7月11日──Genius Act可決とUSDC拡大でステーブルコインが覇権フェーズへ

要約

ステーブルコイン新時代GENIUS ACT成立で米ドル裏付け型に連邦ルール 
中国ビッグテックAnt GroupがUSDCをグローバル決済網へ統合予定 
DeFi躍進Hyperliquid取引量がDEXシェア80%突破、HYPE買戻し達1 0億ドル 
MEME発射台の賭けPump.funが40億ドル評価でICO、資金吸収懸念も 
債権者の闘いFTX中国勢が弁済保留に異議、受限管轄動議が波紋 

「ステーブルコインは規制グレー」と言われた時代は終わるのか──7月10日、米上院がGenius Actを可決し、翌11日にはAnt GroupがUSDCを決済網に統合との報が飛び込んだ。市場は「ドル連動トークンがいよいよ覇権通貨になる」と期待を膨らませる一方、Pump.fun ICOやFTX債権問題などリスクシグナルも点滅。本稿では新ルール・新プレーヤー・新火種を俯瞰し、投資家が取るべき戦略を示す。

ステーブルコイン規制が正式発車

米Genius Act成立で“ドルのトークン化”が国家戦略化。

  • 法案は1:1準備金・毎月監査を義務付け、USDC・USDT等の合法性を明確化
  • 規制コスト増でも、規制プレミアムにより機関投資家の参入障壁が解消 → 今後3年で米ドルステーブルコイン流通額は2兆ドル規模へ。

Genius ActがDeFiに与える5つの追い風

  1. 流動性プールの米ドル化:USDC深度拡大でスリッページ低下
  2. RWA加速:米国債を裏付けとする利回り商品が合法化
  3. CEX/DEX両睨みのARB需要:コンプライアンス資金がオンチェーンへ
  4. レギュレーション・アービトラージ縮小:法執行リスクを価格に織込める
  5. 国債需要増で長期金利低下→BTC強気:マクロ面でも追い風

Ant Group×USDC──中国勢のゲームチェンジ

人民銀のCBDCとは補完関係、オフショア決済から浸透。

  • Ant InternationalはUSDC米規制クリア後に接続を予定。
  • 利点は①越境B2B決済手数料90%減、②T+3→10秒、③香港・UAEサンドボックスと接続。
  • 想定シナリオ:東南アジアEC→供給者へUSDC支払い→Ant Groupウォレットで即時換金。

技術&地政学的ハードル

  • 中国本土では暗号資産決済禁止。Antは香港SPVを通じ外循環を担う。
  • 米国制裁リスク:合規USDC運用で政治リスクヘッジ。

Pump.fun ICO──40億ドルの光と影

巨大エアドロインセンティブでMEME市場“最後の踊り”の恐れ。

  • ICO価格0.004 USDT、1500億枚売却で6億ドル調達 。
  • 24%空投・20%チーム・13%投資家。2026年7月以降大量アンロック。
  • 市場の声:競合LetsBonkに抜かれたプラットフォームのバリュエーション割高批判多数。

投資家チェックポイント

  1. FDV/手数料収入=40B/約0.7B=57倍(過大)
  2. アンロック前のCFD先物が上場→価格変動激化へ
  3. ICO不参加戦略:上場1週間待ち+分割エントリーが推奨

Hyperliquid爆進──DEX版BitMEXの誕生

L1型DEXが取引所支配モデルを刷新、HYPEは“リアルイールド銘柄”へ。

  • Q2取引量6,215億ドル、DEX永続市場シェア80%(出典:ArkStream Capital)。
  • 交易手数料4.5億ドルの97%をHYPE買戻し、援助基金残高2,550万枚(出典:同上)。
  • 独自HyperBFTで100k tps、確定650ms。

今後の注目ポイント

  • 規制視点:高レバレッジ提供とAML対応
  • 競合環境:Aerodrome+Sei v2などの高速DEXが追随
  • 投資妙味:助成基金の買戻し速度 > 累積インフレ率かをモニター

FTX中国債権──「受限司法管轄区」動議の衝撃

最大5%の債権が差し戻しリスク、7/15異議申し立て期限。

  • FTX管財人が49カ国への暗号弁済回避を提案。中国・マカオ含む(出典:ウー說インタビュー)。
  • 未弁済債権は計120億ドル、うち中華圏が約9%。
  • 債権人は①弁護士経由で米破産裁判所へ反対書簡②売却(120–130%)の二択。

想定されるシナリオ

A. 動議棄却→秋に第3回弁済実行
B. 可決→中国債権人は法的異議 or 債権売却へ流れ、二次市場の流動性急増

▽ FAQ

Q. Genius Actがもたらす最大の影響は?
A. 米国で初めて連邦レベルのステーブルコイン枠組みが確立し、ドル建てステーブルコイン発行が正面から認可される点。市場規模拡大と米国債需要拡大が見込まれます。

Q. Ant GroupのUSDC統合は何が画期的?
A. 欧米以外の巨大決済網に米ドルステーブルコインが接続され、クロスボーダー決済コストが劇的に下がる可能性があります。

Q. Pump.fun ICOに参加する際の最大リスクは?
A. 40億ドルという高いバリュエーションと、チーム・投資家向けトークンが2026年以降に大量アンロックされることで生じる売り圧力です。

Q. Hyperliquid急成長の要因は?
A. 独自L1とHyperBFTによりDEXでCEX並みの高速取引体験を実現し、手数料収入の97%をHYPE買い戻しに充てる経済設計が投資家に評価されています。

Q. FTX中国債権人が直面する課題は?
A. 「受限司法管轄区」動議により、米国裁判所が中国など49 カ国への暗号資産直接弁済を保留しており、債権譲渡や法的異議申し立てが急務になっています。

■ ニュース解説

今回の鍵は**「ステーブルコインをめぐる二極化」だ。
米国はGenius Actでドルステーブルを国力の延長線に置き、中国はAnt Groupをオフショアに立てて外循環を狙う。並行して、ステーブルを燃料にする新興DEX(Hyperliquid)と高レバICO(Pump.fun)が流動性を吸収する構図だ。FTX問題も「法域格差」が根底。2025年下期は
規制遵守×ハイイールド**に、「合法ステーブル→リアルイールド→次世代DEX」という資金循環が主軸になるだろう。

(出典:PA一線,Nancy 記事,ArkStream Capitalレポート