2022年11月のNFT売上を再検証|30日集計と月次統計の違い

2022年12月1日の旧記事は、11月のNFT売上が約23%増えたと紹介しました。しかし、出典をたどると、中心となる数字は11月29日時点の直近30日間の集計でした。11月1日から30日までを締めた月次の確定値として扱うことはできません。

同じ時期には、異なる集計に基づく別の数字も報じられています。ここでは、当時の市場に何が起きたと読めるのかを、測定期間と指標をそろえて考えます。2026年9月27日の確認に基づく過去統計の読み直しであり、現在のNFT相場を予測する記事ではありません。

5億6,819万ドルは11月29日時点の30日集計

Bitcoin.com Newsが2022年11月29日に紹介したCryptoSlamの統計は、過去30日間のNFT売買額を5億6,819万ドル、比較対象の期間から22.37%増としています。図の説明にも、同日取得した30日間の統計であることが示されています。

この数字を「11月の売上確定値」と読むと、期間がずれます。直近30日間は、取得時点からさかのぼる移動期間です。暦月の11月とは開始日と終了日が同じとは限らず、29日時点なら月末までの取引もまだ含められません。日付のラベルを短くする過程で、統計の意味が変わってしまった例です。

また、22.37%という増加率を見出しで約23%とするより、本文では元の値と期間を残す方が検証しやすくなります。この集計は当時の観測結果として意味がありますが、一つの月全体の確定した評価を代表させるには不十分です。以降の数字も、どの時点の何日間を見ているかをそろえて扱います。

月が終わった後の報道と同じ数字にはならない

Forkastは2022年12月2日、CryptoSlamを引用し、11月のNFT売上が5億3,000万ドルを超え、10月に比べて13.2%増えたと報じました。同時に、取引件数は18.75%減ったとしています。月末前の30日集計にあった22.37%増、件数27.09%減とは異なる数字です。

これらの差を、そのまま誤報の証拠と考えることはできません。取得日時と期間が違い、集計後の更新なども影響し得るからです。ただし、差が全て何によって生じたかを今回再計算できたわけでもありません。当時の抽出データ一式がそろっていない状態で、差額を特定のコレクションやイベントの影響だと断定することは避けます。

整理すると、11月29日の資料は月末近くの30日間の観測、12月2日の記事は終了した11月の報告です。両方を並べて残すことで、古い記事の数字をどう読むべきかが分かります。どちらか都合のよい増加率だけを取り出して、同じ条件の統計として扱うべきではありません。

売買額が増え、件数が減ることは矛盾しない

売買額は、その期間に成立した取引の金額を足し合わせたものです。件数が減っていても、一件当たりの金額や取引される作品の構成が変われば、合計は増えます。そのため、金額の増加だけで市場参加が広がったと結論づけることはできません。

仮の例として、前の期間に100件で合計100万円、次の期間に50件で合計120万円の売買があったとします。合計額は20%増えていますが、件数は半分です。一件当たりの平均は上がるものの、全てのNFTの価格が上がったとは分かりません。高額作品が少数売れただけでも同じ組み合わせは起こり得ます。

購入者数の集計にも注意が必要です。多くのオンチェーン統計で識別できるのはアドレスであり、実際の人数との対応には限界があります。新しい買い手が増えたのか、同じ人が別のウォレットを使ったのかは、単純な件数だけでは区別できません。旧記事に並ぶ複数の指標は、一つの「人気」という言葉へまとめずに読む必要があります。

チェーン別の増減率と市場全体への寄与は違う

11月29日の報道では、Ethereum上のNFT売買額を4億4,355万ドルとし、Arbitrumなどでも増加があったと紹介しています。一方で、複数のチェーンでは減少も報じられました。同じNFTという分類でも、チェーンごとの動きがそろっていなかったことが分かります。

ただし、増加率の大きいチェーンが、全体の金額を最も押し上げたとは限りません。仮に100万円から150万円への増加なら50%ですが、1億円から1億1,000万円なら10%でも増加額は大きくなります。比率と金額を両方見なければ、集計全体に対する影響を取り違えます。

