▽ 要約
サービス再開 Webullが米国で再開し50銘柄超に対応
利子規制 GENIUS法の抜け穴をBPI等が是正要請
機関投資 13FでETF経由のエクスポージャー増加
相場急変 8/24に清算約5.5億ドルの急落発生
投資家が知りたいのは「何が変わり、次に何を見るか」だ。本稿は2025年8月の暗号資産最新動向を、取引再開、規制、機関マネー、相場、政策、企業財務の6視点で整理し、2025年8月の暗号資産最新動向の全体像と次の着眼点を解説する。
取引サービス再編—Webullが米国で再開
再統合によりアプリ内で暗号資産と株・オプションを一体提供できるようになったため、新規流入のオンランプと手数料競争が強まる。
2023年に分離した暗号資産機能を再び本体アプリへ統合し、Webullは米国で取引を再開した。提供はBTC・ETH・SOLなど50銘柄超に及び、ブラジルでの再開に続く米国復帰で主要ブローカー間の獲得競争が再点火した。UIの一本化で口座開設から取引までの摩擦が低減し、既存株式ユーザーのクロスセルが期待される。
再開の経緯と提供範囲
IPO/SPAC準備と規制対応のため2023年に停止していたが、手続き整理と海外での再開実績を踏まえ米国でも再導入した。
資本市場対応で分離していたWebull Payを再統合し、24時間取引と入出金動線を見直した。取扱銘柄はメガキャップ中心で、ボラティリティと流動性を両立しやすい構成だ。
期待とリスク
競合比でUI回遊と手数料が強みとなる一方、相場急変時の約定品質やマーケットデータ遅延、アフィリエイト誘導の透明性確保が引き続き問われる。
ブローカーとしての最重要KPIは有効口座とアクティブ率であり、継続的な教育コンテンツとスプレッドの管理が顧客定着を左右する。
規制動向—GENIUS法と「利子」論争
発行者の利子支払いは禁じられたため、取次・提携先による報酬の扱いが焦点となり、預金流出リスクの議論が再燃した。
7月成立のGENIUS法は決済型ステーブルコインの枠組みを定め、発行者の利子・リワード提供を禁止した。他方で、取引所や関連事業者経由の“間接的な利子”を巡り、米銀行団体(BPI、ABA等)が抜け穴是正を要請。USDC保有の4.1%報酬、PYUSDの年3.7%報酬などが論点化し、銀行預金からの資金シフト懸念が浮上している。
銀行団体の主張
銀行は預金を貸出に循環させるため、同等規制なしに利回り機能を持つステーブルコインが拡大すると信用供給が細るため、利子禁止の適用先拡大を求める。
要請は、発行者のみならずブローカー、取次、関連会社にまで適用を広げる方向で、消費者保護と市場インセンティブの歪み是正を狙う。
ユーザー報酬の線引き
コインベースのUSDC4.1%やPayPalのPYUSD3.7%はユーザー利便を高める一方、預金類似の競争を誘発するため、情報開示・原資・リスク分担の明確化が不可欠となる。
報酬は“利子”か“ロイヤルティ”かの区分が争点で、資金流出・決済安定性・国債需要とのバランスを政策当局が詰める局面に入った。
機関マネー—ETF経由のエクスポージャー増
13F開示では複数の機関がスポットBTC ETFなどの保有を拡大したため、“直接保有”でなくとも価格弾力を高める資金が脈動している。
Q2の提出書類から、ヘッジファンドや大手金融機関のETFエクスポージャー増が読み取れる。ゴールドマン・サックスを含む伝統金融はETF・関連株経由の間接保有を積み増し、マーケットメイクやベーシストレードの需要も続く。一方で、直接のバランスシート保有と混同しない理解が必要だ。
投資家スタンスの言説
ティム・ドレイパー氏は「革新は最終的にビットコインへ集約する」と述べ、資本と開発者の重力がBTCに働くと指摘した。
レイヤーやユースケースの多様化が続くなかでも、価値保全資産としてのBTCが資本配分の中心になり続けるという見方が広がる。
相場—8/24フラッシュクラッシュの教訓
