PolygonのNFT売上が前週の約3倍になったという記事は、2024年1月上旬の市場を伝えたものでした。金額の増加は注目に値しますが、ゲーム運営の利益、利用者数、現在の市場順位を示す数字ではありません。転載元の時点を確認し、売買金額と活動指標の違いから当時の報道を整理します。
「週間3倍」は2024年1月上旬の報道
AMBCryptoの記事には、2024年1月8日14時30分(米東部標準時)の更新日時が表示されています。同記事はCryptoSlamを参照し、Polygon PoSの直近1週間のNFT売買金額が3,600万ドルを超え、その前の期間の約3倍になったと伝えました。NFT LABOへの掲載日は2月22日ですが、2月の最新週を集計した記事ではありません。
ここでいう3倍は、比較対象を1としたときの水準です。増加率に直せば約200%増であり、300%増とは異なります。また、元資料は丸めた金額と倍率を使っているため、前週が正確に1,200万ドルだったと逆算して確定値にすることもできません。
今回の調査では、当時の集計開始・終了時刻を特定したデータ出力や、元となる売買明細を再取得できませんでした。そのため3,600万ドル超と約3倍は、当時の報道値として残しています。暦上の月曜から日曜なのか、取得時点から遡る7日間なのかを確定できない以上、独自に期間の日付を補うことは避けます。
24時間の順位と週間の売買金額は分けて読む
当時の記事には、Polygonが24時間のNFT売買金額で一時的にEthereumを上回ったというSNS投稿も紹介されています。一方、記者がCryptoSlamを確認した時点では、Polygonは3位だったと記されています。順位は集計窓と取得時刻によって動くため、これだけで週間首位や長期的な首位を意味するわけではありません。
同じ記事で名前が挙がったGas Hero Common Heroesの300万ドル超も、対象は24時間のコレクション別売買金額でした。チェーン全体の週間値とは範囲が異なるため、この二つを割って「Gas Heroが週間市場の何%を占めた」と計算することはできません。
「初めてEthereumを超えた」とする主張についても、過去の全期間を同じ集計条件で調べ直せたわけではありません。本記事では史上初と断定しません。比較するときは、チェーン別かコレクション別か、24時間か7日間か、どの時刻に取得したかを揃える必要があります。順位の高低だけでは、対象NFTの換金のしやすさも分かりません。
NFT売上はゲーム運営会社の収益ではない
CryptoSlamの公開画面は、Sales(USD)、Total Txns、Unique Buyers、Unique Sellers、Average Saleなどを別々に掲載しています。ドル建ての売買金額は、成立した取引の金額を集計する指標です。件数や買い手の数とは別であり、一つの高額取引が合計額を大きく押し上げることもあります。
また、ユーザー同士がNFTを売買した金額のすべてが、ゲーム開発会社に入るわけではありません。一次販売の代金、二次流通の売買額、運営側が受け取る手数料などを分けなければ、事業の収益は算出できません。元記事にあった「Gas Heroからの収益が原動力」という表現は、コレクションの流通と会社の収益を混同しやすいものでした。
売買金額の増加を読むなら、取引件数、平均売買額、買い手・売り手の数を並べると、少数の高額売買か、取引の広がりかを検討しやすくなります。ただし、ウォレット単位の買い手数をそのまま実人数とすることはできません。一人が複数ウォレットを使う場合もあり、数字が表している対象を確認することが出発点になります。
ウォッシュトレードの調整は確認が必要
売買が記録されていても、すべてが独立した買い手と売り手による需要を表すとは限りません。同じ実質的な所有者などが関係する売買によって、取引が活発に見える場合があります。こうした見かけの出来高を作る行為は、一般にウォッシュトレードと呼ばれます。これは資金洗浄そのものと同義ではありません。
CryptoSlamの公開統計には、通常の売買金額や件数に加えて、Wash Volume、Wash Txns、Wash %が別項目として用意されています。ランキングの数字を再利用する際は、疑わしい取引の除外前後のどちらを見ているか、別欄の数字を二重に差し引いていないかを確認する必要があります。
