▽ 要約
ステーブルコイン新時代:GENIUS ACT成立で米ドル裏付け型に連邦ルール
中国ビッグテック:Ant GroupがUSDCをグローバル決済網へ統合予定
DeFi躍進:Hyperliquid取引量がDEXシェア80%突破、HYPE買戻し達1 0億ドル
MEME発射台の賭け:Pump.funが40億ドル評価でICO、資金吸収懸念も
債権者の闘い:FTX中国勢が弁済保留に異議、受限管轄動議が波紋
「ステーブルコインは規制グレー」と言われた時代は終わるのか──7月10日、米上院がGenius Actを可決し、翌11日にはAnt GroupがUSDCを決済網に統合との報が飛び込んだ。市場は「ドル連動トークンがいよいよ覇権通貨になる」と期待を膨らませる一方、Pump.fun ICOやFTX債権問題などリスクシグナルも点滅。本稿では新ルール・新プレーヤー・新火種を俯瞰し、投資家が取るべき戦略を示す。
ステーブルコイン規制が正式発車
米Genius Act成立で“ドルのトークン化”が国家戦略化。
- 法案は1:1準備金・毎月監査を義務付け、USDC・USDT等の合法性を明確化
- 規制コスト増でも、規制プレミアムにより機関投資家の参入障壁が解消 → 今後3年で米ドルステーブルコイン流通額は2兆ドル規模へ。
Genius ActがDeFiに与える5つの追い風
- 流動性プールの米ドル化:USDC深度拡大でスリッページ低下
- RWA加速:米国債を裏付けとする利回り商品が合法化
- CEX/DEX両睨みのARB需要:コンプライアンス資金がオンチェーンへ
- レギュレーション・アービトラージ縮小:法執行リスクを価格に織込める
- 国債需要増で長期金利低下→BTC強気:マクロ面でも追い風
Ant Group×USDC──中国勢のゲームチェンジ
人民銀のCBDCとは補完関係、オフショア決済から浸透。
- Ant InternationalはUSDC米規制クリア後に接続を予定。
- 利点は①越境B2B決済手数料90%減、②T+3→10秒、③香港・UAEサンドボックスと接続。
- 想定シナリオ:東南アジアEC→供給者へUSDC支払い→Ant Groupウォレットで即時換金。
技術&地政学的ハードル
- 中国本土では暗号資産決済禁止。Antは香港SPVを通じ外循環を担う。
- 米国制裁リスク:合規USDC運用で政治リスクヘッジ。
Pump.fun ICO──40億ドルの光と影
巨大エアドロインセンティブでMEME市場“最後の踊り”の恐れ。
- ICO価格0.004 USDT、1500億枚売却で6億ドル調達 。
- 24%空投・20%チーム・13%投資家。2026年7月以降大量アンロック。
- 市場の声:競合LetsBonkに抜かれたプラットフォームのバリュエーション割高批判多数。
投資家チェックポイント
- FDV/手数料収入=40B/約0.7B=57倍(過大)
- アンロック前のCFD先物が上場→価格変動激化へ
- ICO不参加戦略:上場1週間待ち+分割エントリーが推奨
Hyperliquid爆進──DEX版BitMEXの誕生
L1型DEXが取引所支配モデルを刷新、HYPEは“リアルイールド銘柄”へ。
- Q2取引量6,215億ドル、DEX永続市場シェア80%(出典:ArkStream Capital)。
- 交易手数料4.5億ドルの97%をHYPE買戻し、援助基金残高2,550万枚(出典:同上)。
- 独自HyperBFTで100k tps、確定650ms。
今後の注目ポイント
- 規制視点:高レバレッジ提供とAML対応
- 競合環境:Aerodrome+Sei v2などの高速DEXが追随
- 投資妙味:助成基金の買戻し速度 > 累積インフレ率かをモニター
FTX中国債権──「受限司法管轄区」動議の衝撃
最大5%の債権が差し戻しリスク、7/15異議申し立て期限。
- FTX管財人が49カ国への暗号弁済回避を提案。中国・マカオ含む(出典:ウー說インタビュー)。
- 未弁済債権は計120億ドル、うち中華圏が約9%。
- 債権人は①弁護士経由で米破産裁判所へ反対書簡②売却(120–130%)の二択。
想定されるシナリオ
A. 動議棄却→秋に第3回弁済実行
B. 可決→中国債権人は法的異議 or 債権売却へ流れ、二次市場の流動性急増
▽ FAQ
Q. Genius Actがもたらす最大の影響は?
A. 米国で初めて連邦レベルのステーブルコイン枠組みが確立し、ドル建てステーブルコイン発行が正面から認可される点。市場規模拡大と米国債需要拡大が見込まれます。
Q. Ant GroupのUSDC統合は何が画期的?
A. 欧米以外の巨大決済網に米ドルステーブルコインが接続され、クロスボーダー決済コストが劇的に下がる可能性があります。
Q. Pump.fun ICOに参加する際の最大リスクは?
A. 40億ドルという高いバリュエーションと、チーム・投資家向けトークンが2026年以降に大量アンロックされることで生じる売り圧力です。
Q. Hyperliquid急成長の要因は?
A. 独自L1とHyperBFTによりDEXでCEX並みの高速取引体験を実現し、手数料収入の97%をHYPE買い戻しに充てる経済設計が投資家に評価されています。
Q. FTX中国債権人が直面する課題は?
A. 「受限司法管轄区」動議により、米国裁判所が中国など49 カ国への暗号資産直接弁済を保留しており、債権譲渡や法的異議申し立てが急務になっています。
■ ニュース解説
今回の鍵は**「ステーブルコインをめぐる二極化」だ。
米国はGenius Actでドルステーブルを国力の延長線に置き、中国はAnt Groupをオフショアに立てて外循環を狙う。並行して、ステーブルを燃料にする新興DEX(Hyperliquid)と高レバICO(Pump.fun)が流動性を吸収する構図だ。FTX問題も「法域格差」が根底。2025年下期は規制遵守×ハイイールド**に、「合法ステーブル→リアルイールド→次世代DEX」という資金循環が主軸になるだろう。
(出典:PA一線,Nancy 記事,ArkStream Capitalレポート)