2022年10月のNFT仮装売買は48%?推計の読み方を検証

2022年11月、Ethereum上のNFT取引について「10月の約48%が偽物だった」とする論考が紹介されました。ここで扱われていたのは、偽造されたNFTの割合ではなく、取引量を膨らませるウォッシュトレード、つまり仮装売買の推計です。

旧記事は取引金額、取引件数、利用アドレス数を混在させ、推計を確定した事実のように読める形にしていました。本稿では2022年当時の分析とその後の研究を確認し、数字が何を意味し、どこまで言えるかを整理します。2026年9月27日時点の市場全体に48%という割合を当てはめることはできません。

「偽物のNFT」と「疑わしい売買」は別の問題

ウォッシュトレードは、売り手と買い手を実質的に同じ主体が動かすなどして、独立した需要があるように見せる取引を指します。トークン自体が本物のコレクションに属していても、その売買が人気や流動性を正しく表しているとは限りません。

たとえば、ある作品が短時間で何度も売れ、履歴上の価格も上がっていれば、多くの人が欲しがっているように見えます。しかし、売買の両側を同じ人が管理していたなら、外部から新しい買い手が増えたとは言えません。取引はチェーンに記録されていても、市場での意味が違うという問題です。

これは、他人の作品を無断で複製することや、正規コレクションに似せた別のNFTを売ることとは区別します。「48%が偽物」という短い見出しでは、画像やトークンの真贋を調べた統計だと誤解されます。調べた対象が売買の挙動であることを、最初に明確にしておく必要があります。

当時の記事の48%は、そのまま再現できない

Anndy Lian氏が2022年11月23日に公表した論考は、Footprint Analyticsのフィルターを用いた分析に言及しています。ところが、論考で挙げられた総取引額7億5,800万ドルと、疑わしい取引額3億8,900万ドルを割ると、約51.3%になります。見出しの48%と一致しません。

この算術上の食い違いがある以上、「48%が実証された」と書き直すことはできません。集計時点や対象の違い、図表と本文の対応などを追加で確認しなければ、どの値を分子・分母として使ったのかが確定しないためです。逆に、本記事で計算した51.3%を正しい市場推計として採用することもしません。与えられた二つの数字の比率を示しただけです。

旧版にはコレクション全体の金額より、そのうち疑わしいとされた金額の方が大きく読める記述もありました。単位や丸め方、抽出条件が不明なままでは比較が成立しません。こうした数字を削らずに並べると、精密な分析を紹介しているようで、実際には読者が再計算できない状態になります。

取引額、件数、アドレス数では割合の意味が変わる

取引額の半分が疑わしいことと、取引の半分が疑わしいことは違います。仮に、通常の売買が100件で合計100万円、疑わしい売買が1件で100万円だったとします。この仮の集計では、疑わしい取引は金額の50%ですが、件数では約1%です。これは指標の違いを説明する例で、実市場の測定結果ではありません。

アドレス数も人の数とは一致しません。一人が複数のウォレットを使えば、買い手のアドレスが増えていても利用者が同じだけ増えたとは限らないからです。また、ある期間に売り手でも買い手でもあったアドレスを、どちらの集計にどう入れるかで比率が変わります。

Footprint Analyticsの2022年10月レポートは、コレクション別の疑わしい売買の割合について、件数ではなく金額の割合であると注意しています。数字を引用するときには、その注記まで残すことが重要です。同じレポート内でも対象チェーンや市場の範囲を確かめ、全NFT市場の統計へ広げすぎないようにします。

ブロックチェーン分析は何を手掛かりにするのか

Chainalysisは2022年2月の分析で、売り手自身、または売り手と関係する資金供給元から資金を受け取ったアドレスが、そのNFTを購入しているかに着目しました。単に高い価格が付いたかを見るだけでなく、買い手の購入資金がどこから来たかを追う方法です。

同社は繰り返しの頻度を条件にして対象を絞りつつ、自分で資金を供給したウォレットへの売却が、全て仮装売買の意図を持つとは100%断定できないことも述べています。分析である以上、疑いを強める特徴と、意図を確定する証拠を分けて読む必要があります。

