▽ 要約
・AMAZONは2025年現在も暗号通貨直接決済を採用していない
・独自USDステーブルコインをWalmartと並行検討との報道(2025年6月)
・過去の人材募集・CEO発言から技術検証は継続
・競合のShopifyや楽天はすでに暗号資産決済を実装
・規制整備と手数料削減圧力が導入判断のカギ
Amazon 暗号通貨決済の現状
直接決済は未導入
2025年時点で、Amazon.comの商品購入にビットコインなどの暗号資産をそのまま使う手段は用意されていません。ユーザーはギフトカード経由など間接的な方法に頼る状況が続いています。
独自ステーブルコイン構想
ウォールストリートジャーナル(2025年6月)は、AmazonとWalmartがカード手数料を抑え即時決済を実現する目的で、自社ブランドの米ドル連動型ステーブルコインを検討していると報道しました。公式コメントは出ていないものの、法規制の整備が進めば実現性は高まるとみられています。
人材募集と過去発言
- 2021年:ブロックチェーン/デジタル通貨戦略リーダー職を募集し、暗号資産対応を模索。
- 2022年4月:CEO アンディ・ジャシー氏は「小売での暗号通貨決済は当面ない」と語りつつ、「NFT販売の可能性」を示唆しました。
- 2013年:バーチャル通貨「Amazon Coins」を導入済み。ただしブロックチェーンとは無関係。
競合他社の対応状況
企業 | 暗号資産決済 | ステーブルコイン施策 | 特記事項 |
---|---|---|---|
Shopify | 2013年から加盟店でBTC等受入、2022年Strike経由ライトニング対応 | 2025年USDC決済をグローバル展開予定 | L2「Base」を採用 |
eBay | 検討中(未導入) | ― | 2021年NFT取引解禁 |
Walmart | 未導入 | Amazon同様USDステーブルコイン報道 | 2021年に戦略担当ディレクターを募集 |
楽天 | 楽天ウォレット→楽天キャッシュ経由でBTC等使用可 | 楽天コイン構想あり | 日本国内で差別化 |
※PayPal(PYUSD発行)やTeslaなど他社にも採用例が広がりつつあります。
規制・市場環境
米国では2025年内にステーブルコイン法案(通称GENIUS)が成立する見通しです。法的枠組みが明確になれば、Amazonのような巨大ECが独自通貨を発行してもコンプライアンス・リスクを抑えやすくなります。一方でボラティリティの大きいビットコイン決済を直接採用するインセンティブは相対的に低いままです。
Amazonが導入を急がない理由
- 価格変動リスク:BTC等の相場変動が粗利を圧迫
- 決済コストの代替策:自社ステーブルコインなら手数料削減と顧客囲い込みが同時に可能
- 規模ゆえの慎重姿勢:世界最大級ECとして規制当局の監視が強い
- AWSビジネスとの棲み分け:クラウドでブロックチェーン基盤を提供しつつ、小売側は様子見
■ ニュース解説
暗号資産決済の本格導入は、**「外部通貨を受け入れるか/自社通貨で経済圏を構築するか」**の戦略選択と直結します。
- 独自ステーブルコインを採れば、為替変動を排しつつVisa・Mastercard手数料を削減できるため、粗利率が改善する余地があります。
- しかし、金融サービス企業に実質的に変貌することで、資本規制やAML/KYC強化など追加コストも避けられません。
- 競合ではShopifyがUSDC決済で一歩先行し、楽天が国内で暗号資産利便性を訴求しています。カード手数料圧力やポイント経済圏競争が高まる中、Amazonが**「慎重から加速へ」転じるタイミング**は、米国規制の最終確定とウォレット・インフラの社内実装状況に左右されるでしょう。