【要約】
・ABSTRACT L2 は Ethereum のスケーラビリティ課題を解決する ZK ロールアップ型レイヤー2 チェーン
・開発元は人気 NFT コレクション Pudgy Penguins の運営企業 Igloo
・zkSync / ZK Stack 採用により低コスト・高速決済と Ethereum 同等のセキュリティを両立
・メール/SNS ログイン対応の Abstract Global Wallet で Web2 レベルのユーザビリティ
・NFT マーケットやオンチェーンゲームを中心に コンシューマー向け dApp が続々参入
・メインネット公開後、取引数は好調だが TVL は慎重な立ち上がりで 長期的な利用者拡大を重視
・強力なコミュニティ基盤とゲーミフィケーション設計で 「Web3界のディズニー」 を目指す
Abstract L2とは──プロジェクトの背景
「Abstract L2」は、Pudgy Penguins の IP を保有する Igloo が 2025 年1 月28 日に一般公開した Ethereum 向けスケーリングソリューションです。目的は「高額ガス代・複雑な UX」という既存ブロックチェーンの障壁を取り払い、大衆が違和感なく暗号資産を利用できる環境を作ることにあります。2024 年の 1100 万ドル調達 と NFT 特化チェーン Frame 買収 により、同社は開発リソースとコンシューマー寄りのノウハウを獲得しました。
Pudgy Penguinsとの相乗効果
Pudgy Penguins は 8,888 体のペンギン NFT で形成されるコミュニティ IP です。フィジカル玩具の量販店展開やファン主導イベントによりブランド価値を拡大しており、その熱量が Abstract L2 の初期ユーザープールとして機能しています。今後リリース予定のカードゲーム「Vibes TCG」など公式コンテンツは Abstract 上に実装される計画で、IP ドリブンのトラフィック創出が期待されます。
zkSync(ZK Stack)採用の理由
● モジュール型 ZK ロールアップ
Matter Labs の ZK Stack はオープンソースで、ゼロ知識証明ロールアップを短期間で構築できるフレームワークです。Abstract L2 はこれを基盤とし、高速処理とイーサリアム並みのファイナリティを両立。さらに EigenDA を組み合わせてデータ可用性コストを削減しています。
● アカウント抽象化でUXを刷新
公式ウォレット Abstract Global Wallet はスマートコントラクトウォレット方式を採用。メール認証やパスキーで作成できる上、Paymaster 機能によりガス代を dApp 側が肩代わり可能です。秘密鍵はマルチパーティ分散保管され、ソーシャルリカバリーにも対応します。
NFTゲームとエンターテインメントへの親和性
Magic Eden がローンチパッド対応を表明し、複数の NFT コレクション(RUYUI/HotDogs など)が公開待機中です。ゲーム分野では Onchain Heroes やコミュニティ産ミーム NFT「Abstract Pepes」が稼働。ライブ配信サービス Abstract Live には公開24時間で 17,000 名超のクリエイターが登録しました。低手数料・高速決済が必須となるマイクロトランザクション領域こそ Abstract の強みが発揮される場面であり、Web2 エンタメのオンチェーン化を後押ししています。
市場の反応と主要指標
メインネット稼働当日のトランザクションは 約71万件 を記録。一方、TVL は約3,300万ドルと資金流入は抑制されました。プロジェクト側は「ユーザー体験重視」を掲げ、短期的な DeFi 流動性よりも アクティブユーザー数と手数料収入を KPI に設定しています。実際、稼働4 か月で累積手数料は業界 3 位に浮上し、利用頻度の高さが裏付けられました。
注目される理由
- ブランド力──Pudgy Penguins のファンベースを取り込みやすい
- ユーザビリティ──メール登録型ウォレットにより Web2 層を獲得
- エコシステム拡張性──ZK Stack と LayerZero でクロスチェーン展開が容易
- ゲーミフィケーション──XP 報酬が継続利用を促進
- 収益モデル──高頻度取引型アプリから早期に手数料収入を確保
これらが「コンシューマー向け No.1 チェーン」候補としての評価を押し上げています。
ニュース解説:Abstract L2はレイヤー2戦国時代の台風の目となるか
レイヤー2 業界では Optimistic 系(Arbitrum・Optimism)や他の ZK 系(Starknet・Scroll)が鎬を削っています。Abstract L2 は エンタメ特化という差別化軸で参入し、既に活発なトランザクションが実証されています。今後の鍵は、
- 開発者支援プログラムによる dApp 多様化
- ネイティブトークン発行後の インセンティブ設計
- 他チェーンとの 相互運用 UX の磨き込み
競合がプロトコル層の性能を競う一方で、Abstract L2 は「IP・コミュニティ・UX」を武器に 消費者目線の Web3 マスアダプションを狙っている点が特徴的です。市場が真に評価するのは 継続的なユーザー滞留であり、今後 1 年の実績が命運を握るでしょう。