別の手掛かりとしては、同じNFTの短時間での往復、相場から大きく離れた価格、特定の少数アドレスへの集中などが考えられます。ただし、どれか一つに当てはまったことだけで不正と決めつけるべきではありません。資産管理上の移動や特殊な取引条件の可能性を踏まえ、複数の特徴や資金のつながりを見るのが分析の出発点です。

取引報酬がある市場では、金額の増加を慎重に読む

NFT売買に報酬を付ける仕組みは、利用を促す一方で、作品そのものを欲しい人以外の取引を増やす可能性があります。報酬を得ることが主な目的になると、取引額が増えても、独立したコレクターの需要が同じだけ増えたとは限りません。

CoinGeckoが公表した2022年から2023年2月までの分析は、Footprint Analyticsのデータを用い、対象を六つの主要市場に限定しています。取引報酬と疑わしい取引の関係を論じていますが、その対象期間と対象市場を外して現在の全市場に適用することはできません。サービスごとの割合も、当時の仕組みと集計条件を含めて読む数字です。

報酬がある市場の取引をすべて除外するのも適切ではありません。通常の購入者も利用するためです。必要なのは、集計前の金額と疑わしい取引を除いた金額を分け、どのルールで除外したかを確認することです。取引報酬が存在するという事実と、その市場の全ての売買が不正であるという判断は別です。

除外後のランキングにも分析上の限界がある

ウォッシュトレードを除くと、見かけの売買額に引っ張られにくくなります。しかし、フィルターを通した数字が、疑いのない完全な真実になるわけではありません。検出できなかった取引も、通常の売買なのに除外された取引もあり得ます。

特に、相互に資金を直接送っていない関係者の取引や、複数のチェーン・取引所を経由する資金は、観察できる範囲だけでは関係を捉えにくい場合があります。一方、共通の送金元が取引所などである場合には、その一致だけから同一人物だと断定できません。公開チェーンで履歴が見えることと、最終的な所有者の関係が全て分かることは異なります。

そのため、ランキングを読む際は、フィルターの有無だけでなく、ルールの説明、対象市場、データの更新日を確認します。異なる提供元の数字が違う場合も、直ちに片方を誤りと決めず、調査範囲の差を調べます。同じ名前の「売上高」でも、計算方法がそろわなければ直接比較できません。

2026年にこの記事を読む人が使える確認方法

この2022年の論点は、現在のNFT市場を見る際にも、指標の定義を確認するという形で役立ちます。まず測定期間を固定し、チェーンと市場を特定します。次に、金額、件数、アドレス数を別々に見ることで、値の変化がどこから生じたのかを考えられます。

個別コレクションなら、上位数件の高額売買が全体を占めていないか、同じトークンが繰り返し動いていないか、独立した買い注文がどの程度あるかを確認します。最安出品価格が高いことも、その値段で継続的に売れることの証明にはなりません。成立履歴と現在の出品を区別して見る必要があります。

今回の調査は2026年全体の取引を新たに集計したものではありません。したがって、現在の仮装売買率を何%と結論づけることはしません。過去の強い見出しを繰り返すより、推計の分母、検出条件、未確認の範囲を残す方が、読者が数字を判断する助けになります。

よくある質問

Q. NFTの約48%が偽造品だったという意味ですか。

A. いいえ。元の論点は売買の挙動に関する仮装売買の推計です。作品やトークンの真贋を調べた比率ではありません。

Q. なぜ48%を確定値として残さないのですか。

A. 元の論考にある金額同士の比率が見出しと一致せず、集計範囲も再現できないためです。計算し直した比率も、市場の正しい推計だとは断定していません。

Q. 分析で疑わしいとされた取引は全て不正ですか。

A. フィルターは特定の挙動から対象を抽出する方法です。個別の意図や法的評価を全て確定するものではなく、誤判定や見逃しの可能性があります。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。