a16zが率いる2000万ドルの資金調達とHallidayの概要

【要約】
・VC大手a16zがHallidayに2000万ドルを出資
・当初はゲーム向け「先買後付(Buy Now, Pay Later)」を提供
・現在はWeb3「ワークフロー自動化プロトコル(Workflow Protocol)」に注力
・「Halliday Payments」を中心に多チェーンの決済・橋渡しをサポート
・企業向けサービス(B2B)で成長機会を模索、計算能力に応じた料金設定を予定

米国時間2025年3月18日、Web3領域のワークフロー自動化プロトコル「Halliday」が、シリーズAラウンドで2000万ドルの資金を調達したと発表しました。リード投資家はa16z cryptoで、Avalanche Blizzard FundやCredibly Neutral、Alt Layerなどが参画し、複数のエンジェル投資家も出資しています。これにより、同社の累計調達額は2600万ドルに達しました。

Hallidayは2022年4月に米国サンフランシスコで設立され、現在CEOを務めるGriffin Dunaif氏とAkshay Malhotra氏が共同創業者です。Dunaif氏は2023年にスタンフォード大学コンピュータサイエンス学部を卒業し、在学中からブロックチェーンや暗号技術に強い関心を抱いていました。当初はゲーム内アイテム購入の「先買後付」機能を開発していましたが、最終的にはWeb3向けの商業インフラ構築へとシフトしています。

Web3時代に求められる「Workflow Protocol」とは

Hallidayが注力するのは、スマートコントラクト開発において必要な一連の手続きを自動化する「Workflow Protocol(ワークフロー・プロトコル)」です。ブロックチェーンの世界では、トランザクションや資産移転といった処理が複数チェーン間にまたがり複雑化することが多々あります。Hallidayはこうしたプロセスを統合・自動化し、開発者の負担を大幅に削減することを目指しています。

さらに同社は、AI(人工知能)の活用にも踏み込もうとしています。分散型ネットワーク上で安全なAIシステムを活かせるよう、ワークフロー・プロトコルがセキュリティ基盤として機能する構想です。これはコンプライアンス上の制約が厳しい分散型環境で、AIによる自動化を実現するうえで重要なポイントとなります。

主力製品「Halliday Payments」と多彩な機能

Hallidayが特に力を入れているのが、決済ソリューション「Halliday Payments」です。複数チェーンにまたがる資金の移動・管理を自動化し、以下のような機能を提供します。

  1. 法定通貨の入金(Onramps)
    法定通貨を暗号資産へと交換し、ERC-4337を活用したスマートアカウントで資産の管理や決済をスムーズに行えます。
  2. 中央集権型取引所(CEX)との連携
    世界中のCEXアカウントと接続し、ユーザーがCEX残高を直接活用してトークンを購入できるようにします。
  3. クロスチェーンブリッジ(Bridging)
    複数のブリッジや独自のブリッジを簡単に扱えるUIを用意し、チェーン間での資産移転を自動化します。
  4. クロスチェーン交換(Cross-Chain Swaps)
    どのチェーンやトークンでも、保有する暗号資産を他の資産へと交換しやすくし、ユーザーの利便性を高めます。
  5. 法定通貨への出金(Offramps)
    任意のトークンやブロックチェーンを対象に、法定通貨への換金をシームレスにサポートする仕組みを提供します。

2023年から始まった独自ワークフローシステムのテストには、DeFi KingdomsやAvalanche、ApeCoin、Metisなどのプロジェクトが参加し、実際に支払いの効率化を試験中です。今後はFrax FinanceやLens Chainとも協力を進める計画です。

ゲーム向け「先買後付」からWeb3インフラ構築へ

Hallidayは当初、ゲーマーがゲーム内アイテムを分割払いで即時利用できる「先買後付」ソリューションを提供していました。この仕組みでは、ユーザーが決済を完了するまでHallidayがデジタル資産をカストディしておき、滞納時には資産を差し戻すだけで信用機関への報告は行わないという利点がありました。

2022年には、このコンセプトをもとにa16z cryptoやHashed、a_capitalなどから600万ドルのシード資金を獲得しています。しかしDunaif氏は、ブロックチェーン業界がより大規模に機能するためには、単なるエンドユーザー向けの金融商品だけでなく「商流を支える基盤」の整備が不可欠であると考えるようになりました。その結果、Hallidayの重点領域は、分散化された商業インフラや自動化技術の研究開発へと拡大したのです。

L3対応や多チェーン構造へのアプローチ

Hallidayが描くビジョンの一例として、法定通貨をL3(Layer3)ネットワークへ入金する際の複雑なプロセスを挙げられます。従来、ユーザーがStripeなどのオンランプを使おうとしても、対応範囲が限られており、チェーンをまたぐ際には複数回の交換やブリッジを行う必要がありました。

同社のワークフロー・プロトコルによって、法定通貨オンランプ→Baseチェーン→ブリッジ→L3への転送など、複雑な手順を自動的に最適化します。利用しているブリッジがCCIPでもLayerZeroでも、あるいは別のソリューションでも、上位レイヤーとしてこれらを統合し、ユーザーにとってシンプルなマルチチェーン利用を可能にするのがHallidayの強みです。

Dunaif氏はこの技術を「より高次元の仮想マシン」になぞらえ、ワークフロー・プロトコルがチェーン固有の複雑性を抽象化して、プログラムとして扱えるようにすることを目指しています。

B2Bへのシフトと収益化モデル

HallidayがB2Bへの転換を図る背景には、暗号資産市場での個人ユーザー獲得コストの高さやチャネル確保の難しさが挙げられます。B2Bモデルであれば、企業が大規模にブロックチェーンを導入する際のインフラ需要を取り込むことが可能です。

今後の収益化については、利用企業が必要とする計算資源のリソース量に応じて課金する方式を計画しているとのことです。すでに11,000を超える事前登録が寄せられており、2025年の第2四半期には本格的なサービス提供を開始する予定です。

ゲーム企業からB2B特化へ――業界全体の潮流

暗号資産分野では多くのスタートアップが最初はC向けサービスを志向しながらも、獲得コストの高さからB向けビジネスへ転換するケースが増えています。a16zが支援する別のゲームプロジェクトでも、プレイヤー向けの大規模なマーケティングに苦戦し、最終的には企業向けのゲーム配信サービスへとシフトしました。

C向けユーザーをいかに取り込むかは依然として業界全体の課題であり、Hallidayのようにインフラ面からサポートする取り組みが一つの解決策として期待されています。企業がスムーズにブロックチェーン技術を導入できれば、結果的に暗号市場全体のユーザー体験を底上げし、さらなる普及のきっかけになる可能性があるからです。

以上が、a16zが主導したHallidayの2000万ドル調達と、同社が取り組むWeb3ワークフロー自動化への転換、そして今後の展望に関する主な事実と背景です。


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