a16zの2025年暗号資産予測|AI・決済・DAOの論点を整理

AIが自分のウォレットを持ち、企業がステーブルコインで代金を受け取り、DAOが法的な枠組みを使って活動する。a16z cryptoが2024年12月4日に公表した翌年の展望には、こうした構想が並びました。ただし、これは2025年の成果を集計した報告ではなく、各執筆者が期待する開発や普及の方向を示したものです。

本記事では、当時紹介された14のテーマを七つの論点にまとめ直します。予測の内容に加え、英国政府の国債実験の発表とワイオミング州の法律を照合し、すでに存在した制度と、今後の実現を期待していた部分を分けて整理します。

AIウォレットと自律型チャットボットは何を変えるのか

最初の二つは、AIエージェントによる資産管理と、分散型自律チャットボットの構想です。前者はAIが指示に答えるだけでなく、暗号資産の送付などを実行する場面を想定しています。後者では、チャットボットが発信から収益を得て、その資金を管理する仕組みが描かれました。分散型の物理インフラやゲームへの参加も、当時の予測に含まれます。

ここで区別したいのは、AIが送金案を作る段階と、秘密鍵を使って実際に署名できる段階です。たとえば広告費の支払いを任せる場合でも、月額予算だけでなく、一回の支払額、宛先、承認が必要な条件を決めなければ、どこまで任せたのか曖昧になります。「自律的」という言葉だけでは、運用の実態は分かりません。

構想に登場するTEEは、プログラムを隔離された実行環境で動かす技術です。鍵をどう守るかという設計と、AIの判断が正しいかという評価は別に扱う必要があります。記事中の大規模な自律事業体への期待も、売上や企業価値の達成を確認した記述ではありません。実装を読むときは、人間が変更・停止できる範囲まで確かめたいところです。

人間証明と情報集約は、何を証明できるかが異なる

三つ目の人間証明と、四つ目の情報集約は、オンラインの情報を誰が、どの条件で提供するかという問題につながります。人間証明は、参加者の重複や自動化された大量参加への対策を考えるテーマです。情報集約は、予測市場などを手がかりに、分散した知識を意思決定へ生かそうとする考え方です。

しかし、一人の人間だと確認できても、その人の投稿が事実だと証明されたわけではありません。一人一票を目指す仕組みと、本人の氏名を確認する仕組みも、同じ目的ではありません。登録時に求める情報、重複登録への対応、認証手段を失ったときの復旧方法を分けて見ると、提供される機能が明確になります。

予測市場についても、取引価格をそのまま確定した未来として読むことはできません。判断に使うなら、質問の定義、結果を判定する人や機関、参加者の広がりを確認する必要があります。たとえば「年内に提供開始」という問いでは、限定試験を開始に含めるかどうかで結論が変わります。記録が公開されていることと、問いの設計が適切であることは別の評価項目です。

ステーブルコイン決済と政府債券のデジタル化を分ける

五つ目は企業のステーブルコイン採用、六つ目は政府債券のオンチェーン化です。どちらも金融の仕組みに関わりますが、前者では支払いの受け渡し、後者では債券の発行や管理が主な論点になります。ドルに連動するトークンを受け取ることと、利息を生む政府債券を保有することは同じではありません。

当時の具体的な動きとして、英国政府は2024年11月14日にデジタル国債の試験発行構想「DIGIT」を発表しました。11月18日の議会向け声明は、分散型台帳技術を使い、デジタル証券サンドボックスで実験する方針を説明しています。通常の国債・財務省短期証券の運営とは切り離す実験であり、この発表だけで全国債の移行や一般向け販売が完了したとは読めません。

事業者が決済を比較する際には、送金時の料金だけでなく、自社が使う通貨へ戻すまでの費用や返金対応も含めると判断しやすくなります。また、国債を裏付けにした民間商品と、政府自身が発行するデジタル債券も分けて確認すべき対象です。「オンチェーン」という共通語だけでは、誰に何を請求できる資産なのかは特定できません。

DUNAはブロックチェーンの技術規格ではない

七つ目のDUNAは、Decentralized Unincorporated Nonprofit Associationの略です。ワイオミング州の2024年法で設けられた、分散型の非法人・非営利の団体を扱う法的枠組みを指します。通信方式やトークンの互換性を定める技術規格ではありません。a16zの「標準」への期待は、こうした組織形態の採用が広がるという文脈で読む必要があります。

