▽ 要約
買収計画 日本の上場企業買収を検討し、BTC蓄財の器化を狙う。
資金調達 2.2億ドル私募、約1,000万ドルはBTC払い。
上場プラン Gryphon合併でNasdaq「ABTC」上場へ。
参照基準 Strategy(旧MSTR)の62.9万BTC保有が参照点。
日本のどの上場企業が標的か、実現性はあるのか──American Bitcoinの日本企業買収計画は、設立半年での大型調達と上場準備を背景に「MicroStrategy型」トレジャリー戦略の輸出を狙う動きで、規制・会計の論点を踏まえれば実行可能性は十分にあると評価できる。
American Bitcoinの現況(合弁比率・資金・保有)
Hut 8が80%、American Data Centersが20%の合弁として2025年3月に発足し、7月までに2.2億ドルを私募で確保しつつ5月末時点で215BTCを保有したため、上場前から財務余力とBTC在庫を積み上げた。
設立スキームはHut 8のマイニング資産を切り出し、American BitcoinをHut 8の過半子会社として位置付ける構造で、Eric TrumpがCSOに就任した。資金はBTCの追加取得とASIC購入に充当され、私募の一部は投資家がBTCで払い込む形式を採用している。
Nasdaq上場と持分構成(Gryphon合併)
Gryphonとの株式交換合併により「ABTC」で上場を目指し、完了後はAmerican Bitcoin側が約98%を保有する見込みのため、実質的にABTCは同社の資本市場ビークルとなる。
合併に向けたGryphonの株主投票は2025年8月に開始され、特別総会での承認後に9月初旬のクローズが見込まれるスケジュール感だ。
トランプ親族の関与とガバナンス
Eric Trumpが戦略面を担い、Donald Trump Jr.は支援に回る構図のため、知名度と資金調達力をレバレッジしてBTC蓄財を進める体制が敷かれている。
日本上場企業の買収計画と狙い
上場前後のタイミングで日本(場合により香港)上場企業の買収可能性を探索しているため、バックドア的な市場アクセスとBTC蓄財の「器」を同時に得る戦略が想定される。
英FTは、日本や香港の公開企業買収を通じてMicroStrategy型の「ビットコイントレジャリー企業」を形成する構想を報じた。買収対象は未公表だが、買収先の上場ステータスを活用して株式市場から資金を呼び込み、当該企業BS上でBTCを戦略保有する設計が読み取れる。
MicroStrategy(Strategy)モデルの影響
Strategy(旧MicroStrategy)は2025年8月時点で62.89万BTC超を保有するため、企業がBTCを準備資産化するモデルのベンチマークとしてABTCの意思決定に大きく影響している。
このモデルは株価がBTCに高感応となる一方、資本市場からの機動的な資金調達を可能にし、企業価値の一部を「BTC純資産」によって説明する枠組みを作る。
進捗と実現性
ABTCは「拘束力ある取引は未締結」としつつも、地域を絞って選定・接触を進めているため、米国での上場・資本基盤整備完了後に案件を顕在化させるシナリオが現実的だ。
規制・会計・市場反応の要点
クロスボーダーM&Aは外為法審査や取引所規則の手続きを要するが、暗号資産関連だからといって一律に禁止されるわけではないため、対象業種・手続設計次第で実行は可能だ。
日本での審査・手続
外国企業による取得は外為法の事前届出が該当するケースがある一方、安全保障上の敏感分野でなければ一般的なTOBや第三者割当の枠組みで成立し得る。買収後の目的変更・社名変更には適時開示や株主総会の決議が求められる可能性がある。
会計基準の変化(公正価値)
米国では2025年から暗号資産の公正価値測定が適用され、評価益も損益に反映可能となったため、トレジャリー戦略の会計面ハードルは低下した。一方で損益の変動幅は増し、開示統制の重要性が高まる。
市場の先行事例(メタプラネット、ANAP)
メタプラネットは2025年8月時点で1.81万BTCを保有しアジア首位・世界上位に浮上したため、国内市場でも「BTCトレジャリー企業」の存在感が急拡大している。加えてANAPは日本初のBTC現物による第三者割当を実施し、約585BTCを取得するなど、制度面の実務例も整いつつある。
▽ FAQ
Q. American Bitcoinの合弁比率と設立日は?
A. Hut 8が80%、ADCが20%で2025年3月設立です(Eric TrumpはCSO)。
Q. 資金調達2.2億ドルの内訳は?
A. 私募で約2.2億ドル、うち約1,000万ドル相当はBTC払いで、BTCとASICに充当。
Q. 上場スキームはどうなる?
A. Gryphonとの合併でNasdaq「ABTC」に上場予定で、完了後はABTC側が約98%保有。
Q. 日本企業買収の狙いは?
A. Strategy型に倣い、買収先BSでBTCを大量保有し資本市場から資金を呼ぶため。
Q. 国内の先行事例は?
A. メタプラネットが1.81万BTC、ANAPはBTC現物増資で約585BTC取得を公表。
■ ニュース解説
ABTCが日本上場企業の買収検討を進めるので、MicroStrategy型のBTC蓄財モデルがアジア市場へ波及し、規制・会計対応次第で上場企業の資本政策が広がる可能性が高い。
投資家の視点:対象企業の本業収益・希薄化・BTC保有倍率(時価総額/保有BTC時価)の3点を継続点検し、評価がBTC純資産に過度に偏らないかを比較検証するのが無難。
※本稿は投資助言ではありません。
(参考:Hut 8,Gryphon IR)