鯨の売りで流動性の薄い時間帯に一段安となったため、強制清算が連鎖し短時間で約5.5億ドル規模のロングが吹き飛んだ。
8月24日(現地)にBTCは一時11万ドル割れ。先物主導の清算連鎖で板が空転し、直後に買い戻しでV字を試す定型パターンとなった。過去には2024年12月5日に約8.85億ドル規模の清算が発生しており、ポジション偏りが増幅装置となる構図は不変だ。
デリバティブの管理
資金調達率・未決済建玉・IVスキューの監視に加え、プレ・アジア時間や週末の板厚を意識した証拠金設計が有効である。
清算閾値の分散(複数口座・複数レバレッジ)と現物・先物のヘッジ比率調整で“踏み幅”を抑える。
産業政策—米政府の企業出資シグナル
Intelへの9.9%出資が成立したため、重要産業への政府資本関与が強まり、他分野への横展開も示唆された。
取引は約89億ドルで実行され、米政権は同様の枠組み拡張に言及。Intelは国際売上比率の高さなど事業リスクをSEC提出書類で開示し、市場は国家資本の賛否と企業統治の均衡を見極める段階にある。
暗号資産セクターへの波及
直接の出資対象は半導体だが、国家的な資本政策の再解釈は、マイニングやインフラ、決済レールを担う暗号関連企業の制度的扱いに議論を呼ぶ。
当面は規制当局の市場構造審議(ステーブルコイン等)と連動して評価される公算が大きい。
企業トレジャリー—SequansのBTC積増し
仏SequansがATMで最大2億ドルの調達枠を設定したため、既存の3,072BTCに続きバランスシートのBTC化を進める計画が鮮明になった。
同社は7月に約3.84億ドルの資金調達を実施済みで、BTCを長期財務戦略の中核に位置づける。2030年までに累計10万BTC取得の目標も公表し、半導体企業としては異例の“ビットコイン型”財務を志向している。
手段と含意
ATM(At The Market)で市場環境を見極めながら希薄化を抑制しつつ取得を継続するため、価格変動と株主リターンの整合が試される。
企業のBTC保有はリスク開示・会計・内部統制が鍵で、日本企業にも開示のひな型を提供する可能性がある。
▽ FAQ
Q. Webullの再開で何が変わる?
A. 8/25に米国で取引復活、BTC・ETH・SOLなど50銘柄超をアプリ内で提供開始。
Q. GENIUS法の“利子”論争の争点は?
A. 発行者の利子禁止に対し、USDC4.1%・PYUSD3.7%など取次報酬が抜け穴と見なされる点。
Q. 8/24の清算規模は?
A. 約5.5億ドル規模でロングが中心、2024年12/5の約8.85億ドルとも比較される。
Q. 政府のIntel出資は今後広がる?
A. 9.9%取得後に他分野への拡大示唆があり、国家資本政策の射程が注目される。
Q. Sequansの保有BTCは?
A. 2025年7月時点で3,072BTC、8月に2億ドルATMを開始し積増しを計画。
■ ニュース解説
Webull再開とGENIUS法の利子論争が進む一方で、8/24のフラッシュクラッシュが過熱感を冷やし、政府のIntel出資は産業政策強化を示したため、市場は規制・資本・流動性の均衡探しに入った。
ブローカーの再参入でオンランプが増加し、利子相当の報酬に規制の網拡大が提案され、13FでETF経由の機関マネーも継続した。短期急落でリスクテイキング調整が進み、国家資本の企業関与が強化され、企業トレジャリーのBTC化も進展した。ドル金利低下観測とステーブルコイン制度化の前進を受け、現物・先物・ETF・ステーブルの循環による価格弾力と流動性の質が問われている。
投資家の視点:レバレッジの分散とストップ幅の再設計、ETF/現物/先物の配分最適化、ステーブル報酬の規約確認(原資・開示・課税)、政策イベント(規制案・公聴会・企業開示)の前後でリスク量を調整するのが一般的だ。
※本稿は投資助言ではありません。
(参考:PR Newswire,U.S. Treasury,Coinbase)