JPYC ステーブルコイン最新動向と制度改正

要約

JPYC転換:6月1日に1号電子決済手段へ移行、会計処理は監査人判断
発行モデル:銀行・資金移動・信託の3類型にFSA追加改正案が審議中
技術分岐:パブリック/コンソーシアム/ハイブリッド各型が共存し相互運用へ
実装例:ふるさと納税、エネルギー取引、地域決済など本番フェーズ
課題:流動性確保とクロスチェーン安全性、ライセンス簡素化がカギ

はじめに

JPYC ステーブルコインは実際にどこまで“使えるおカネ”になったのか?」— 改正資金決済法が全面施行されたいま、国内のデジタル円は規制・技術・ユースケースの三面で急速に具体化している。本稿では最新情報と公開ソースによるファクトチェックをもとに、政策とビジネスインパクトを整理する。

1. JPYC Prepaidが示す“電子決済手段元年”

2025年6月1日、JPYC Prepaidは前払式から1号電子決済手段へ正式転換した。改正法の要件を満たし、残高は信託保全に移管される。
会計区分は「現金及び現金同等物」との扱いが可能とJPYC社は説明するが、実務指針は未公表であり企業と監査人の個別判断が前提となる。

CoinMarketCapの流動性指標によれば24時間出来高はおよそ1,300 USDと小規模で、「数百ドル規模」という表現は妥当なレンジに収まる。

2. 三つの発行モデルと追加改正案

日本のステーブルコインは銀行型・資金移動業者型・信託型の三類型。裏付資産の分別管理や利用者保護策が詳細に規定され、6月施行の改正資金決済法で枠組みが確立した。追加改正案(2025年3月提出)は信託準備金の最大50%を国債・定期預金で運用可能にし、仲介ブローカー制度を創設する方針だ。

  • 銀行型:北國銀行「トチカ」は預金と1対1連動し、加盟店手数料は0.5%と国際的にも低水準。正式サービス開始は2023年9月で、2024年9月の“大規模ローンチ”を裏付ける公式発表はない。
  • 資金移動業者型:JPYCが将来的な信託型移行を検討中。
  • 信託型:三菱UFJ信託のProgmat Coinが代表例で、法改正後の主流になる見込み。

3. 技術アーキテクチャの分岐

3‑1 パブリック型

JPYCはEthereum/Polygon上に発行され、ガス代ゼロSDKでUXを改善。

3‑2 コンソーシアム型

Progmat CoinはR3 Cordaを採用。Gincoなど6社と共同でXJPY/XUSDを2024年夏ローンチ予定と発表し、国内取引所間決済の24時間化を目指す。

3‑3 ハイブリッド型

DCJPYネットワークは企業用“ビジネスゾーン”と銀行用“ファイナンシャルゾーン”をIBCで接続し、本番テストを経て8月商用稼働を計画している。

4. 国内ユースケースが本番フェーズへ

行政決済、B2B取引、地域振興の各分野で実装段階に入った。

分野事例と進捗ポイント
行政/ふるさと納税徳島県海陽町がJPYC受付を継続手数料削減
取引所間決済XJPY/XUSDが週末取引停止を解消即時清算
エネルギー証書DCJPYが再エネ証書売買で試験DVP決済
地域経済トチカが石川県の商店街で導入0.5%手数料

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5. 主な企業と競合構図

企業・団体最新トピック立ち位置
JPYC社1号電子決済手段化・信託型移行準備民間ハブ
三菱UFJ信託+ProgmatXJPY/XUSD発行、Project Pax連携大手牽引
ディーカレットDCPDCJPY 8月商用稼働テスト銀行連合
SBI VCトレード/Circle3月4日にUSDC取扱開始、国内初ライセンス海外勢ゲートウェイ

USDCの電子決済手段等取引業者登録により、外貨建ステーブルコインが日本市場に正式上場した。

6. 海外市場との相互運用と課題

世界のステーブルコイン時価総額約1,700億ドルに対し、円建て市場は数百億円と依然小規模。USDC参入とProgmatの多通貨展開で流動性拡大が期待される一方、公的な流通額統計は未整備であり、特定銘柄のシェア比率(例:99%)は現時点で裏付けが得られていない。

今後の課題は ①流動性を生む“キラーユースケース”創出、②クロスチェーン安全性向上、③EPI‑TSPライセンス手続きの簡素化、④将来のCBDCとの機能分担に集約される。

▽ FAQ

Q. JPYC Prepaidは6月1日から何が変わる?
A. 改正法で1号電子決済手段へ転換し、残高は信託保全に移行します。会計上の扱いは監査人判断です。

Q. 日本で発行できる主体は?
A. 銀行、資金移動業者、信託会社の三類型に限定されます。

Q. トチカの加盟店手数料は?
A. 0.5%で、正式サービスは2023年9月に開始されました。

Q. XJPY/XUSDの狙いは?
A. 国内暗号資産取引所の週末停止をなくし、24時間資金決済を実現することです。

Q. DCJPYはステーブルコイン?
A. 預金トークンで電子決済手段には該当しません。

■ ニュース解説

改正資金決済法により「電子決済手段元年」を迎えた日本では、JPYCの転換とUSDC解禁、銀行連合のPax構想が重なり、ステーブルコインが本格的な社会実装局面に入った。今後2年でインフラ整備と規制緩和が並走し、実需拡大の臨界点を迎える見通しだ。

(出典:SBI VC Trade,Ledger Insights,MUFG Japan