今回確認できた画面では項目名は読めましたが、2024年1月の記事と一致するデータ行や、その時点で使われた判定・控除の詳細は取得できませんでした。したがって、3,600万ドルのうち何ドルを調整したか、疑わしい取引が何%含まれていたかは記載できません。逆に、確認できなかったことを理由にGas Heroの取引が不正だったと判断する根拠もありません。
Gas Heroの登場と、利用指標が示す範囲
Gas Heroの開始時期は、Polygonが2025年1月に公開した2024年の振り返りでも、2024年1月と確認できます。STEPNを手掛けたチームによるゲームとして紹介されており、当時のNFT売買増加を考えるうえで、新作の登場は背景の一つになります。ただし、公式の紹介記事も、売買増加を一つの要因だけで説明する検証資料ではありません。
元記事はDappRadarのデータをもとに、開始日の活動増加にも触れていました。DappRadarの公式説明では、UAWはdAppとやり取りしたユニークなアクティブウォレットを数える指標です。ゲームを起動した全ユーザー数や、登録者の実人数を直接示すものではありません。
同社の資料は、ブロックチェーンを時々しか使わないアプリでは、オンチェーンの計測だけで全活動を捉えられないと説明しています。NFTを売買せず遊ぶ時間は、この種の統計に十分反映されないことがあります。取引の初動が大きかったとしても、翌月の継続率やゲームの満足度まで証明したことにはならず、「大成功」と評価するには追加の根拠が必要です。
現在読む際はMATICとPOL、当時の統計を区別する
元記事はPolygonのトークンをMATICと表記していますが、Polygonは2024年9月4日にPOLへの移行を実施しました。公式発表では、Polygon PoSのガス代とステーキングに使うネイティブトークンがPOLになったと説明しています。2024年1月の歴史を述べる場合と、現在のネットワークを説明する場合で、名称を使い分ける必要があります。
Polygon PoS上のMATICは自動で移行する一方、Ethereum上のMATICには別の移行方法が案内されました。保管先によって条件が異なるため、古い記事から一律の操作手順を導くことはできません。さらに、NFTの売買金額と、ガス代に使うPOLの価格は別の指標で、週間NFT取引の増加からトークン価格の上昇を予測することもできません。
2026年9月27日の確認では、当時と同じ条件の週間ランキングや、Gas Heroの現在の参加者・売買実績を再現できていません。このため本記事は現行の市場順位やゲームへの参加案内としては扱いません。過去の短期的な増加を記録しつつ、数字の範囲と限界を読み解くための記事です。
今後同種のニュースを比較するときは、取得日時、対象チェーンとコレクション、期間、通貨単位、ウォッシュトレードの扱いを一緒に保存すると役立ちます。過去画面の金額と現在画面の順位を混ぜず、同じ期間の件数や買い手数も確認することで、「売買金額が増えた」という事実から言えることを絞り込めます。
よくある質問
Q. 週間3,600万ドル超は2024年2月のデータですか?
A. 転載元AMBCryptoの表示は2024年1月8日更新で、そこで直近1週間の数字として紹介されています。NFT LABOの掲載日である2月22日の直近週とは区別が必要です。
Q. 3倍になったとは300%増という意味ですか?
A. 元の水準の3倍なら、増加分は元の水準の2倍なので約200%増です。報道値は丸められており、厳密な増加率を独自に確定することはできません。
Q. Gas Heroの売買金額は運営会社の売上ですか?
A. NFT流通の集計額を、そのまま運営会社の売上や利益とすることはできません。一次販売、二次流通、手数料を分ける必要があります。
この記事の出典
- AMBCrypto:Polygon週間NFT売買に関する当時の報道
- CryptoSlam:NFT Global Sales Volumeの指標
- DappRadar:ランキング指標の定義
- DappRadar:プロジェクトページの計測範囲
- Polygon:2024年の振り返り
- Polygon:MATICからPOLへの移行実施
- Trading Technologies:Wash Tradingの説明
※本記事は公開情報をもとにした一般的な情報提供であり、投資の勧誘や助言ではありません。暗号資産・NFTの価格は大きく変動します。最新の情報は各公式発表をご確認ください。