成立法の施行日は2024年7月1日です。法律は要件を満たす団体について定めており、あらゆるDAOが自動的に同じ扱いを受けるという意味ではありません。また、利益を生む活動自体を一律に禁止するのではなく、その利益を団体の共通の非営利目的に用いることなどを規定しています。

したがって、DAOの資料でDUNAという表記を見つけたら、採用を検討しているだけなのか、実際にその枠組みで組織されているのかを分けて読むことが出発点です。2025年に普及するという予測から、米国全体で統一制度になった、または個々の活動がすべて承認された、と結論づけることはできません。

リキッドデモクラシーと既存インフラの再利用

八つ目のリキッドデモクラシーは、自分で投票する方法と、他者へ投票を委任する方法を組み合わせる考え方です。九つ目のインフラ再利用は、基盤から毎回作り直すのではなく、既存の技術を使って製品開発を進めるという提案です。どちらも新しい名前の仕組みを増やすことより、参加や開発に必要な負担をどう減らすかが問われます。

投票の委任を考えるなら、委任先の選定方法、委任を取り消せる時期、特定の参加者に票が集まったときの扱いが検討項目になります。記録をブロックチェーンに残すだけで、意思決定の公平性まで決まるわけではありません。

開発基盤の再利用にも、何を自分たちで管理するかという判断が伴います。たとえば既存のウォレットを採用すれば、接続部分の開発は減らせても、仕様変更時の対応や利用者への案内は残ります。採用する部品の数より、更新・障害時に責任を持てる範囲を確認するほうが、実際のサービス評価につながります。

UX、キラーアプリ、アプリストア、実利用への移行

十から十三のテーマは、使いやすさを起点にした設計、多くの人に使われるアプリ、アプリを見つける場所、保有者の実利用への移行です。これらは一連の課題として読めます。便利なサービスを作っても発見されなければ使われず、発見されても初回操作でつまずけば継続利用につながりません。

評価するときは、「ウォレット接続ができる」だけでなく、利用者が目的を終えられるかを見ると具体的です。チケットなら購入後に提示できるか、決済なら相手の受領を確認できるかが重要になります。技術用語を画面から減らす場合にも、料金や承認する操作の内容まで見えなくしてよいわけではありません。

また、配布サイトへの掲載、アカウント登録、資産の保有、繰り返しの利用は、それぞれ違う指標です。当時の予測を振り返る際も、アプリの発表件数だけで普及を判定せず、どの行動を利用として数えているかを確かめる必要があります。

非伝統的資産のトークン化は、対象となる権利から考える

最後のテーマは、従来と異なる資産やデータをトークン化する構想です。元記事では個人の生体データも例に挙げられていました。ただし、トークンを作ることと、そのデータを適法に収集・利用・第三者へ提供できることは別の問題です。将来の用途の例を、誰でも直ちに利用できる制度として読むべきではありません。

検討の順序としては、まず何の権利を表すのかを明らかにし、その権利を誰が与え、誰が履行するのかを確認します。データ利用の例なら、利用目的や期間、同意の撤回後の扱いが不明なままでは、トークンの移転機能だけを比較しても十分ではありません。

この14テーマを読む価値は、翌年の値上がり銘柄を決めることより、サービスや制度を評価する問いを増やせる点にあります。構想、実験、提供開始、継続利用を分けて追うことで、技術への期待と、その時点で確認できる成果を混同せずに済みます。

よくある質問

Q. これは2025年に実現したことの一覧ですか?

A. いいえ。2024年12月4日にa16z cryptoが公表した展望を扱っています。本記事は予測全項目の実現を認定するものではありません。

Q. DUNAは新しいブロックチェーンですか?

A. いいえ。この記事で扱うDUNAは、ワイオミング州法による団体の法的枠組みです。チェーンや通信プロトコルの名称ではありません。

Q. AIウォレットがあれば、人間の承認は不要になりますか?

A. 承認が必要かどうかは設計によります。AIが提案するだけなのか、署名まで実行できるのか、支出上限や停止権限を誰が持つかを確認する必要があります。

この記事の出典

※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。