
中央銀行RMAは暗号資産取引に慎重姿勢を崩さず、金融システムへの波及を監視している。

今後の展望

500MW級の新施設で採掘能力をさらに拡大予定。
DHIは海外企業Bitdeerと提携し、2025年以降も施設拡張を計画。収益拡大と同時に、電力需給調整の巧拙が成否を分ける見通しだ。

▽ FAQ

Q. ブータンは何BTCを保有?
A. Arkham推計で11,600〜12,200BTC、時価約11〜13億ドル。
Q. 取得方法は?
A. ほぼ全量を水力発電を使った自国内採掘で獲得。
Q. GDP比は?
A. 約30~40%で、国家比率は世界トップ級。
Q. 主なリスクは?
A. ビットコイン急落による歳入減と透明性不足。

■ ニュース解説

WSJはブータンのビットコイン戦略を「再生可能エネルギーの新たな活用モデル」と評価する一方、財政が価格に連動する脆弱性を懸念しています。小国が大規模採掘に踏み切る背景には、輸出電力より高い収益とデジタル経済への布石があります。とはいえ、暗号資産のボラティリティは依然高く、政府は透明性とリスク管理の両立を迫られます。

(出典:WSJ)