▽ 要約
大勢:2025年8月7日の大統領令で401(k)に代替資産拡大
指針:Bitwiseは「ETF超の資金流入」可能性を指摘
数字:401(k)は8.7兆ドル、3%配分なら約2,400億ドル
時期:実装は指針改定後、2025年末〜2026年以降が本線
なぜ今401(k)にビットコインかという疑問に対し、結論は「制度変更と市場規模の両輪」である。2025年8月の大統領令が導入障壁を下げ、8.7兆ドルの401(k)市場の一部が暗号資産へ配分されれば、401(k) ビットコイン 資金流入が現物ETFを上回る可能性は現実味を帯びる。本稿はその規模感、タイムライン、運用設計とリスクをに基づき解説いたします。
Bitwiseの指摘と足元の制度変更
401(k)は自動積立の継続資金で規模が大きいため、制度見直しを受け資金は「遅く長く」入りETF経由の能動的フローを凌駕し得る。
Bitwiseのリサーチは、401(k)全体の1〜3%が暗号資産に配分されるだけで数百億〜数千億ドルの新規需要が生じうるとする。特に3%なら約2,400億ドル、その6割がBTCに向かえば約1,440億ドル規模だ。背景には、8/7の大統領令が労働省(DOL)とSECに指針改定を命じ、2022年の消極姿勢を撤回済みのDOLが新ガイドを整備する流れがある。市場では発表直後にBTCが11万ドル台へ上昇し、期待を先取りする形となった。
401(k)市場の「量」とETF市場の「器」
401(k)は加入者の給与天引きが続くため資金は逓増しやすく、他方で実装はETF・信託など既存の「器」を通じて行われる。
スポットETFは上場以来、数ヶ月で1000億ドル規模へ拡大し、IBITの純資産は8月に860億ドル超。将来的に401(k)がTDF(ターゲットデートファンド)やマネージド口座の組入れ先としてETFを活用すれば、ETFは競合ではなく受け皿となり、長期・自動積立のフローがETF残高を押し上げる。
価格・供給面の含意
流通供給は取引所残高の低下で細っており、退職年金の継続買いは供給タイト化とボラティリティ低下の両面に作用する。
中央集権型取引所のBTC残高は2018年以来の低水準(約2.4〜2.5百万BTC)まで減少しているとされる。長期保有者の比率上昇と併せ、退職マネーの恒常的な買い需要は需給ひっ迫=価格押上げ圧力と、逆に下押し局面の下支えを同時にもたらし得る。
導入タイムラインと運用設計・責任
大統領令は即時施行ではないため、DOL・SECのルール形成とレコードキーパー/カストディ対応が必要となる。
8/7の大統領令はDOLに180日以内の見直し・安全配慮(セーフハーバー)検討を指示し、SECにも並行改定を促す。実務では、(1)TDFやホワイトラベルの資産配分ファンドにごく少量を組み入れる、(2)マネージド口座で専門家が比率管理、(3)評価・リバランス・日次流動性の運用ルール整備、(4)カストディの機関水準セキュリティと保険付保——が初期解として想定される。ERISA上の受託者責任をどう満たすか、訴訟リスクをどう抑えるかも要所だ。
想定リスクと反対論
高ボラ・手数料・バリュエーションの不透明性は、年金口座に馴染みにくいとの指摘が根強い。
批判派は、暗号資産やPEは費用対効果と評価の妥当性に課題があり、雇用主・運用会社には訴訟誘因があると警戒する。金利・景気局面によっては長期ロック資産が不利に働く側面もある。したがって初期導入は限定的配分で試行し、教育・開示・フィーの明確化を前提に段階拡大するのが現実的だ。
▽ FAQ
Q. 401(k)で暗号資産が解禁されたのはいつ?
A. 2025年8月7日。大統領令が労働省とSECに見直しを命じ、指針整備を通じ401(k)で暗号資産等の提供拡大を検討する。
Q. 401(k)の資産規模とビットコインの想定流入額は?
A. 2025年Q1でDC12.2兆ドル、401(k)8.7兆ドル。配分3%で約2,400億ドル、うち約6割がBTCなら約1,440億ドル。
Q. スポットETFの現況は?
A. iSharesのIBITは2025年8月時点で約861億ドルの純資産。ETF全体でも1000億ドル超の規模に拡大している。
Q. 本格的な資金流入はいつ頃始まる?
A. 指針策定・実装に時間がかかるため、早くても2025年末〜2026年以降に段階的な流入が見込まれる。
■ ニュース解説
大統領令で401(k)への代替資産導入が促され制度面が緩和されたため、8.7兆ドルの市場からの継続フローがETF経由でBTCに波及し得る一方で、受託者責任・手数料・評価の課題が残る。
投資家の視点:①比率はごく小さく段階導入、②ETF・TDF等の器を優先、③費用・保管・開示の確認、④下落局面も想定した積立・自動リバランスの徹底。
※本稿は投資助言ではありません。
(参考:The White House,U.S. Department of Labor,Investment Company Institute)