また、あるチェーンで売買額が増えたことから、そのチェーン上の全コレクションが活発になったとは推定できません。特定の大型販売や高額取引が集中する場合もあります。個々のコレクションを調べる段階では、チェーン全体の伸びを直接当てはめず、その作品の成立履歴と取引の分布を確認します。

BAYCのフロア価格の逆転は売買額とは別の観測

当時のBitcoin.com News記事は、Bored Ape Yacht Club(略称BAYC)のフロア価格がCryptoPunksを上回ったことにも触れています。これは、ある時点で出品されている作品のうち、最も低い提示価格を比べる観測です。一定期間の売買額や、全保有作品の評価額とは異なります。

フロア価格は出品の取り下げや追加でも変わります。最も安い作品が売れれば次の出品の価格が基準になりますが、安い出品が取り下げられただけでも表示値は上がり得ます。したがって、フロア価格の上昇を、その価格で大量の買い注文が入っている証拠にはできません。

さらに、ETH建ての比較と米ドル建ての比較には換算の違いがあります。NFTのETH価格が一定でも、ETH自体のドル価格が動けばドル換算額は変化します。2022年11月という暗号資産市場が大きく動いた時期を振り返るなら、単位と換算時点を省かないことが重要です。古い最安値を現在の相場として掲載することも避けます。

別の分析会社が逆方向の結果を出す場合もある

DappRadarの2022年11月の業界レポートは、NFT取引額を5億4,600万ドル、10月比17.47%減と説明しています。CryptoSlamを引用した月次報道とは、増減の方向まで違います。同じ時期のNFT市場を扱っていても、分析会社のデータを無条件に交換して使えないことを示す例です。

一般に、対象チェーンや市場、一次販売の扱い、疑わしい売買の除外、ドル換算の方法などが異なれば、集計結果も変わります。ただし、この二つの資料について差の全内訳を本稿で検証したわけではありません。考えられる違いを、確認済みの原因として列挙しないことも大切です。

比較を続けるなら、同じ提供元の連続した月次データを使い、途中でルールが変わっていないかを確認する方法が考えられます。複数の提供元を見る場合は、それぞれの条件を付けたまま並べます。最も伸びの大きい数字だけを選ぶと、市場の回復を実態以上に広く見せるおそれがあります。

2026年に過去の市場統計を再利用する際の注意

過去のNFT統計を資料に使う際は、金額だけでなく、観測日、期間、提供元、指標の名称をセットで記録します。ライブのランキングページへリンクするだけでは、そのページが後から更新され、当時の条件を読み手が再現できなくなることがあります。

今回の調査では、当時の報道本文と分析会社の過去レポートを参照しました。一方、2022年11月の全ての生データを取得して集計し直したものではありません。現在のサイトへアクセスできない場合も、その取得上の制約と、過去の報告に記された事実を分けて扱っています。

この月について言えるのは、月末近くの集計では金額の持ち直しが報じられた一方、件数減少や提供元による数値差もあったということです。「NFT市場が全面的に回復した」「全てのNFTの価値が上がった」と結論づける材料ではありません。元の期間と定義を残すことが、古い数字を現在の読者へ正確に伝えるための基本になります。

よくある質問

Q. 2022年11月の売上は23%増で確定したのですか。

A. 旧記事の中心となった22.37%増は11月29日時点の直近30日集計です。暦月として締めた11月の確定値とは区別します。

Q. 金額が増えたのに取引件数が減ることはありますか。

A. あります。高額な売買の割合が増えるなど、取引の構成が変われば合計額が増えても件数は減り得ます。全作品の値上がりを示すわけではありません。

Q. CryptoSlamとDappRadarの数字は直接比較できますか。

A. 対象範囲や集計方法をそろえる必要があります。本稿で挙げた2022年11月の資料は結果が異なるため、出典と条件を付けずに一つの系列にまとめるべきではありません。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。